[北京 9日 ロイター] - 中国上海市が新型コロナウイルスの感染封じ込めに苦戦する一方で、市のトップである李強・市共産党委員会書記(62)は政治的に痛手を負っているようにはみえない。

習近平国家主席と非常に近い関係にある李強氏は、今年秋の共産党大会で最高指導部である共産党政治局常務委員会のメンバー入りする──ずっと以前から定められていた道筋は今なお安泰、というのが多くの専門家の見解だ。同大会で習氏が、国家主席3期目を努めることが正式に承認されるとみられている。

一部の地方当局者が、コロナ禍によって順調な昇進コースから外れてしまったのは間違いない。しかしこれらの脱落者は、李強氏が習氏と築いてきたつながりや歴史を持っているわけではなかった。一方、李強氏は習氏の下で党内の序列を着々と高めてきた。

もちろん中国の政治は分かりにくく、習氏が自ら任期制限を撤廃するなど前例打破に積極的になっているだけに、党大会がどんな展開になるのか予想しがたい面はある。ただ習氏にとっても、いくら自身が毛沢東以降最も強力な指導者とされるとはいえ、非常に忠実な側近の1人を政治局常務委に登用する人事は必要不可欠と言える。

上海市は以前、全域のロックダウン(都市封鎖)を回避するために隔離などの規制措置を細分化して実施する政策を行っていたが、李強氏は公には、この措置に直接関与したとされていない。この政策は結局破綻し、当局は方針を180度転換してこれまで5週間余りにわたって全面的なロックダウンを継続している。事情に詳しい関係者がロイターに語ったところでは、隔離区域外の感染者を今月末までゼロにすることを目指し、ロックダウンをさらに強化しつつあるという。

<使える駒>

ソーシャルメディア上では、李強氏に対する怒りが飛び交っている。短文投稿サイト、微博(ウェイボ)には「上海市の党委書記は自分の失敗を認め辞任すべき」「恥知らずの政治家が上海を破壊した」といった投稿が寄せられた。

コロナが最初に検出された武漢市や、その近くの湖北省では2020年に共産党トップが更迭された。今年になって感染が拡大し、ロックダウンを迫られた西安市の場合、少なくとも31人の当局者が処罰を受けている。

上海市でも感染拡大期間中に少なくとも25人が処罰された。しかし、処罰対象は上海市ではいずれも地区トップ以下の当局者で、西安市も最高の地位でも保健衛生部門のトップにとどまった。

英シンクタンク、王立防衛安全保障研究所のシニア・アソシエートフェローで元英外交官のチャールズ・パートン氏は「上海のしくじりで責めを負わされるのは、政治的に『替えがきく』人物になる」と指摘する。

シンガポール国立大学リー・クワンユー公共政策大学院のアルフレッド・ウー准教授は、李強氏でなければ今ごろ地位を失っていただろうと述べた上で「だが李強氏は習氏に近いため、習氏にとって新体制の1つの駒として有効に使える可能性があるだけでなく、上海市トップは他のほとんどの主要都市のトップよりずっと地位が高いので、李強氏は安泰だろう」と付け加えた。

<出世の階段>

上海市は1日の新規感染者数がなお数千人に上っている。それでも共産党政治局常務委は5日、習氏のコロナ対策を原動力に党が「上海での(コロナとの)闘いに必ず勝利」できるとの見方を表明した。

上海政法学院元准教授で現在はチリを拠点に政治評論活動をしているチェン・ダオイン氏は「上海のコロナとの闘いを成功と位置付けるなら、習氏の政策を着実に実行してきた李強氏がなぜ処罰される必要があるのか」と述べた。

習氏が掲げる「ゼロコロナ」政策は、感染力の強いオミクロン株の登場で一段と行き詰まり、世界がもはやコロナとの共生に舵を切る中で、中国の孤立を進めている。ただこうした逆風下でも、中国は少なくとも党大会まではゼロコロナ政策を堅持するとの予想が大勢だ。

そして李強氏は、一貫して習氏の知遇に応えている。

李強氏は浙江省生まれで、習氏が同省の党委書記を務めた2004─07年には最も信頼が置ける部下として活動。その後習氏は汚職取り締まりの一環として江蘇省の幹部を更迭し、後任として16年に李強氏を江蘇省の党委書記に抜擢した後、続けて17年に上海市党委書記に起用した。

1980年代終盤以降、習氏を含めて上海市トップを務めた後、最終的に政治局常務委員会に入らなかった人物は1人しかいない。

(Yew Lun Tian記者)