[ニューヨーク 3日 ロイター] - 米国株投資家の不安心理の度合いを示すボラティリティー・インデックス(VIX、恐怖指数)は、最近の相場反発基調にもかかわらず高水準のままだが、変動幅自体は小さくなっている。機関投資家の株式保有規模が減っていることで、今後の波乱が抑えられる可能性も出てきた。

今年上半期に1970年以降で最悪の下落率を記録したS&P総合500種はその後、米連邦準備理事会(FRB)の政策運営姿勢が予想ほどタカ派的にならないかもしれないとの期待感を背景に反転上昇。7月の上昇率は月間ベースで2020年11月以降最大になった。

一方、シカゴ・オプション取引所がS&P総合500種のオプション取引のボラティリティーに基づいて算出するVIXは足元の水準が23。一般的に20を超えると投資家が不安感を持ち、30ないし35より高いと強い不安感に見舞われていると解釈されている。

すう勢的な中央値の17.7も大きく上回っているため、米株に対して長期的な懸念も広がっている様子がうかがえる。

しかしVIXは年初以来の最高水準だった40近辺からは低下し、6週間にわたって20と30の間を行き来している。これだけ長く変動範囲が10ポイントにとどまったのは1年半ぶりだ。

VIXの30日後の予想変動率を表すVVIX(恐怖指数変動率)も今週になって一時3年ぶりの低さになった。つまり投資家が、VIXが上下どちらの方向にも急速に振れないと読んでいることが分かる。

サスケハナ・インターナショナル・グループのデリバティブ戦略共同責任者クリス・マーフィー氏は「株式市場が極端に振れるとの懸念は、わずかながら小さくなった」と述べた。

折しも投資家は今、7月の株高が持続可能かどうか思案を重ねているところだ。

複数の大手銀行はこの流れが続くことに懐疑的で、もっと値下がりする余地があると警鐘を鳴らしている。

BofAグローバル・リサーチの株式・計量ストラテジスト、サビタ・スブラマニアン氏はリポートに「これは弱気相場における(単なる一時的な)戻りだとみている」と記した上で、1929年以降の各弱気相場でこうした局面は平均で1.5回発生していると指摘した。同社が想定する年末のS&P総合500種は3600で、現在の水準より約14%も低い。

<売り圧力も緩和>

もっとも今後数カ月の株式のボラティリティーを和らげてくれそうな要素が1つある。それは機関投資家の株式保有が限られていることだ。

今年に入ってFRBが市場に打撃を与える利上げを積極的に進めてインフレを退治するだろうとの観測が広がった場面で、機関投資家は株式への資金配分を減らしている。

ところが最近の株価反発を受けても、彼らの保有規模は拡大していない。ドイツ銀行のアナリストが7月29日に公表したノートによると、裁定取引を行う投資家とシステム取引を手がける投資家のいずれも、株式ポジションは2010年以降の数値分布で見て下から12%の位置にとどまっていた。

エレベーション・セキュリティーズのデリバティブ・計量戦略責任者アナンド・オムプラカシュ氏は「機関投資家の株式保有規模は過去のレンジの下限にある」と語り、以前ほどは猛烈な株安を引き起こす環境にはなっていないとの見方を示した。

機関投資家の持ち高が軽ければ、株安に備えて一斉にオプションの積み増しに走ることはなくなり、株価が新たな下げ局面を迎えたとしても、VIXの上昇が緩やかになってもおかしくない。

ロイターが分析したところでは、VIXのオプション取引高の10日平均は約36万枚と1月初め以降で最低水準に落ちている。

BNPパリバの米株デリバティブ・ストラテジスト、マックス・グリナコフ氏は、株式向けの資金配分が少なくなれば、売り圧力自体も弱まるのではないかと話す。BNPパリバが想定する年末のS&P総合500種は4400と、現在の水準を7%程度上回っている。

グリナコフ氏によると、今年これまでのポジションの縮小ぶりを見る限り、投資家が一斉に売り抜けて株価に打撃を与えることはなさそうだ。

(Saqib Iqbal Ahmed記者)