David Lawder

[ワシントン 16日 ロイター] - 国際通貨基金(IMF)は16日、世界経済は今年も緩やかながら着実に成長するとの見通しを示した。長引く高インフレ、中国や欧州の需要低迷、二つの地域紛争の影響など逆風に直面する中、米経済の強さが世界の国内総生産(GDP)を押し上げるとした。

IMFは2024、25年の世界実質GDP成長率を3.2%と予測。24年については1月に公表した前回の世界経済見通しから0.1%ポイント上方修正した。米国の見通しを大幅に引き上げたことが主な要因。

チーフエコノミストのピエール・オリヴィエ・グランシャ氏は「世界経済は成長率の安定推移とインフレ低下を伴う驚くべき底堅さを引き続き見せている」とした上で「依然として多くの課題が待ち受けている」と指摘した。

同氏は、イランによるイスラエルへの報復攻撃で中東の紛争が激化すれば、経済成長の強力な足かせになる可能性があると予想。原油価格やインフレが押し上げられて世界の中央銀行が金融政策を引き締める結果を招くとした。

IMFは「悪化シナリオ」として、中東情勢の激化が原油価格の15%急騰や海運コストの上昇を引き起こし、世界のインフレ率を0.7%ポイント程度押し上げるとの予測を示した。

グランシャ氏はインフレ動向について、低下しているものの中銀目標に戻す取り組みはここ数カ月で鈍化しており、最近の米経済指標は堅調な需要を示している指摘。

「全体的な軌道としてはインフレが今年を通じて低下し、米連邦準備理事会(FRB)が利下げを開始できる状況になると依然予想している」とロイターに述べた。ただ「市場が予想していたほど早くはないかもしれない」とした。

IMFは世界の総合インフレ率の中央値が昨年の4%から24年末に2.8%、25年には2.4%に低下すると予想した。

IMFは24年の米成長率予測を2.7%と1月時点の2.1%から上方修正。23年末から24年にかけて雇用や個人消費が予想以上に強かったとした。25年は金融・財政引き締めの影響が遅れて出るため1.9%に鈍化するとみているが、それでも1月の予測(1.7%)からは引き上げた。

米国以外の予測は大きく異なり、ユーロ圏の24年成長率予測は1月の0.9%から0.8%に下方修正。ドイツやフランスの消費者信頼感低迷などが影響した。高金利や根強い高インフレに悩まされる英国についても、24年成長率予測を0.1%ポイント引き下げて0.5%とした。

<中国不動産部門のリスク警告>

中国の成長率については23年の5.2%から24年は4.6%、25年は4.1%に低下するという予測を維持した。ただ、不動産部門の包括的な再編計画がなければ内需低迷が長引き、経済見通しが悪化する可能性があると警告した。

そうなれば国内のデフレ圧力が一層強まり、安価な製品の輸出急増が他国による貿易制裁を招く恐れがある。

IMFは中国に対し、存続不可能な開発業者の撤退を加速し、未完成の住宅プロジェクトの完成を促進するとともに、消費者需要の回復を促すため脆弱な家計を支援するよう勧告した。

一部の主要新興国に関しては明るい材料を指摘。ブラジルの24年成長率予測を0.5%ポイント引き上げて2.2%としたほか、インドも0.3%ポイント引き上げて6.8%とした。

20カ国・地域(G20)の新興国は世界貿易における役割が拡大しており、今後の成長でより大きな役割を担うことができるとの見方を示した。

一方、低所得の途上国はコロナ禍後の調整に引き続き苦慮し、中所得新興国よりも経済への傷跡が大きいと指摘。これら低所得途上国全体の24年成長率予測は4.7%と、1月時点の4.9%から下方修正した。

<ロシアの見通し上方修正>

ロシアの24年成長率予測は3.2%と1月の2.6%から上方修正した。西側による価格上限制度にもかかわらず原油相場が上昇する中、石油輸出収入が依然堅調なほか、軍事生産に関連する政府の支出・投資、労働市場が逼迫する中での個人消費拡大などが背景とした。25年成長率も1月予測(1.1%)から1.8%に引き上げた。

ウクライナの24年成長率は3.2%に減速が見込まれるものの、25年は6.5%に加速する見通し。

ロシアのウクライナ侵攻当初に見られた穀物や原油など商品価格の高騰はその後落ち着いているが、紛争が拡大すれば再び高騰する可能性がある。