[北京 19日 ロイター] - 米国が同盟国との関係を駆使して中国への圧力を強める体制を再構築しつつある中で、中国はロシアやイランといった強権的な国や、中国に経済依存する国との連携を深めようとしている。さらに対抗制裁措置や恫喝(どうかつ)という手法も用いて、西側の同盟関係の分断も狙っている。

複数の外交官や専門家によれば、バイデン米政権は他の民主主義国に対し、人権や南シナ海などでの地域安全保障で強引さが増す一方の中国に対し、毅然とした態度を取るよう呼び掛けている。これは中国にとって非常に憂慮すべき事態だという。

中国外務省はロイターに対し、米国が自己のイデオロギーに沿って国際政治を「ブロック」化し、反中国派を形成しようとすることに中国が常に断固反対してきたと表明。「われわれは関係諸国が自らの国益を明確に見定め、米国の反中国の道具に成り下がらないよう期待している」とコメントした。

アラスカ州アンカレッジでの3月の米中外交トップ会談では、激しい議論の応酬が繰り広げられた。中国側はその後、ロシア、イラン、北朝鮮といった米国主導の制裁対象国に、切迫感を強めながら接近しようとしているもようだ。

<中国の味方集め>

シンガポール南洋理工大学S・ラジャラトナム国際研究院のリー・ミンジャン准教授は「中国は米国の同盟外交について心底不安に思っている」と述べ、その表れが西側から「のけ者」にされた国と一緒に「寒さをしのぐために集まって固まろうとする」試みだと説明した。

アンカレッジ会談から数日後、中国の王毅国務委員兼外相はロシアのラブロフ外相を中国南部の桂林に迎えた。ラブロフ氏は、ロシアと中国が共同で西側のイデオロギー的な押しつけをはね返すべきだと表明した。

王氏はその1週間後にはイランに飛び、政治経済関係を強化する25年間の新協定に調印した。中国人民大学のシー・インホン教授によると、これによって全ての中国企業は事実上、米国による対イラン制裁の直接、ないし間接の措置対象になる。

一方、中国の習近平国家主席は、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長とメッセージを交換。イランと同様、核開発問題を巡って米国から制裁を受けている北朝鮮との絆の強化を求めている。

中国は、経済的に同国を頼りにしている近隣諸国に秋波を送るのにも余念がない。王氏はここ数週間で南部の福建省にインドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、韓国の外相を相次いで招待した。

リー准教授は、新型コロナウイルスのパンデミックで痛手を受けたこれらの国の経済回復につながるような数々の支援を中国が提供し、それを通じて、支援を与える国が米国との共同歩調を考え直すように仕向けるだろうとみている。

フィリピンでは外務省や軍首脳が、南シナ海の排他的経済水域(EEZ)に中国が武装民兵を乗せた船を停泊させていると糾弾した。しかし、ドゥテルテ大統領はその後、海域を巡る争いを新型コロナウイルスワクチンや経済立て直しを巡る中国との協力に影響させるつもりはないと断言した。

<米国の同盟重視への転換>

バイデン氏はトランプ前政権が掲げてきた多くの対中問題で、前政権と同様、中国に圧力をかけ続けている。しかし、その際に同盟国との協調を重視する点が異なる。

16日の日米首脳会談も尖閣問題から香港と新疆ウイグル自治区での人権問題に至るまで、日米両国が結束して中国に立ち向かうことを確認。3月には米国と欧州連合(EU)、英国、カナダが新疆ウイグル自治区の強制労働問題を巡り、制裁発動で足並みをそろえた。パンデミックの起源情報を中国が適切に開示していないと非難する共同声明にも、十数カ国が参加した。

ドイツ、英国、オランダ、カナダ、フランスはいずれも最近、米国とともに南シナ海の紛争海域に軍艦を派遣するか、そうした共同計画を明らかにしている。

来年開催予定の北京冬季五輪についても、米国は特に新疆ウイグル族やその他少数派イスラム教徒への人権侵害の状況をにらみながら、同盟国と「共同歩調」で参加の是非を決めたい考えだ。

<各個撃破>

中国は米国が同盟国との一枚岩を誇示することに激しく反発し、日本については米国の「奴隷」、カナダのトルドー首相については米国の「走狗」と強く批判している。

西側の結束のほころびを誘おうと中国が練っているのは、米国の同盟国に対して個別に中国と関係を強めるよう働き掛けることだ。まず、経済的なメリットを提示し、それでも反中国の協調行動から手を引かないなら、懲罰を与えるという戦略だ。

専門家によると、新疆問題で中国の当局者に制裁を科したEUに対しては、不相応なほど厳しい対抗措置を講じており、EUが待望の末にようやく大筋合意した投資協定が破棄される恐れもある。

民間シンクタンク、欧州外交評議会(ECFR)のアジア・プログラム・ディレクター、ヤンカ・エルテル氏は、中国政府は米国とEUの連合によって核心的利益を脅かされるのであれば、EUとの経済利益は犠牲にする覚悟だとみる。

そうしたメッセージを強調するかのように、習近平氏は最近、ドイツのメルケル首相との電話会談で、EUが自らの「独立性」に関して正しい判断をするよう望むと伝えた。

ただ、中国はなおも欧州の技術や投資が必要だ、と指摘する中国のEU通商関係者もいる。

もっとも中国は、中国と競うよりは手を組む方が得だと米国を納得させるのをあきらめたわけではない。これは先週に米国のケリー気候変動問題担当特使に対し、22─23日に米国が主催する気候変動サミットに関し、中国として支援する姿勢を見せたことからもよく分かる。

中国人民大学重陽金融研究院のワン・ウェン教授は「米国が中国を敵とするより友人扱いする方が、米国の利益になると認められるようになることを中国は願っている」と評した。

(Gabriel Crossley 記者、Yew Lun Tian記者)