[東京 30日 ロイター] - 日本円の先安観がくすぶっている。新型コロナウイルスの新たな変異株オミクロン株への警戒感から、足元では対ドルで円高に振れた。ただ、正常化が遅れる日本の金融政策と利上げも視野に入れた米国との違いは浮き彫りで、ドル高・円安圧力がかかりやすい基本的な構図に変わりない。再び「悪い円安」を懸念する声も出そうだ。

<経済効果縮減も>

「いずれ日米金融政策の違いが着目され、ドル高・円安の流れに戻るだろう」。在京の外銀関係者の1人は為替市場の先行きをこう展望する。

足元ではオミクロン株が世界の金融市場を揺さぶり、比較的安全とされる円が買われた。23日の外国為替市場で円相場が一時1ドル=115円台と、2017年3月以来約4年8カ月ぶりの円安水準となったが、29日の取引では一転して1ドル=112円台まで急速に円高が進んだ。

世界的なインフレ懸念の火種となった原油先物相場も下落に転じ、円安と原材料高による「企業収益の悪化懸念はひとまず遠のいた」(別の政府関係者)との期待感も広がる。

もっとも、再びドルを起点に円安圧力がかかる展開を予想する市場関係者は多く、先行きは予断を許さない。来年2月に任期満了となる米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長の続投が決まり、再び日米金利差への思惑からドル買いに弾みがつけば「一気に120円をうかがう円安になることもあり得る」と、前出の外銀関係者は言う。

資源の多くを輸入に頼る現状から、過度な円安を警戒する声は根強い。ロイターが実施した11月企業調査では、現状レベルの1ドル=113―114円での推移でも「減益要因」と回答した企業が約3割と、「増益要因」と答えた企業を上回った。

第一生命経済研究所の永浜利広・首席エコノミストは「これまでは10円、円安になれば国内総生産(GDP)を0.5%押し上げる効果があったが、足元では0.2―0.3%程度の効果に低下している」と指摘する。

ドル建ての原油価格が再び上昇に転じれば「(円安が)円建ての原油価格を上昇させ、日本経済には電力や輸送などの供給面で悪い影響を及ぼしかねない」と、国際金融が専門の小川英治・東京経済大教授はみている。

国際決済銀行(BIS)によると、総合的な円の実力を示す実質実効為替レート(REER)は10月に68.71と、1ドル=120円台半ばを付けた15年7月の68.33以来の低さとなった。

日銀の黒田東彦総裁が当時、REERを念頭に円安けん制と受け止められる発言をしたことから「黒田ラインとされる125円前後に振れれば市場が動揺する可能性がある。(政府・日銀としても)トータルで経済にプラスと容認できなくなるのでは」と、第一生命経済研究所の永浜氏は言う。

<為替には言及せず>

鈴木俊一財務相は30日、就任後初めてイエレン米財務長官と会談した。会談では、世界銀行の第20次増資(IDA20)の来月会合を成功に導くことや、歴史的合意を果たした国際課税の着実な実施に向け、日米が連携することを確認した。

通貨政策に関しては今回の会談で議論にならなかったが、21年4月のG20財務相・中央銀行総裁声明に盛り込まれた「根底にある経済のファンダメンタルズを反映することに引き続きコミットし、為替レートの柔軟性は経済の調整を円滑化しうることに留意する」との認識については、今後も共有するとみられる。

為替の文言は18年3月のアルゼンチン・ブエノスアイレス会議以降、3年にわたり見直されてこなかった。声明見直しで「ドル高容認論」が浮上した経緯がある。

(山口貴也、金子かおり 取材協力:梶本哲史 編集:久保信博)