Stanley Widianto Ananda Teresia

[ジャカルタ 3日 ロイター] - 2月のインドネシア大統領選でプラボウォ国防相が勝利した直後、ジャカルタの中国大使館はプラボウォ氏の愛猫「ボビー」にキャットツリーなどたくさんの玩具を送った。

プラボウォ氏が勝利宣言した数日後には、中国大使が同氏の自宅に出向いて祝意を表明。そして今週、習近平国家主席の招待を受けたプラボウォ氏が北京を訪問した。

これらは、シンガポールに次いで対インドネシア投資額が多い中国によるプラボウォ氏への積極的な外交努力の一環だ。

専門家らは、中国が次期大統領のプラボウォ氏に働きかけ、ジョコ大統領の築いた中国と強固な経済関係が確実に踏襲されることを狙っていると分析する。ジョコ氏の下では、両国間にあつれきをもたらすような懸案もほとんど存在しなかった。

実際、プラボウォ氏はジョコ氏の政策を継続するとみられている。しかし、インドネシアが南シナ海領有権問題などの地政学的緊張に巻き込まれた場合、その行動はジョコ氏よりも予測不可能で、突然状況が変化する恐れもあると専門家はみている。

中国は南シナ海のほぼ全域で権益を主張しているが、インドネシアを含む東南アジア諸国連合(ASEAN)の加盟国の領海と重複する。例えばフィリピンは、中国との関係が急激に悪化している。

一方、ジェンデラル・アフマド・ヤニ大学のヨハネス・スレイマン教授(国際関係学)は、プラボウォ氏は、ナショナリストとしての自身の評価に磨きをかけたいと考えており、南シナ海問題では一段と強硬な姿勢を取ろうとするだろうとみている。

スレイマン氏は「プラボウォ氏はナショナリストを常に掲げてきた。これは彼のトレードマークだ」と語る。

インドネシアの歴代副大統領の顧問を務めている外交専門家のデウィ・フォーチュナ・アンワル氏は、プラボウォ氏が現在国防相を務め、軍人出身ということから、中国が懸念しているのは経済よりも安全保障を優先し、ジョコ氏時代とは路線が異なるのではないかという点だと指摘。「彼は(ジョコ氏よりも)予測できない面が大きくなる」と付け加えた。

またデウィ氏は、中国が次期大統領に決まっただけの外国政治家を招くのは異例で、いかにインドネシアを取り込みたいとの気持ちが強いかを物語っている分析した。

米国と中国がインドネシアに目を向けさせようとせめぎ合う中で、中国としては何としてもプラボウォ氏にジョコ氏の政策を続けて欲しがっている、というのがデウィ氏の観測だ。

<ジョコ氏の政策>

インドネシア国防省の説明では、1日に北京を訪れたプラボウォ氏の立場はあくまで国防相で、次期大統領ではないということだが、同氏は両国関係の一層の緊密化を支持し、ジョコ氏の対中友好政策を継続したいとの考えを示した。

さらに習氏との会談を終えたプラボウォ氏は、中国を「地域の平和と安定を確保する上での重要なパートナーの一人」と認め、防衛協力も進める意向を明らかにした。

プラボウォ氏は大統領選を通じてジョコ氏の経済外交政策を受け継ぐとの公約を掲げ、副大統領候補にジョコ氏の息子を起用し、ジョコ氏から暗黙の支持を受けたことが勝利につながった面もある。

ジョコ氏は、インドネシアの電気自動車(EV)産業を発展させる目的などで中国からの投資呼び込みを積極化。米国に対しても投資を求めたが、昨年のインドネシア向け投資額は33億ドルと、中国の74億ドルを大きく下回った。

習氏は1日、中国はインドネシアとの関係を戦略的・長期的な視点で考えていると主張し、鉄道事業を例に挙げてあらゆる分野での戦略的協力を深化させていくと言い切った。