[ワシントン 1日 ロイター] - 8月にオンライン方式で開かれた米民主党大会の政策座談会に登場したアマゾン・ドット・コム<AMZN.O>の公共政策コミュニケーション責任者ジェイ・カーニー氏は、大統領候補に指名されたバイデン前副大統領のポスターを背に演説を行い、バイデン氏と古くからのつきあいを堂々と披露した。

カーニー氏がマイクロソフト<MSFT.O>のブラッド・スミス社長とともに巨大IT企業幹部として民主党大会で公然とした役割を担ったことは、「バイデン氏政権」誕生の暁にアマゾンが一定の影響力を行使する可能性を示唆している。

ロイターが政治資金に関する公式記録や、こうした資金の流れを分析する情報サイト「オープンシークレッツ」、またロビイスト、議員や議会スタッフ、反トラスト団体、バイデン氏のライバル陣営といった利害関係者十数人から取材した結果に基づくと、アマゾンは早くからバイデン氏陣営に着々と食い込んできたようだ。

<大手ITに批判的なバイデン氏>

米国の法律では企業は政治家への直接献金を禁止されている。このため献金は、企業が立ち上げた政治行動委員会(PAC)か、PACの所属者、あるいは従業員個人の資格によって行われることになる。

それを踏まえて、オープンシークレッツのデータを見ると、バイデン氏陣営への今年の献金額トップ5にはアマゾンとアルファベット<GOOGL.O>子会社グーグル、マイクロソフトに関連する献金が入っている。

財務記録やインタビューからは、巨大IT企業がバイデン氏陣営との関係強化を進めているのは、政権獲後にさまざまな事業慣行に対する連邦や州からの調査攻勢にさらされた場合に、発言力を得る態勢を築こうとする狙いがうかがえる。

ただ、巨大IT企業とバイデン氏陣営の接近は、これらの企業の市場支配を問題視している人々の不安を誘っている。

過去に民主党議員と働いたことがあり、現在は反トラスト団体、オープン・マーケッツ・インスティテュートで巨大IT企業の独占的な力を弱める取り組みを進めているサリー・ハバード氏は、バイデン氏が当選することで、ハイテク業界への介入に消極的との見方がもっぱらだったオバマ前政権の時代に戻るのは望まないという。

同氏は「バイデン政権も同じ状況になるのだろうか」と懸念した上で、かえってトラスト団体と民主党左派から、巨大IT企業に対して責任追及を迫る大きな圧力が生まれるとの見方も示した。

バイデン氏が当選したとして、現在トランプ政権と各州の司法長官が手掛けている独占禁止法問題に関する調査が強まるのか、弱まるのかは新政権の意向次第になる。

これまでのインタビューや選挙演説を見る限り、バイデン氏自身は巨大IT企業に批判的だ。利用者が投稿したコンテンツに関する免責条項の廃止も提唱し、市場の集中やプライバシー保護などにも懸念を表明。アマゾンは税金を払っていないと非難し、フェイスブック<FB.O>と同社創業者マーク・ザッカーバーグ氏にも不快感を示している。

バイデン氏陣営でハイテク分野を担当する2人の主要アドバイザーはコメント要請に回答しなかった。

アマゾンの広報担当者は、同社のPACはバイデン氏陣営に献金していないと説明。同社は民主党と共和党双方の大会を技術とデジタルサービスの面で支援したと述べ、どちらが選挙で勝っても政権に協力するアマゾンの姿勢に変わりはないと強調した。

バイデン氏陣営の広報担当者は、バイデン氏は権力の乱用に反対するとした上で「多くの大手ハイテク企業や幹部陣は権力を乱用してきただけでなく、国民をミスリードしてわれわれの民主主義を傷つけ、どんな責任からも逃れてきた。バイデン大統領になればそうした事態に終止符が打たれる」と言い切った。

グーグルはコメントを拒否。マイクロソフトは、献金は従業員個人が行っているとした。

<ロビー活動は新たなレベルに>

巨大IT企業とバイデン氏のつながりは根深い。

アマゾンのカーニー氏はオバマ前政権で3年余りにわたってホワイトハウス報道官を務め、政権発足から2年間は、副大統領だったバイデン氏の広報担当ディレクターだった。

アマゾンの法務顧問デービッド・ザポルスキー氏はバイデン陣営への献金額ではトップ級。バイデン氏陣営屈指のバンドラー(個人による選挙資金の取りまとめ役)としてもバイデン氏に2万5000ドル強を献金しているほか、バイデン氏応援のさまざまなファンドに合計25万ドル強を直接献金している。なお、バンドラーだった人は政権誕生後に政府や政権の要職に就くことがある。

一方、バイデン氏の政権移行チームや作業グループには、フェイスブックとグーグル、アマゾン、アップルで勤務経験があるなどの関係者が少なくとも8人も加わっている。

ある民主党左派議員の政策顧問は、巨大IT企業とバイデン氏陣営の緊密な関係に心配を感じている。この人物によれば、民主党左派にとっての闘争は今後は、バイデン氏をより進歩的な選択肢に向かわせようとすることよりも、自分たちが果たして政権誕生後に重要なポストを確保できるかどうかになっていく。

共和党で積極的に巨大IT企業批判を展開し、トランプ氏とも近いジョシュ・ホーリー上院議員に言わせれば、バイデン氏陣営は民主党左派路線を時折支持する口ぶりを見せているかもしれないが、献金記録を見る限り、こうした左派が今後は苦しい立場になることが示されているという。同氏はロイターに「アマゾンの場合、とりわけ民主党大会にまで姿がちらついてきたという点で、実に憂慮すべきことだ。彼らのロビー活動が全く新たなレベルに到達しようとしている」と語った。

アマゾンは他の多くのハイテク大手と異なり、過去3回の大統領・議会選では従業員やPACなどを通じた献金額は目立たなかった。ところが今回は、アマゾンの従業員がバイデン氏陣営に活発な献金をしたため、同社関連の献金額は上から5番目に跳ね上がっている。

また、アマゾン上層部から民主党予備選期間中にバイデン氏陣営に行われた献金額も、マイクロソフトに次ぐ規模だったことが、センター・フォー・エコノミック・アンド・ポリシー・リサーチ傘下のリボルビング・ドア・プロジェクトの調査で判明している。

それでもバイデン氏陣営のハイテク分野アドバイザーは、献金額の多さで「政策を買うことはできないと思う」と述べた。今や政界全体の巨大IT企業に対する憤りはすさまじいため、もはやそれをかわすことはもう無理だ」と話した。

(Nandita Bose記者)