[香港 15日 ロイター] - アジア各国でデジタル企業が消費者向けの金融サービス分野に進出し、伝統的な銀行に挑んでいる。巨大なユーザー網を活用することで、中国の両雄、アリババ<BABA.N>、騰訊控股(テンセント・ホールディングス)<0700.HK>が敷いた道に続こうとしている。

変化は始まったばかりだが、動きの遅い欧州および北米の金融業界とは対照的だ。欧米では、金融スタートアップ企業はデジタル企業ではなく、ベンチャーキャピタルと既存金融機関の後ろ盾を得る場合が多い。

デジタル企業は、メッセージアプリやオンライン旅行予約といった既存サービスを円滑に銀行サービスと融合させられるのが強みだ。

中国のオンライン保険、衆安在線財産保険<6060.HK>傘下の衆安国際のWayne Xu社長は「香港で銀行口座を開こうと思えば、支店に行って1時間も質問に答え、さらに電話が返って来るのを待たなければならない。ところが銀行窓口で聞く必要のある情報はすべて、もともと携帯電話で収集できるものだ」と話す。

香港金融管理局(HKMA)は3月、オンライン銀行の免許を4社に付与し、その1つが衆安だった。香港市場はHSBC<HSBA.L>やスタンダード・チャータード<STAN.L>などの老舗銀行が支配してきたが、これによって過去数年で最大の激震が走る可能性がある。

韓国は2017年、オンライン専門の銀行2行に免許を与えている。その1つがチャットアプリ「カカオトーク」を展開するカカオ<035720.KS>傘下のカカオバンクだ。

カカオバンクの広報は「4500万人に上るカカオトークの月間平均ユーザーは、当社の銀行を宣伝する際に大きなプラスになる」と述べた。同行はカカオトークの人口知能(AI)技術を顧客の自動支援システムに活用しているという。同行の3月末時点の顧客数は890万人。

台湾もオンライン専門銀行に免許を与える構えで、通信アプリのLINE(ライン)<3938.T>を筆頭とするグループがライセンスを申請した。マレーシアは年内にオンライン銀行の指針を発表する計画。タイ中央銀行も、この問題について検討中だとしている。

マッキンゼーのパートナー(香港)、ジェフ・ガルビン氏は「大手ハイテク企業は、大きな市場を獲得できるチャンスだととらえている。金融サービスを構築し、既存のユーザーに抱き合わせで売ることができる」と話した。

<積極的なアジアの消費者>

アジアではモバイル技術が消費生活のあらゆる面に浸透し、金融産業の変革の原動力となっている。

この流れを生み出したアリババとテンセントは、デジタル決済アプリによってキャッシュレス革命をけん引した。

コンサルタント会社EYのパートナー、ジェームズ・ロイド氏は「アジアでは、デジタル企業がアリババとテンセントの先例に刺激され、場合によっては脅威を感じて金融に手を伸ばしている」と解説する。

対照的に、アマゾン<AMZN.O>やグーグルの親会社アルファベット<GOOGL.O>のような米巨大デジタル企業は、既存金融企業への技術提供やコンサルティングに焦点を絞っている。

アジアの消費者は世界のどこに比べても、デジタル企業が提供する銀行サービスの利用に積極的だ。

ベイン・リサーチによると、中国とインドでは35歳未満の消費者の90%以上がデジタル企業の銀行を利用したいと答えた。米国ではこの割合が75%、フランスでは51%だ。

アジアの既存銀行は現在厳しい時代を迎え、支店数の削減を進めている。国際通貨基金(IMF)によると、香港、日本、マレーシア、韓国、タイの銀行支店数は2015年から17年にかけて1%ないし7%減少した。

しかし既存銀行の中にも、新たなライバルと手を組むことで生き残りを図ろうとする例がある。

香港のHKMAがオンライン銀行事業免許を付与した先には、スタンダード・チャータードと中国のオンライン旅行会社シートリップ・ドット・コム<CTRP.O>の金融子会社や香港の通信大手PCCW<0008.HK>の合弁事業が含まれている。

(Alun John記者 Sumeet Chatterjee記者)