佐野日出之

[東京 15日 ロイター] - 世界的な債券のベンチマークに中国国債を組み入れることに対し、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)など日本の一部投資家が難色を示している。人民元に兌換性がないことなど技術面の問題を懸念したものだが、市場参加者の間では、原因として日本国内の対中感情を指摘する声もある。

金融商品の指数を算出するFTSEラッセル社は昨年9月、中国国債を世界国債インデックス(WGBI)に組み入れると発表。組み入れは今年10月からで、3月に正式決定するとしていた。

バークレイズ・ブルームバーグやJPモルガンなど、中国国債はすでに主要な債券インデックスに組み入れられていることから、FTSEの発表は世界的には特に驚きではなかった。

  しかし、関係者によると、日本の市場参加者に対してFTSEラッセルが詳細を説明をしたところ、GPIFなどから慎重論が出た。昨年12月8日のオンライン説明会では、人民元に完全な兌換性ないことや、国債市場でオフザラン銘柄の流動性が低いことなどについて不満の声が挙がったと、説明会を聞いた関係者は明かす。

  「GPIFの関係者などは、中国国債の決済制度の問題がなぜ解決できないのか、税制の問題がなぜ解決できていないのかといった、FTSEに聞いても答えられないような、限りなく意見に近い質問をしていた」と、ある参加者は匿名を条件に語った。

説明会で挙がった懸念はこうした技術的な問題に集中したが、日本国内にある対中感情を原因として指摘する声も少なくない。GPIFなど公的な資金の運用機関が、中国国債が組み入れられたインデックスに投資することに対し、国民の理解を得られるのかという見方だ。

  「グローバルな投資家に比べると、日本では対中アレルギーがあるという印象はぬぐえない」と、楽天証券経済研究所の加藤嘉一・客員研究員は言う。「GPIFにとっても、国民の中国に対する好感度が非常に低い中で、投資はできるのかというのが大きなところなのではないかと思う」

  日本の一部投資家の反発があっても、FTSEラッセルの方針は変わらないとの見方が大勢だ。ただ、日本の投資家がWGBIの最大の利用者という点が、事態を複雑にしている。

  正確な集計はないものの、市場関係者によると、WGBIを指標として運用している世界の資金のうち、少なくとも半分、最大で8割程度が日本のものだとみられている。

  FTSEラッセルはロイターの取材に対し、投資家との個別のやりとりについてはコメントできないと回答。GPIFは、個別の話にはコメントを控えるした上で、「FTSEがWGBIに中国国債を組み入れる方向なのは承知しているが、実際の組み入れまでには少し時間があるので、今後対応を検討する」とした。

  GPIFをはじめとする日本の投資家がWGBIを使用しなくなるのではないかとの見方もあるが、市場関係者の多くは、中国を除外した指数を使えば済むと指摘する。GPIFは外債のうち、アクティブ運用分についてはブルームバーグ・バークレイズやJPモルガンのインデックスを採用しているが、中国を除いたインデックスを使用している。

世界的には、利回りが相対的に高い中国国債の組み入れは歓迎されている。銀行や生命保険会社など、日本国内でも中国国債への投資に前向きなところが増えている。財務省の統計によると、日本の投資家は2018年以降、ほぼ毎月中国国債を買い越している。

  新型コロナウイルスの感染拡大などで世界的に大規模な金融緩和が進んだ結果、先進国の債券利回りは米国で1%前後、日本では0%、欧州では大半がマイナスとなっており、総じて3%程度の利回りがある中国国債は魅力的だ。

  ただ、米国による一部中国企業への制裁や、それに伴う中国企業の株式インデックスからの除外など、中国を巡っては相反する動きもみられる。

  「日本を含め西側のビジネスパーソンの間では、中国なくして成長できないという声と、中国は異質であり関わるべきでないという意見の真っ二つに割れている印象だ」と、日系運用会社の幹部は語る。

(佐野日出之 編集:久保信博)