1982年デビューの一世を風靡したVT250Fが、まさかの1997年まで生き存えるとは!

1982年6月にヤマハRZ250に対抗してデビューしたホンダVT250F。 2stに4stで立ち向かうための超高回転Vツインは、市販車の常識を逸脱した高精度エンジンで、信頼性など心配されたが基本設計の確かさで支持層はどんどん拡がり一世を風靡する次元の違うバイクとしての存在感があった。

それがフルカウルのINTEGRAやボディマウント・ハーフカウルの一体デザインを経て、ネイキッドのVY250Z、さらにインテグレートされたデザインの3代目、そしてツインスパーフレームのネイキッドSPADA、パイプフレームでトラディショナル方向へ戻ったハーフカウルのXELVIS(ゼルビス)と、一線を退く日が迫っている印象の推移をみせていた。

それが新たにパイプを3次元構成したトレリスフレーム、しかもピボットレスという同じ1997年に登場したVTR1000Fで採用した手法で再デビューを果たし、車名もシンプルに「VTR」のみを名乗ったのだ。

V4やVツインで10年以上の経験を積んだホンダは、エンジンの前後長が長いネガティブの払拭と、タイヤのロープロファイル・ワイド化で路面からのストレスも大きくなったことを併せ、要求される強度方向がステアリングヘッドと異なるスイングアームのピボットをメインフレームから分離させる手法を選んだ。

VTRではメインフレームはエンジンマウントとの連結のみ。 そこからプレートを介してスイングアーム・ピボットを設けている。

このためステップまわりのスリム化など、ナロウな車体構成を活かす新世代ライディング・フィールの模索を可能にしている。

さらにエンジン特性を中低速のレスポンスを向上させ、ミッションも6速から5速へと減じて実用性をアップするという、かつての超高回転高性能マシンでは考えられない大改革を断行したのだった。

F I(電子制御燃料噴射)化され扱いやすさが格段に向上

さらに2009年、排気ガス規制への対応もあってキャブレターを電子制御燃料噴射化し、これを機にデザインもスリム・コンパクトをアピールするフォルムへと変身を遂げた。

ホンダのPGM-FIも既に大幅な進化を果たしており、吸気のストレート化はもちろんキャブレターでは成し遂げられなかった回転域やスロットル開度の無数の組み合わせ対応で、どんな条件下でも変わらないレスポンスが得られるようになった。

長い蓄積で築き上げたクオリティと感性の素晴らしさを忘れたくない!

この2009年モデルからエンジンをブラックアウトして、5色のカラーリングをホイールも黒にしたSTYLE IとゴールドホイールのSTYLE IIの2仕様としたり、2014年7月からハーフカウル装着のVTR-Fを加えるなど、長年生産を継続した機種ならではの余裕を感じさせるラインナップを展開。

しかし反面、キャブレター仕様のスロットル・レスポンスを好む層もあって、その後の中古車市場でもニーズは分かれているようだ。 レスポンスの質ではなく、エンジンが応えてくれる感性にこだわるライダーがいて、30年以上も前に開発されていても他のバイクと比較する、そうした層をホンダが育んだといえるのだろう。

そして遂に2017年、その生産を終了することとなった。 この間に繰り広げられた進化を振り返ると、まさにスポーツバイクが様々なブームの渦中にあって、その都度バイクの価値観を変えてきたのがこのVT250系の歴史にも象徴されている。