[バンコク 1日 ロイター] - 北朝鮮による相次ぐミサイル発射実験で朝鮮半島の緊張が高まるなか、タイに不法入国する北朝鮮人の数が、この数カ月間で急増している。タイの移民当局者が明らかにした。

タイは、脱北者に人気の通過ルートとなっている。毎年、数百人の北朝鮮人が中国に逃れてタイにたどり着き、そこから通常は韓国に送られる。

2016年は535人の北朝鮮人がタイに到着したが、今年は6月末までに385人が入国していることを、ロイターが確認したタイ移民当局のデータは示している。毎週、その数は増え続けている。

「タイ北部だけでも、平均20─30人の北朝鮮人がやって来ている」と、ある移民当局者は匿名でロイターに語った。

北朝鮮が中国との国境で管理を強化しているにもかかわらず、脱北者数は急増している。北朝鮮による相次ぐ核・ミサイル実験に対し、しびれを切らしつつある米国が警告を発するなど、朝鮮半島の緊張は高まっている。

だが、韓国の首都ソウルに拠点を置くNGO「北韓人権市民連合」によれば、韓国への脱北者数は今年増えておらず、タイ経由で来る脱北者の全体に占める割合が高まっている可能性があるという。

韓国統一省は、今年上半期に同国にやって来た脱北者の数は593人と明らかにした。一方、昨年は1418人、一昨年は1275人だった。

タイ移民当局によると、北朝鮮人の大半は、隣国ラオスを経て「ゴールデントライアングル(黄金の三角地帯)」付近の最北部からタイに入国するが、南から入る新たなルートも浮上しているという。

「この数年、多くの北朝鮮人がメコン川沿いの北東部からタイに流入している」と、メコン川を警備する司令官は語った。

別の高官もこうした傾向を確認した。同高官はロイターに対し、脱北者の一行はラオス国境沿いのタイ北東部の県であるノンカイやナコーンパノムから入国していると明らかにした。

<非公式な合意>

公式には、タイは自国に入国する北朝鮮人を難民ではなく、不法移民として扱う。

タイは1951年に採択された「難民の地位に関する条約」に署名しておらず、難民に関する法律も同国には存在しない。

だが非公式に、タイ当局、韓国政府、脱北者の間で取り決めがなされることがしばしばだ。

「北朝鮮人は捕まるためにタイに来る。韓国に亡命するためだ」と、ゴールデントライアングル付近のチエンコーン郡当局者は話した。

タイに入国した脱北者は逮捕され、不法入国で起訴される。

その後、彼らはタイの首都バンコクにある移民収容所に移送され、通常はそこから韓国に送還される。

「韓国の憲法が全ての朝鮮人を市民と認めているため、北朝鮮人の送還先として韓国が正当と見なすことは可能だ」と、国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア担当副ディレクターであるフィル・ロバートソン氏は語った。

タイ・韓国間の取り決めのため、国際連合難民高等弁務官事務所(UNHCR)が、タイにいる脱北者に対処することはまれだという。

「脱北者は通常、UNHCRの事務所には来ない。安全を求める他の方法があるから」と、UNHCRアジアの広報担当者ビビアン・タン氏は述べた。

バンコクにある韓国大使館は、大使館の役割についてコメントを差し控えた。

(Panu Wongcha-um記者 翻訳:伊藤典子 編集:山口香子)