[バンコク/ロサンゼルス 23日 トムソンロイター財団] - アフガニスタンでイスラム主義組織タリバンが政権を掌握した昨年8月、それまで手作りの工芸品を販売していたオンライン商取引の「アシール」はすぐさま、アフガン国民用の緊急支援物資を買うための寄付を暗号資産(仮想通貨)で受け付ける活動に軸足を移した。

伝統的な銀行システムにアクセスできない人々を、仮想通貨を使って支えるこうした慈善事業は世界各地に広がっている。最近の仮想通貨相場の暴落も、この流れに水を差してはいない。

アシールの技術責任者、モハンマド・ナシール氏は、タリバンに対する国際的な制裁によって「われわれは現金決裁ができない」と語る。

アシールは仮想通貨と併せて法定通貨でも寄付を受け付け、それを仮想通貨に換えて食料や応急処置用品を買っている。アフガン東部で22日に起きた地震でも、被災者向けの寄付集めに乗り出した。この地震では約1000人が亡くなっている。

ナシールさんによると、アシールは相場変動の影響を抑えるため、仮想通貨の中でも主要法定通貨に連動するステーブルコインを使っている。もっとも、ステーブルコインの価格も大幅下落した。

仮想通貨は、代表的なビットコインが年初から約60%するなど軒並み急落しているが、制裁その他の混乱で伝統的な金融システムが使えない場所では魅力を保っている。

<危機時の命綱>

ビットコインその他の仮想通貨は、政府や中央銀行など中央の金融当局に管理されない自由な通貨として設計された。仲介なしでユーザー同士がオンライン送金することが可能だ。

匿名性が高いため、犯罪者や過激派集団、制裁を受けている政府に隠れ家を提供する一方、危機に見舞われた一般市民を支えていると擁護する声もある。

ロシアがウクライナに侵攻した際、活動家のLyudmyla Kozlovska氏は、戦争地帯で動けなくなった人々への支援物資購入をビットコインに頼った。

Kozlovska氏はブリュッセル在住のウクライナ人で、人権組織オープン・ダイアログ・ファウンデーションの創設者。「侵攻当初、銀行システムは機能していなかった」ため、「ビットコインが無ければ、自宅を守る民間人に届けた防弾チョッキの最初の100着を買えなかっただろう」と振り返った。

ビットコイン相場は暴落したが、Kozlovska氏は速やかに地元通貨に変換していたため、大きな損害を被らなかったという。「お金をビットコインのままにしていたら、悲惨なことになっていただろう」

ウクライナ政府は、侵攻を受けた2月以来、約1億ドル相当の資金を仮想通貨で調達したが、相場暴落によって価値が吹き飛んでしまった。

<安い送金手段>

パレスチナ自治区ガザでも仮想通貨は大活躍している。GAZAのソフトウエア開発者、イブラヒム・エルハウト氏によると、パレスチナ人は代表的な国際決済アプリから締め出され、地元銀行や仲介者に高い手数料を払わなければ外国との間で送金や送金の受け取りができない。

「ガザで決済資金を受け取るのは非常に難しい。世界の大半の地域から制限をかけられている」と語るエルハウト氏。外国の顧客から仮想通貨で支払いを受けることもあるという。

アフガンでは大半の国民が銀行口座を持っておらず、自国通貨は過去1年間で急落した。モバイルアプリ「ハサブペイ」の創業者、サンザール・カカール氏は、仮想通貨がより有効な送金手段だと説明する。

同アプリは仮想通貨による送金を可能にするもので、カカール氏はステーブルコイン版も試行中だ。「送金と資金の受け取りにステーブルコインを使うアフガン国民がどんどん増えている」という。

もっとも、昨年ビットコインを法定通貨にした中米エルサルバドルはシステムの不具合に見舞われてビットコインの採用が進まないほか、国が保有するビットコインの価値は相場暴落でほぼ半減した。

アフガンの動画ブロガー、ファーハン・ホタクさんも暴落で損失を被った。それでも仮想通貨への信頼は失っておらず、他の国民の間でも関心は高いままだと言う。

ホタクさんはしばしば仮想通貨についての動画をアップする。「もちろんフォロワーには常にリスクに注意するよう喚起している。ただ、リスクのことなら、われわれアフガン人は他のだれよりも良く知っているよ」

(Rina Chandran記者 Avi Asher Schapiro記者)