[フランクフルト 17日 ロイター] - 欧州の大手銀は、新型コロナウイルス感染症の流行で打撃を受けた融資先の返済が滞って収益が落ち込んでおり、政界では最終的に大手銀への政府支援が必要になるかどうかの議論が始まった。

銀行幹部の多くがコロナ流行は最悪期を脱したとの認識を示し、ソシエテ・ジェネラルのフレデリック・ウデア最高経営責任者(CEO)やBNPパリバのジャンローラン・ボナフェCEOは迅速な回復を予想している。

クレディ・アグリコルのフィリップ・ブラサックCEOは1月、「楽観主義は戦争における武器だ」と述べ、悲観論者を批判。「この戦争に、われわれは勝利できる」とした。

ソシエテ・ジェネラル、BPNパリバ、クレディ・アグリコルの仏大手3行はいずれも昨年の業績が大幅な減益で、このほか欧州大手銀ではスペインのサンタンデールやオランダのINGも減益だった。

銀行幹部から自信に満ちた発言が相次いでいるのに対して、欧州の当局者は銀行の問題はまだ始まってもいない状態だと懸念している。

当局者は、フランスやスペインなどで導入された数十億ユーロの融資保証など政府支援策が巻き戻されれば、デフォルト(債務不履行)に陥る借り手が増えると警戒している。

15日のユーロ圏財務相会合(ユーログループ)で提出されたリポートは「広範な企業で経営が悪化している」と警鐘を鳴らし、当局の懸念を浮き彫りにした。

このリポートでは、銀行が借り手を支える上でいかに政府に頼っているかに焦点が当てられた。政府の支援がなければ、昨年末時点で域内企業の約4分の1が困難な状態に陥っていたと試算。銀行の貸倒引当金は「根本にある状況悪化」を反映していないと指摘した。

昨年末時点の集計では、返済猶予となっている融資は約5870億ユーロ(7120億ドル)、政府保証を受けている信用供与は2890億ユーロだったという。

欧州連合(EU)欧州委員会のジェンティローニ委員(経済担当)は財務相会合後、記者団に対して、「経営破綻の急増は避けなければならない」と述べた。

銀行を監督する立場にある欧州中央銀行(ECB)も同じ懸念を抱いている。ECBは1月、欧州の銀行が積んでいる貸倒引当金は米国の大手銀に比べて少ないと指摘。欧州銀の一部は対応が不十分で、リスクの試算が将来の明るい見通しに偏っているとの見方を示した。

欧米ではコロナ禍による景気悪化を防ぐため大規模な対策を導入されたが、独立国の連合体であるEUでは供与か融資保証かなど政府支援の形が国によって異なる。

フランス、イタリア、スペインは融資保証で、ドイツは気前よく供与を実施している。

アキソム・オルタナティブ・インベストメンツのジェローム・レグラス氏によると、銀行から発せされる楽観的なメッセージは当局の見解と食い違っている。「監督当局からのメッセージはほとんど正反対だ」と言う。

大手銀幹部が描くバラ色の光景は、欧州の住宅ローン関連データを分析しているヨーロピアン・データウエアハウスの収集したデータとも矛盾する。

同社が昨年12月のデータを分析したところ、英国ではローンの5分の1で返済猶予申請が行われていた。英国に続いてこの比率が高かったのはポルトガルとイタリア(12%余り)で、次がアイルランド(10%前後)だった。

あるユーロ圏の当局者は匿名を条件に、銀行はおおむね強気だが、「中には問題にぶつかったり、精算を迫られたりする銀行もあるのではないか」と述べた。

ユーロ圏19カ国は十年以上前の金融危機後、ECBに各国の銀行の監督権限を与えることで合意したが、銀行が経営危機に陥った場合の対応で対立したままだ。

ドイツなど富裕国は、共通の救済網を確立し、イタリアやギリシャなど資金繰りの苦しい国を支援することに消極的だ。

ユーロ圏の金融支援基金、欧州安定メカニズム(ESM)の責任者、クラウス・レグリング氏は15日、ESMは来年から銀行の清算に利用可能との見解を表明。経営破綻増加の影響は銀行や政府に及ぶと指摘し、「われわれは強力な第二次防衛ラインを作り上げた」と述べた。

ただ、ESMの利用など、協調行動を巡る判断は非常に政治的だ。例えば銀行の不良債権処理を助ける汎ユーロ圏バッドバンクの設立に向けたECBの取り組みは、ほとんど進展していない。

目下のところ、銀行関係者の多くは物事がうまく行くよう願っている。INGのスティーブン・ファンレイスウィクCEOは「トンネルの先に明かりが見えるだろう。どこでトンネルが終わるかは分からない」と述べた。

(John O'Donnell記者)