白木真紀

[東京 9日 ロイター] - ANAホールディングス(ANA)<9202.T>と日本航空(JAL)<9201.T>が、新型コロナウイルス禍の長いトンネルからようやく抜け出しつつある。大型連休で国際線回復の手応えをつかんだ両社は6月以降、日本人に人気のハワイ路線を中心に増便。水際対策の緩和や円安による訪日需要にも期待を寄せる。しかし、出口の向こうも燃油高やインフレなどが待ち受けており、視界はなお開けていない。

<520人乗りの大型機を再投入>

「ウィズ・コロナ(コロナとの共生)のフェーズに入ったのではないか。そこが去年と今年と大きく違うところだ」。JALの赤坂祐二社長は6日の決算会見でこう語り、旅客需要は「力強く回復していく段階に入った」との見方を示した。

今年の大型連休では、4月29日から5月8日までの国際線予約数がJALグループは前年に比べ4.2倍、ANAは約5.6倍だった。特にハワイ路線の予約数はJALグループは約8.6倍、ANAが約4.3倍に跳ね上がった。

3月からワクチン3回接種者で日本入国時の検査が陰性なら自主待機が不要になったこと、外務省が4月に米国の感染症危険情報レベルを4段階中3から2へ引き下げ、ツアー催行が再開されたことも需要回復につながった。ANAの芝田浩二社長は4月28日の決算会見で、「外に出たい、旅行に行きたいという消費者のマインドが高まっていることは間違いない」と語った。

JALはこの先のハワイ路線予約も堅調として段階的に増便や定期便を再開する方針。ホノルル線は6月から成田発、7月から羽田発を毎日運航。7月15日まで週3便で運航する傘下の格安航空会社ジップエアのホノルル線も16日以降は毎日運航とする。

ANA傘下の全日本空輸(全日空)は現在、週3便運航中の羽田ーホノルル線を5月28日から週4便に、7月から週5便に増やす。成田―ホノルル線を7月から週2便で再開し、約520人乗りの大型機も再投入する。同機材の投入は2021年8月以来で、同路線の定期運航は20年3月以来となる。

政府が水際対策の解除へ動き出すことも追い風だ。岸田文雄首相は大型連休中に訪問した英国で、「6月には他のG7(主要7カ国)並みに円滑な入国が可能となるよう水際対策をさらに緩和していく」と表明した。両社は入国者数の上限緩和のほか、観光目的の入国許可、2万―4万円ほどかかるコロナ検査の軽減なども政府に要請してきた。

<路線と人員を縮小>

およそ2年前に感染症が世界に広がって以降、ANAもJALも旅客数、とりわけ国際線は年間でコロナ前の10%前後にまで落ち込んだ。ANAの片野坂真哉社長(当時)は20年10月の決算会見で「一時的に(航空事業の規模を)小さくしてコロナ禍のトンネルを抜ける」と述べ、路線や人員の縮小に踏み切った。

23年3月期平均の国際線旅客需要はANAが約35%、JALは約45%に回復すると見込む。JALは北米路線の便数を下期にコロナ前の水準にして通期で8割強に、東南アジア路線を約6―7割に戻す方針。全日空も今後はホノルルのほか、ニューヨーク、ロサンゼルス、シンガポール、シドニーなどと準備が整い次第、旅行商品を提供するという。

JALの赤坂社長は、足元の円安も訪日需要には「非常に良い方向に働く」と指摘。JALは旅客需要の予測を現在1日1万人に制限されている入国者数が上期中に3万人まで増えることを前提にしている。コロナ前は1日約10万人が入国していた。

<「今度いつ行けるかわからない」>

だが、期待通りに需要が回復するかは楽観できない。円安は訪日客を呼び込むにはプラスだが、日本人が海外へ出るのにはマイナスに働く。ウクライナ情勢で高止まりする原油価格は燃油高となって運賃に上乗せされる。世界的なインフレの流れは消費を冷え込ませかねない。

航空・旅行アナリストの鳥海高太朗氏は「日本から旅行に行きたくても行けなかった人たちが海外旅行に行く今夏はひとまず好調かもしれないが、その後も需要が続くかは不透明だ」と話す。旅費は円安などで倍増しており、大型連休中に海外へ行けた人は所得に余裕がある人に限られると指摘する。

原油価格の動向は遅れて燃油サーチャージに影響し、例えば、2―3月の原油価格平均値が6―7月発券分の運賃に反映される。全日空では現在、日本からのハワイ路線で2万3800円だが、今後さらに高くなる可能性がある。

大型連休をハワイで楽しむため、会社員の松尾アンジェさんは4月下旬に両親と羽田から向かったが、3人分の検査費と英語の陰性証明書代で10万円以上かかったという。帰国時もハワイ出発前72時間以内の検査証明書と到着した空港での検査も必要で、「お金も時間も手間もかかる。円安や燃油代、値上げも痛い」と語る。「でも今度いつ行けるかわからない。今しかない」。