Ju-min Park Rocky Swift

[東京 15日 ロイター] - 緊急事態宣言の再発令に追い込まれた日本は、昨秋まで新型コロナウイルスの感染者数を比較的低く抑えてきた。しかし、感染拡大が緩やかだったことが検査体制の拡充と病床の整備を遅らせ、十分な準備が整わないまま第3波を迎える要因になったと、公衆衛生当局の専門家や医師、専門家は指摘する。昨年暮れに感染者が急速に増え始めても、当初の成功が危機感を鈍らせ、状況を悪化させた可能性があるという。

<潜在的な影響を過小評価>

コロナが世界的に猛威を振るう中で、日本は米国や英国、イタリアなどが導入した厳格な都市封鎖(ロックダウン)を回避してきた。コロナによる死者は14日時点で累計 4315人。米国の1%にとどまり、先進国の中で最も低い水準にある。

しかし、冬に入り日本は強烈な感染第3波に見舞われている。1日当たりの全国の感染者数は平均6400人を超え、最も深刻な東京都は過去最多を連日更新した。

状況が急速に悪化する中、ロイターは10人以上の医師や感染症の専門家、保健当局者に取材した。彼らの多くは、検査の拡充を求める声に対して政府の対応が遅かったこと、全国の検査データをリアルタイムで把握できないことなどを訴えた。半年後に開催が迫った東京五輪・パラリンピックに向け、計画的な対策を打てないのではないかと危惧する意見もあった。

「とりわけ夏と秋にかけたコロナ感染症の潜在的な影響を、日本政府が過小評価していたということだ」と、感染症が専門の岩田健太郎・神戸大学教授は言う。早くから日本政府のコロナ対応に警鐘を鳴らしてきた岩田教授は、日本がこのまま五輪を開催できるかどうかも疑問視する。

感染が収束しない中で観光需要喚起策「GoToトラベル」を推進し、東京都の小池百合子知事ら各地の自治体に押される形で緊急事態宣言を出した菅義偉首相は、感染症対策を巡って世論から批判を浴びている。

共同通信が10日に実施した世論調査によると、菅内閣の支持率は前回12月調査から9.0ポイント下落し41.3%。68.3%が政府のコロナ対応を評価しないと答え、80.1%が五輪の中止あるいは延期を求めた。

<検査拡充を求める声>

コロナの感染が国内で広がり始めた当初から、日本は他の主要国に比べて人口1000人当たりの検査数が少なく、代わりに集団感染(クラスター)の発見や濃厚接触者の追跡に力を入れてきた。

保健所の職員や医療関係者は、検査体制の拡充をずっと政府に求めてきた。感染の広がりを封じ込めるためには陽性者を見つけ、早めに隔離することが重要だと訴えてきた。

厚生労働省の開示資料によると、1日当たりのPCR検査数は約5万5000件と、能力の半分以下にとどまる。

日本は検査数を増やすため、無料の行政検査に加え、医療機関でない民間施設による自費検査を認めているが、これは政府が集計する公式数字には含まれない。

法律上、民間の検査機関が結果を当局に報告する義務はない。しかし、田村憲久厚労相は1月初めの会見で、民間のデータも集計できるよう検討していくを考えを示している。

「(緊急事態宣言による)行動制限だけで乗り切るというのは、世界的に例がない」と、臨床検査学が専門の宮地勇人・東海大学教授は言う。「足元の急速な感染拡大が収まり、緊急事態宣言が解除された段階で、PCRを受けやすくし、検査を増やすことをしないと、また同じことが起きると思う」。

こうした中、広島県は独自に、広島市内の住民など最大80万人を対象とした大規模なPCR検査の実施を検討し始めた。

とはいえ、国内の感染者数の集計に誤差があるとは専門家は考えていない。陽性が確認された人は、医師の診療を受け、保健所に届け出ていると考えられているためだ。

政府のコロナ対策分科会のメンバーである押谷仁・東北大学教授は、検査数を増やすことは重要だとする一方、医療体制がひっ迫する可能性を指摘する。「感染者がどんどん増えている段階にあり、今は検査方針を変えるのは望ましくない」と話す。

厚労省結核感染症課の加藤拓馬課長補佐は、東京の繁華街など感染リスクが高いエリアではすでに大規模な検査を実施してきたと説明する。一方で、検査対象は感染した可能性がある人であり、まったく疑いがない人にまで広げる考えは現時点ではないという。

<疲弊する医療現場>

最前線で働く現場の医療従事者からしてみれば、冬になって新型コロナが猛威を振るうのは当然予測できることだった。ロイターの取材に応じた3人の医師によると、彼らがそれぞれ働く首都圏の大型病院は数週間前から満床となり、スタッフは疲労が限界に達しているという。

政府は、新型コロナの患者受け入れを病院へ勧告できるよう、感染症法の改正を検討していると報じられている一方、患者を受け入れるよう政府が医療機関に命じる権限は現在はない。厚労省の調査によると、民間医療機関の多くも感染症の受け入れが現時点では可能ではないと答えている。

政府は昨年末、医療機関が重症者病床を増やしたり、医師や看護師などを確保するのを支援するため、今年度の予備費から2693億円を支出することを決めた。しかし、病床を確保する支援が遅すぎたというのが医療関係者らの本音だ。

東京都の新型コロナ入院患者は1月13日時点で3266人。コロナ用病床の約81%が埋まっている。人工心肺装置など呼吸を補助する機器が必要な患者(重症者)は、ここ1カ月で2倍の141人に増えた。

「とにかく対策が遅かった。動くのが遅かった」と、聖マリアンナ医科大横浜市西部病院の桝井良裕・救命救急センター長は話す。「大きなものの考え方で対応しないと、限界が近づいているというのは分かっていた」と、桝井氏は言う。

(Ju-min Park、Rocky Swift、斎藤真理、村上さくら 日本語記事作成:久保信博 編集:田中志保)