[ソウル 14日 ロイター] - 韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、年来の仇敵・北朝鮮と対決姿勢を強める同盟国・米国の間でほとんど身動きができない状態に陥っている。トランプ米大統領の発言が過激さを増す一方で北朝鮮は対話に応じようとはせず、選択肢は乏しい。

文氏が大統領に就任してまだ3カ月。韓国で左派が大統領に就くのは10年ぶりだ。しかし北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は、対話を呼び掛ける文氏の提案に冷たい態度を示している。一方トランプ米大統領は、北朝鮮が核やミサイルで脅しを掛けるなら「炎と怒り」に遭うと警告した。北朝鮮と米国が衝突すれば韓国が巻き込まれるのは避けられない。

韓国の政府高官や文大統領の顧問によると、選択肢が限られた文氏は、北朝鮮と直接対話して溝を埋めるよう米政府に働き掛けている。

大統領外交・安全保障特別補佐官の文正仁(ムン・ジョンイン)氏は「北朝鮮の兵器開発計画を止めるには対話が急務だ」と話す。「しかし北朝鮮は韓国は無力だとみなしており、対話に応じないだろう。北朝鮮は米国との直接対話を望んでいる」という。

米政府は北朝鮮に対する経済制裁を強化して圧力を掛け続け、核兵器開発に歯止めを掛ける意向だ。

国政企画諮問委員会の外交安保分科委員長を務めたイ・スフン氏は「文氏はトランプ氏に軍事的な選択肢は絶対に検討すべきではないと伝えたが、(北朝鮮と米国の)強力な指導者2人が衝突すれば、われわれにできることは少ない」と述べた。その上で「ただ、だれも破滅的な結末は望んではいない。いずれ妥協が成立し、対話が行われると期待している」と述べた。

文氏も14日に支持者との会合で、何があっても対話によって北朝鮮との溝を解消すると強調。「米国がわれわれと同じ立場を取り、今の状況に対して冷静かつ責任を持って対処すると確信している」と力説した。

しかし今のところ対話の可能性は小さいようにみえる。

韓国大統領府の報道官によると、トランプ氏は1週間前に文氏と電話で会談し、朝鮮半島で悲劇的な戦争を絶対に起こしてはならないと述べた。しかしその数日後には北朝鮮が米国を脅かせば炎と怒りに遭うと警告。さらに北朝鮮が米領グアムへの新型中距離弾道弾ミサイル発射計画を発表し、北朝鮮と米国の間では先週、緊張が一段と高まった。

両国は互いに発言の過激さがエスカレートしてきており、突発的な衝突への不安が高まっている。韓国の首都ソウルは北朝鮮との国境からわずか40キロメートルに位置し、2500万人が暮らすだけに、実際に衝突が始まれば多数の死傷者が出るだろう。

北朝鮮との対話路線を掲げて大統領に就任した文氏は、1998年─2008年の対北関与政策で重要な役割を果たした何人かの人物を国家安全保障チームに配し、主要閣僚に充てている。

高麗大学の北朝鮮問題専門家Nam Seong-wook氏は「問題は金正恩氏が、父親の金正日氏とまるで違うことだ」と話す。「文政権の当局者は金正日氏にしか対応したことがなく、金正恩氏のことは分からない」という。金正恩氏が政権を握ってから6年間に実施したミサイル実験の回数は、父親と祖父が行った実験を合わせたよりも多く、核実験も3回行い、米本土の攻撃が可能な弾道ミサイルの開発も急ピッチで進めている。

北朝鮮が攻撃的な姿勢を強める中で金正恩氏が対話を拒否し、韓国政府には打てる手がほとんどないというのがアナリストの見方だ。

イ・スフン氏は「韓国は現状では、米国や中国と話し合う以外に何もできない。ただ、この点はうまくいっている」と評した。

(Ju-min Park、Heekyong Yang記者)