[ソウル 19日 ロイター] - 北朝鮮は、新型コロナウイルスの感染拡大に対処するため、消毒剤や体温計など医薬品や医療用品の生産を拡大している。国営朝鮮中央通信(KCNA)が19日報じた。

KCNAはまた、熱や痛みを抑えるのに使う伝統的な薬について「新型コロナの予防と治療に有効」とし、生産を増やしているとした。

北朝鮮でのコロナ流行を巡っては、医療資源やワクチンが欠如しているため重大な危機に発展する可能性が懸念されている。国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)のスロッセル報道官は17日、北朝鮮のコロナ流行について、感染拡大を抑制するための措置は同国の人権に「壊滅的な」影響を及ぼす可能性があるとの見方を示した。

韓国の通信社ニューシスは国内情報機関から説明を受けた議員らの話として、北朝鮮のコロナ流行は、4月25日に平壌で行われた大規模な軍事パレードの後に広がったと報道。感染は5月後半から6月前半にかけてピークを迎える見通しともした。

KCNAは、4月後半に原因不明の発熱が広がったとしている。

KCNAが国家非常防疫司令部のデータを基に伝えたところでは、18日夜時点で新たに少なくとも26万2270人に発熱の症状が確認され、1人が死亡した。検査で陽性となった人の数は報じていない。

新型コロナ流行を初めて確認した先週からこれまでに報告された発熱患者は197万8230人、死者は63人となった。全国的なロックダウン(都市封鎖)など、厳格な感染抑制策を敷いている。

KCNAによると、首都平壌と近郊地域の工場は医薬品や体温計、その他の医療用品を増産。隔離施設も増設し、全土で消毒作業が強化されているという。

KCNAは「消毒液を生産するため、数千トンの塩が平壌市に緊急に輸送されている」とした。

金正恩朝鮮労働党総書記は17日、コロナ感染拡大に対する政府の対応を「未熟」と批判し、能力不足でやる気がないと官僚を非難した。

北朝鮮ではワクチン接種が行われておらず、コロナの治療法もないとみられる。こうした中で国営メディアは、患者に鎮痛薬や抗生剤の使用を推奨。塩水でのうがいや、スイカズラやヤナギバのお茶を飲むなど、効果が確認されていない民間療法も勧めている。

北朝鮮の国営テレビは、屋外でマスクを二重にして着用するよう提唱した。金総書記が週末に薬局を訪問した際も、マスクを二重にしていたという。

シンガポール国立大学の医学教授、デール・フィッシャー氏は、検査が行われていなことや、流行しているのが無症状が多いオミクロン株であることから、危機が過小に考えられている可能性があると指摘。ワクチン接種が行われていない中、社会や経済により深刻な影響が及びかねないと警鐘を鳴らした。

「世界最高の医療システムを持つ国でさえ苦戦した。(北朝鮮の)公衆衛生への真の影響が正確には語られていないのではないか」とし「(北朝鮮の)感染抑制にはワクチン接種が不可欠であり、大規模な公衆衛生措置が必要だ」などと述べた。