[香港/シンガポール 29日 ロイター] - 国際金融大手の富裕層部門で、高成長市場とされるアジアへの期待が後退している。中国規制当局の締め付けや新型コロナウイルス感染拡大による景気減速で顧客が様子見姿勢を取っているためだ。

アナリストや銀行関係者によると、銀行の中には富裕層向け融資を打ち切ったところもある。また顧客の多くが中国の情勢変化やウクライナ紛争など、世界的な不確実要因を評価し、資金を別の場所に移したり、現金化している。

富裕層ビジネスの減速は、クレディ・スイス、UBS、HSBC、スタンダード・チャータード(スタンチャート)など、アジア事業で収益を伸ばしてきた金融大手の決算でも表れている。

アジアに特化したプライベートバンク(シンガポール)関係者は「数四半期はこの状況に耐えなければならず、逃げ出すことはできない」と述べた。この銀行では、顧客のポートフォリオを調整などを支援しているという。

UBSのラルフ・ハマーズ最高経営責任者(CEO)は第1・四半期決算の会見で、アジアの顧客の投資意欲は弱く、積極的な投資に二の足を踏んでいると述べた。

それでも銀行関係者らは、少なくとも今後数四半期についてアジアの雰囲気が変わったとはいえ、世界の富裕層ビジネスはなおアジアを最高の成長機会と見ていると強調した。

<中国の変化>

中国への投資姿勢に大きな影響を与えたのは、習近平国家主席が掲げる「共同富裕」の目標の下で昨年強まった、インターネット・プラットフォームや不動産開発、塾などの個人教育といった業界への取り締まりだった。

騰訊控股(テンセント・ホールディングス)やアリババなど、大手プラットフォーム企業の成長見通しに深い疑念が生じ、株価は大幅に下落した。

香港の米系ウェルス・マネージャーは、同社の顧客が昨年後半から、政策の影響から資産を守るためにポートフォリオの多様化が必要と認識し始めたと話す。

「しかし、どの部門が新たな富を生むか、あるいは取り締まりを受けるのか、富裕層事業全体が以前のような成長を維持できるのか、現段階では分からない。その意味で、長期的な不確実性が高まっている」と述べた。

規制強化は、富裕層事業にとって新規顧客の減少をも意味する。「中国インターネット産業が富裕層顧客を輩出し続けた時代は終りを迎えた」という。

この数カ月、不確実性の高まりと市場急落で、追加証拠金の差し入れ(追い証)義務が発生している富裕層顧客もおり、プライベートバンクは株などの購入資金の融資が絞っている。

中国での新型コロナ感染拡大や世界的な金利上昇による経済見通しの悪化も、デレバレッジを進める要因となっている。

コンサルティング会社オリバー・ワイマン(香港)のパートナー、ジャスパー・イップ氏は、「銀行の話では、顧客は取引に非常に慎重で、ストラクチャー的な物にはコミットしない傾向があり、かなり身軽にしているようだ」と述べた。

欧州の大手プライベートバンクのウェルスマネージャーによると、アジアの顧客のポートフォリオにおける現金の比率は20─25%で、昨年の同じ時期の5─10%から上昇した。

各金融機関は今後数四半期で引き続き収入が減るようなら、コストカットを迫られる可能性があるとみられている。

(Selena Li記者、Anshuman Daga記者)