[ワシントン 31日 ロイター] - バイデン米大統領が、アフガニスタン民主政権の大統領だったアシュラフ・ガニ氏と最後に行った電話会談では、軍事支援や政治方針など幾つかの問題が議論されたものの、2人とも目前に迫っていたアフガンを揺るがす危機を感得し、これに備えていた様子は見えなかった。ロイターが会談の記録を入手して分かった。

電話会談は7月23日に約14分続いた。8月15日にはガニ氏が首都カブールの大統領府から逃げ出し、入れ替わるようにイスラム主義組織タリバンが侵攻。それ以来、絶望した何万人ものアフガン人が国外に脱出したほか、カブール国際空港付近で起きた自爆攻撃によって米兵13人と多数のアフガン市民が犠牲になるなど緊迫した事態が続いている。

バイデン氏は電話会談で、ガニ氏が悪化の一途をたどっていた治安情勢をコントロールするための具体的な計画を示せるなら助太刀は惜しまないと表明。「われわれがその計画を把握できるなら、緊密な航空支援を提供し続ける」と発言していた。実際その数日前には、米軍が空爆でアフガン政府部隊を支援し、タリバン側が和平協定違反だと反発した。

またバイデン氏は、米政府が訓練制度や資金をやりくりしたアフガン陸軍を絶賛して、ガニ氏に「最高の軍を手にしているのは間違いない」と伝え、その30万人の良く装備された部隊は70万−80万人の敵に対して十分に戦えると断言した。ところが結局、アフガン政府軍は国内の各主要拠点でタリバンとろくに戦闘を交えないまま、あっという間に瓦解してしまった。

一方でバイデン氏はアフガン政府の現状認識に甘さがある点を強調し、このままではタリバンとの対決がうまくいかないとガニ氏に忠告したもよう。ただこうした態度は、バイデン氏が23日後に劇的な政変が起こり、肝心の民主政権がなくなってしまうとまでは予想していなかったことを物語っている。電話会談における「われわれは外交、政治、経済の面で懸命に戦い続け、あなた方政府が生き残るだけでなく、長続きして発展できる道を確保していく」というバイデン氏の発言も、今ではむなしく響くばかりだ。

これに対してガニ氏は「われわれは、パキスタンによる作戦、補給面の支援を受けたタリバンと、主にパキスタン人からなる少なくとも1万から1万5000人の国際テロリストによる全面的な侵略に直面している」などと訴えていた。当時のアフガン政府当局者や米国の専門家は、タリバンが再び力を持った重要な要因の1つとして一貫してパキスタンの支援を挙げていた。

在ワシントンのパキスタン大使館は、こうした説を真っ向から否定。大使館の報道官はロイターに「タリバン戦闘員がパキスタンから越境攻撃してくるという話は、残念ながらガニ氏が自らの指導と統治の失敗を正当化するための言い訳や後知恵なのは間違いない」と語った。

ロイターは今回の件でガニ氏のスタッフに電話や書面で接触を試みたが、連絡はつかなかった。現在アラブ首長国連邦(UAE)に滞在しているとみられるガニ氏が最後に公式声明を発表したのは8月18日。この時、アフガンから脱出したのは流血を避けるためだったと述べた。

ホワイトハウスは、電話会談についてコメントを拒否した。