[ミュンヘン/北京 30日 ロイター] - 中国の電気自動車(EV)メーカーが欧州に相次ぎ参入しつつある。伝統的な自動車大手の動きの鈍さを突き、脱炭素化の取り組みを追い風に急成長する欧州のEV市場に一定の地歩を得る狙いだ。

こうした中国勢の1社、上海蔚来汽車(NIO)は30日、ノルウェーの首都オスロで電動スポーツタイプ多目的車(SUV)「ES8」の発売を開始した。時価総額が約570億ドルに達しながら欧州では実質的に無名の同社にとって、初めての中国国外進出となった。

ほかにも、多くの欧州市民にとってなじみが薄い中国のEVメーカーが既に販売に乗り出したか、販売を計画中。愛馳汽車(Aiways)や、比亜迪傘下の唐(Tang)、上海汽車集団傘下の名爵(MG)、東風汽車傘下の嵐図汽車(VOYAH)、長城汽車<601633.SS傘下の欧拉(ORA)などだ。

ただ競争が激しく、有名ブランドが市場を牛耳る欧州で、中国メーカーは過去に苦い経験を味わった。幾つかの戦略的な失敗があったし、長年にわたって安価な大量生産品を輸出してきた中国の製品は品質面で勝負にならないという見方との格闘も強いられた。

実際、上海蔚来汽車創業者のウィリアム・リー(李斌)最高経営責任者(CEO)はロイターに、「非常に成功するのが困難な」成熟市場において成功を収めるまでには長い道のりをたどるだろうとの見通しを示した。

リー氏は、欧州で「強固な基盤を確保する」には最大10年が必要かもしれないと発言。小鵬汽車(シャオペン)の何小鵬CEOもこれに同意し、欧州で「十分な足場を築く」ために10年かかるとロイターに語った。

それでもこうした新規参入組は、魅力的なこの欧州市場にいずれ食い込むチャンスが巡ってくると信じている。

欧州連合(EU)のEV販売台数は昨年2倍以上に増え、今年上半期の伸び率は130%に達した。ところが既存メーカーが自分たちの大規模な製品群を電動化するスピードはまだ遅く、需要が旺盛な市場に十分な量を投入しているわけではない。

愛馳汽車の海外事業責任者アレクサンダー・クローゼ氏は「大手各社の製品がひしめき合う内燃エンジン車と比べれば、EV市場はそこまで混み合っていない」と指摘。ミュンヘン周辺を同社のクロスオーバーSUV「U5」を運転しながら「そこにわれわれにとっての商機があると思う」と強調した。

U5はドイツ、オランダ、ベルギー、フランスで販売されている。ドイツにおける最低価格は3万ユーロで、新車の平均価格より低いだけでなく、9000ユーロのEV補助金を考慮に入れる前の段階で大半の地元EVの価格も下回っている。

<少しの勇気>

中国のEV各社が採用している欧州でのビジネスモデルはさまざまだ。輸入代理店に依存する向きがある一方、低コストの小売り方法を見つけたり、より伝統的な自前の販売網構築を進めたりするメーカーもある。

中国製は質が低いという消費者の考えを変えるのは難しいかもしれない。それでもBMWやテスラなど欧米の有力メーカーが中国に生産拠点を設けているという「新しい現実」は、そうした「古い認識」を弱める働きをした公算が大きい。

オランダ国境に近いドイツ西部で暮らす教師のアンティエ・レバースさん(47)と彼女の夫は、ディーゼル車を持っていたが、もっと環境にやさしい車が欲しくなった。そしてなぜ国産車を買わないのかという批判に対する理論武装のためにさんざん調べた後、昨年U5を購入した。今ではそのハンドリングの良さとランニングコストの低さをとても気に入っている。

レバースさんは「中国車なんて買ってはいけない。それはプラスチック製で安っぽく、ドイツの雇用にとってプラスにならない」といろいろな人から言われたと明かす。しかしドイツ製部品が中国車に使われ、その逆も見られる世界の自動車産業ではもうそんな話は真実でないと実感。「ドイツ人はドイツの車を買っている。だから中国車を買うには少しばかり勇気がいる。(ただ)時には新しいものを受け入れる必要もある」と語った。

<ノルウェー拠点化の意味>

上海蔚来汽車はES8の販売を始めたオスロに、展示ルームとカフェ、顧客のワークスペースを併設した「NIOハウス」を立ち上げた。

小鵬汽車も欧州の最初の拠点に選んだノルウェーは、政府の積極的な後押しによってEV普及率は世界屈指の高さだ。ノルウェーEV協会のクリスティナ・ブー事務局長は、顧客がEVになじんでいるので、あとは知られていない中国ブランドを売り込めば良いという面で、彼らが欧州参入の出発点にしたのは理にかなっていると説明した。

ブー氏は、他の欧州諸国ならEVと中国ブランドの双方の宣伝と販売に努力しなければならないかもしれないと述べ、同協会は参入前に市場の特性や消費者の文化を学びたいという幾つかの中国EVメーカーと協議していると付け加えた。

上海蔚来汽車のEVは、充電施設に立ち寄るのではなくバッテリー自体を交換する仕組みで、バッテリーは販売されずにリース方式を採用している。ブー氏は、こうしたやり方に消費者がどう反応するかは分からないとしながらも、中国勢の強みは技術力だと分析。特に同社のダッシュボードのデジタル支援機能に言及した。

(Nick Carey記者、Yilei Sun記者)