日本では、離婚というイベントが、その後における子供のメンタルヘルスに悪影響を及ぼすケースは少なくありません。

また、同居親と別居親間の関係性が悪化することによって、面会交流の機会が離婚時に約束された条件よりも少なくなってしまうことも多々あります。

面会交流が適切に行われなくなり、養育費未払いが発生して、子供の生活が立ち行かなくなる。

このような状況に陥れば、子供の人生やメンタルヘルスに多大な悪影響を及ぼすことになるでしょう。

このような事態を予防し、子供の福祉を確保するためにはどのようなことに注意すべきなのでしょうか。

大正大学の青木聡教授に独自取材しました。

面会交流が少ない原因と養育費との関係性

アシロ取材班

日本で子供との面会交流の機会が少なくなる傾向にある原因はどのような点にあるのでしょうか。

青木聡教授

日本は、単独親権制度となっています。

この制度によって、子供と別居親との関係性が希薄となりやすいことが最大の問題点です。

欧米諸国では共同親権制度が標準であり、日本のように単独親権制度の国は珍しいといえるでしょう。

日本での離婚には、協議離婚というものがあります。
夫婦での話し合いの結果、離婚時の財産分与や養育費等の諸条件について取り決めを行って、離婚をすることが一般的には協議離婚と呼ばれます。

協議離婚の話し合いの際には、激しい口論となるケースも少なくありません。


両親の激しい口論を目撃した子供には、メンタルヘルスに悪影響が出る傾向にあります。
例えば以下のような悪影響が出る可能性があります。

・自己肯定感の低下
・自身の生い立ちに対する引け目を感じる
・対人関係がうまくいかなくなる

例えば、上記のような悪影響に起因して、学校や社会に適応することが難しくなることも十分にあり得ます。

両親の離婚が、経済的貧困に繋がり、進学や就職にも影響が出る場合もあります。

また、自己肯定感の低下により、お子様自身の気持ちが落ち込みがちになり、生活全般に影響が出ることも考えられます。

お子様のメンタルヘルスがこのような状況に陥らないためにも、協議段階で弁護士に依頼して、離婚に際して決めるべきことを冷静に決めることが出来る環境に身を置くことが大切です。

また、双方の言い分を頭ごなしに否定せず、フラットな姿勢で聞き役として受け止めることが出来る弁護士に依頼することが望ましいでしょう。

協議離婚の段階で弁護士を介入させることにより、お子様に両親が争うシーンを見せる機会を少なくすることが出来ます。

アシロ取材班

面会交流の有無と養育費未払いには関係性があるのでしょうか。

青木聡教授

面会交流の有無と養育費の支払い有無は相関関係にあります。
協議離婚する場合も、面会交流の取り決めを適切に行い、公正証書等で取りまとめておくことが重要です。

協議離婚の段階で面会交流に関する取り決めを適切に行っている場合、離婚調停・審判を経て面会交流を取り決めたケースと比較した際に、取り決めた子供との面会交流が継続して行われる傾向にあることが分かっています。

協議離婚の段階で弁護士に依頼する場合には、面会交流も話題に入れて、相手と交渉を行っていただくことが重要です。

長期的な目線で見た場合に養育費未払いが生じるリスクを軽減することが出来ます。

養育費未払いの件数は日本以外では多くはない

アシロ取材班

養育費未払いで苦しむ相談者が当サイトでも後を絶ちません。
世界的に見て養育費未払いは頻繁に起こりうるような問題なのでしょうか。

青木聡教授

養育費未払いは、例えば米国において、運転免許がはく奪される程の重罪です。
そのため、米国では未払いとなるケースは日本と比較した際に、少ない傾向にあります。

次に、面会交流に対する米国と日本の世帯における考え方の違いについてご紹介します。

米国では共同親権の考えのもと、共に子育てを考える必要があるという責任感のある世帯が比較的多いです。

しかし、日本では単独親権の考えのもと、子供を自身の所有物として考える世帯も少なくないようです。

例えば、日本では、夫婦のいずれか一方が、配偶者の同意を得ることなく、突然子供と一緒に自宅を離れ、実家などに移動してしばらくそこで暮らす事象がありますよね。

これは米国では誘拐罪として刑事責任を問われるような事象です。

DV等の正当な事情があった場合には、日本の方が、安全な場所に即座に避難することが出来る点においては、メリットが大きいかもしれません。

一方で、養育費未払いが起こりやすく、適切な面会交流が設定されるケースが少ない傾向にある等の単独親権ならではのデメリットがあることも押さえておく必要があるでしょう。

子供の福祉を守るためにできること

アシロ取材班

日本で子供の福祉を守るために、離婚を検討する世帯が取り組むべきことはどのような点でしょうか。

青木聡教授

夫婦がお互いに離婚後の子供の養育についての責任を分かち合い、養育費と面会交流について具体的な取り決めを行ったうえで、公正証書等で残しておくことが大切だと思います。

養育費が支払われなくなると、子供の受けるべき教育を受けられなくなったり、最悪の場合、衣食住に必要な費用も捻出できなくなる可能性があります。

また、面会交流に関しては、離婚前の親子関係と変わらない程度の頻度や内容で面会交流できるよう取り決めを行うことが理想です。

親として意識すべきことは2つあります。


まずは父母の口論などの争いに子供を巻き込まないよう、配慮する必要があります。
次に、子供を1人の個人として見てあげることが大切です。
単独親権の考えのもと、子供を所有物であるかのように扱うことは、子供の生きづらさを生み出す原因となり得ます。

アシロ取材班

面会交流において、両親が子の福祉を守るために注意すべき点はありますか。

青木聡教授

面会交流においては、お互いに、面会交流の内容や普段の生活について、出来るだけ干渉や詮索を避けることが重要です。

例えば、同居親が別居親に面会交流で子供を預けた後、面会交流から子供が返ってきた際に、「お父さん(お母さん)とどこに行ったの?何をしたの?どんなことを聞かれたの?」等と面会交流の内容を過剰に詮索してしまうケースが少なくありません。

このような相手の面会交流の内容に対して過剰に詮索するような質問は、長期的には子供のメンタルヘルスに影響を与える要因にもなりかねません。

そのため、お互いに距離を取って、互いの面会交流の内容や生活に過剰に干渉や詮索をしないことを心がけましょう。

もし元夫(妻)との関係性が悪くないのであれば、離婚の話し合い時に面会交流のスケジュールに関しての情報共有についても話題にすることをお勧めします。

面会交流において、子供の授業参観や運動会等のイベント行事に関するスケジュールを共有しないことがトラブルの元になるケースが後を絶ちません。

このようなことになる前に、事前に子供のイベント行事の際の面会交流スケジュールは積極的に相手に伝えてあげることが、トラブル回避につながります。

子供との面会交流を通じて、別居親を安心させてあげることが、養育費未払いを防ぐことにも有効に機能するのです。

これまでに説明してきたことから総じて言えることは、離婚時の面会交流に関する具体的な取り決めが、その後の子供の福祉の確保に関する命運を左右するといっても過言ではないということです。

離婚時に、お互いが冷静に面会交流や養育費に関する取り決めを行うことが難しい場合は、適切な弁護士に相談することをお勧めします。

弁護士は、目先の慰謝料や財産分与だけでなく、子供の福祉を考慮した中長期的な提案が出来る弁護士を選ぶと良いでしょう。