[ヨハネスブルク/アクラ 14日 トムソン・ロイター財団] - 南アフリカの洪水被災者の避難所に届いた食料や衣料品、おむつといった支援物資の中で、ひときわ人気を集めたものがある。WiFiルーターだ。

WiFiルーターのおかげで学生は宿題を仕上げることができ、失業者の求職活動もはかどり、縫製工はドレスのパターンをダウンロードできた。従来こうした作業は多くの人々にとって簡単ではなかった。南アフリカではインターネット接続費用が高いからだ。

ノツィフォ・シソーレさんは、「インターネットへのアクセスは今や人権の1つだけれど、かつての私たちには手が出なかった」と語る。以前は介護施設職員だったが、4月にクワズールー・ナタール州を襲った大洪水の被災者を支援するために退職した。

南アフリカの通信コストは、データ1ギガバイト(GB)あたり最高85ランド(約700円)にも達する。最低賃金で働く人々にとっては4時間分の稼ぎに匹敵する金額だ。

慈善団体イチコウィッツ・ファミリー財団による最近の調査では、サブサハラ(サハラ砂漠以南)のアフリカ諸国におけるデータ通信料が飛び抜けて高いことが特に目立っている。1GB当たりのデータ通信料は、北アフリカでは1.53ドル、西欧では2.47ドルだ。

同財団の報告書「2021年世界のモバイルデータ料金」によれば、サブサハラ・アフリカは世界で最もモバイルデータ料金が高い。

国連によれば、インターネットサービスの料金が高いせいで、テクノロジーやインターネットにおける「持てる者」と「持たざる者」の格差、いわゆる「デジタル・デバイド」が拡大している。世界人口の約半分は「持たざる者」に該当するという。

イチコウィッツ・ファミリー財団のイボール・イチコウィッツ理事長は、特にアフリカの若者の間ではインターネットへのアクセスは基本的権利だという考え方が広がっており、データ通信料の高さは激しい議論の的になりうると指摘。

同財団が実施した調査は、アフリカ大陸全体で18歳から24歳までの約4500人を対象とする面接調査の結果をまとめたもので、ユニバーサルサービスとしてのWiFiを基本的人権だとする回答が71%に達する一方で、WiFiによる常時接続の費用を負担できるのは8人に1人にとどまることが分かった。

「調査結果を見ると、アフリカの若者を街頭での抗議に駆り立てる要因は恐らく4つか5つある。通信料の高さもその1つだ」とイチコウィッツ氏は述べた。

トムソン・ロイター財団によるオンライン取材の中で同氏は「こうした考えは奇妙に思えるかもしれないが、通信コストの高さがアフリカ大陸における安全保障上のリスクになっているのは事実で、手を打たなければ巨大なリスクになる」と語った。

<スマホは普及しているが高コストがネックに>

アフリカ発のソーシャルメディアサイトから草の根のインターネット接続サービスまで、アフリカ大陸全土でデジタル・イノベーションが広がる一方で、テクノロジー分野の起業家たちは、データ通信コストが足かせになっていると指摘する。

「ここアフリカで、大陸全体でのスマートフォン普及率を見れば可能性はいくらでもある。だがデータ通信コストのせいで、できることは限られている」と、ガーナのソフトウエア開発者ディバイン・パプランプ氏は語る。

モバイル通信の業界団体GSMAによれば、スマートフォンはアフリカ大陸で広く利用されている。2021年後半時点で、サブサハラ・アフリカ諸国では住民の64%がスマートフォンを所有しており、2025年までに75%まで増加すると予想されるという。

一方で、スマートフォンを持っているからといって、誰もがインターネットを利用できるわけではない。コストが高く、また通信環境も不安定だからだ。

パプランプ氏の場合、毎月のデータ通信料は約800ガーナ・セディ(約1万3600円)。だが、ここ数カ月でその費用は急上昇したと推測している。

「この金額だけでも人によっては給料1カ月分に相当し、国家公務員の賃金を超えてしまう」とパプランプ氏は語る。

イチコウィッツ氏は、アフリカのデータ通信料が高くなる主な要因として、インフラ環境の不備、そして消費者向け料金を電気通信事業者が一方的に決められる点を挙げる。

「つまり法律を改正しない限り、コスト効率の良い高速データ通信をできるだけ多くの人々に提供するために必要な投資を電気通信事業者に義務付けることは、必ずしも政府の役割ではないということだ」とイチコウィッツ氏。

パプランプ氏は、政策担当者が、電気通信事業者に対して料金引き下げのインセンティブを与える必要があるのではないかと示唆する。たとえば、事業認可を得るための費用を引き下げる、政府出資のインフラを利用してコストを削減できるようにする、などだ。

「ガーナのインターネット普及率を上げていくには長い時間がかかるだろう」と同氏は語り、モバイル決済による収益を引き上げるために政府が最近発行したeレビー(電子課徴金)に国民が反発している点を指摘した。

<リモートワーク拡大にも必須>

イチコウィッツ氏は、インターネットの利用コストが下がれば、アフリカ経済にとって巨大なメリットが生まれ、世界有数の労働力供給源が開放されることになる、との考えを示した。

「アフリカの若者が、米国やブラジル、欧州の若者たちと同様にリモートワークできないという理由はない」と述べた。

テクノロジー分野が発達し「シリコン・サバンナ」とも呼ばれるケニアでは、データ通信料が比較的安く、1GB当たり約99ケニアシリング(約114円)だ。

それでも、貧困から抜けだし、ケニアで盛んになりつつあるテクノロジー産業で働きたいと考える国内の若者にとって、他の必要最低限の生活費に加え、これだけの通信コストを負担することは困難だ。

17歳の学生ブライトンさんは、ケニアの首都ナイロビにある「クワンガワレ」と呼ばれる非公式居住区の出身だ。昨年12月に中等学校を卒業したが、プログラミングを学んでソフトウエア開発者になりたいと願っている。

しかし困ったことに、いくつかのサイトを閲覧してプログラミングを学べるところを探すだけで、通信可能なデータ量を使いきってしまう。

「データ通信料が高すぎる」とブライトンさんは言う。次のステップを計画する一方で、建設現場での仕事に就き、月300シリングを稼ぐ。

障害はあるが、彼は技術革新の未来への希望を捨ててはいない。

「誰もが、若者にとって最高の就職先はテクノロジー部門だと言っている」とブライトンさん。本人の希望でフルネームは伏せてある。

「自分はコンピューターが得意だと思うし、テクノロジーの世界に自分の未来があると思う」

(Kim Harrisberg記者、Kent Mensah記者、翻訳:エァクレーレン)