『プロフェッショナルサラリーマン(プレジデント社、小学館文庫)』や『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」(日本経済新聞出版社)』等のベストセラー著者である俣野成敏さんに、ビジネスの視点で名作マンガを解説いただくコーナー(→)。今回は、三田紀房先生の『インベスターZ』です。

『インベスターZ』から学ぶ!【本日の一言】

こんにちは。俣野成敏です。

名作マンガは、ビジネス書に勝るとも劣らない、多くの示唆に富んでいます。ストーリーの面白さもさることながら、何気ないセリフの中にも、人生やビジネスについて深く考えさせられるものが少なくありません。そうした名作マンガの中から、私が特にオススメしたい奥深い一言をピックアップして解説します。

©三田紀房/コルク

【本日の一言】

「アメリカの過去の状況を調べれば、日本の未来が予見できる」

(『インベスターZ』第8巻credit.66より)


大人気マンガの『インベスターZ』より。創立130年の超進学校・道塾学園にトップで入学した主人公・財前孝史は、各学年の成績トップで構成される秘密の部活「投資部」に入部します。そこでは学校の資産3000億円を6名で運用し、年8%以上の利回りを上げることによって学費を無料にする、という極秘の任務が課されているのでした。

日米の差は、“先か後か”の違いに過ぎない

投資部の夏合宿も無事終わり、ホッとする部員たち。帰り道を歩いていると、その横に止まる一台のスポーツカーがありました。中に乗っていたのは、先ほど別れたばかりの投資部OBの1人、糸井でした。糸井は財前に向かって、「ベンチャー村に連れて行くから乗れ」と言います。

もとをたどれば、「日本のベンチャー企業を応援したい」と考えた財前が、道塾学園を創設・管理している藤田家の現当主に掛け合い、ベンチャー投資用の資金として15億円を託されたことに始まります。実際に出資をしようにも、情報の乏しいベンチャー投資は難しく、いまだに1件も投資できていませんでした。財前が苦戦していると見た藤田家の取り計らいによって、ベンチャー投資に詳しい糸井が夏合宿に呼ばれ、OBとして参加していたのでした。

車の中で、糸井は財前に「日本のベンチャー投資は、金額で言うと年間約1000億円。アメリカが約30兆円だから、およそ300分の1の規模だ」と説明します。それを聞いた財前が「日本は完全に負けていますね。やっぱりアメリカ人のほうが積極的だからでしょうか」とつぶやくと、「この違いはスタートの早さの問題だ」と言う糸井。「アメリカは何事も日本より先にスタートを切り、日本がその後を追う。日米は延々とこのレースを続けているのだ」と話すのでした。

終身雇用制度は、日本固有の制度ではない

『インベスターZ』では、「アメリカが日本の先を行っている」エピソードとして、M&A(企業合併・買収)を例に挙げています。かつて、ベンチャー企業に投資をした投資家がリターンを得る方法は、IPO(株式公開)のみでした。アメリカでM&Aが本格化したのは1980年代以降のことであり、これによって創業間もない会社にも価値が認められるようになった結果、起業とベンチャー投資が活発化した、というのです。

他にも、たとえば終身雇用制なども、日本独自の制度のように思われがちですが、もとは先進国で広く行われていた制度でした。世界的な経営学者であるP・F・ドラッカー博士の『プロフェッショナルの条件』の中にも、このようにあります。「1950年代から60年代にかけて制度化された日本企業の終身雇用も、欧米において19世紀後半に誕生し、20世紀前半にそのピークに達した近代企業のコンセプトの体現であって、その完成にすぎなかった」と。

自己責任が当たり前のアメリカでは、転職や起業も普通に行われ、セーフティネットも日本ほど充実していません。一方、日本で転職がタブーと見なされなくなったのは、ここ最近のことです。近年では401K(確定拠出年金)の導入が進むなど、この方面でも日本がアメリカを追従する形になっています。

©三田紀房/コルク

アメリカを見れば、ビジネスの盛衰がわかる

これらの事例を見れば、今回の「本日の一言」で選んだ「アメリカを見れば、日本の未来がわかる」という言葉には、非常に説得力があることが分かります。私が以前、立ち上げた社内ベンチャーも、実はこのアメリカと日本の間にある時間差を利用したものでした。

私が興したのは、時計を在庫処分するための店でした。いわゆるアウトレットショップです。当時、すでに日本でもアウトレットは流行の兆しを見せていましたが、ほとんどがアパレルばかりで、時計とアウトレットを結びつけて考えた人は、まだ少数でした。私は、アメリカのアウトレットモールが盛況なのを見て、買い物好きの日本人の間でも、必ず流行るだろうと確信していました。

それだけでなく、その後のアメリカでの動向や日本の市場規模、アウトレットが正規商品の市場を超えることはない、といった状況から、日本のアウトレット市場の成長は2014年までがピークであり、以後は成熟市場へと変化するだろう、といったことまでほぼ予測できました。

結局、人間の思いつくことに大きな差はない

アメリカが日本の先を行っている、という事実は、いろいろなことに応用が可能でしょう。自社が属している業界の動向はもちろんのこと、社会的な制度からライフスタイルに至るまで、自分のビジネスのヒントとなるような発見が多いのではないかと思います。

確かに、会社には自社だけの強みや社風、それぞれが歩んできた道があるでしょう。とは言え、ビジネス上で起きる現象には、意外なほど共通性があるのです。

マンガ『インベスターZ』に学ぶビジネス 第50回

俣野成敏(またの・なるとし)
30歳の時に遭遇したリストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。年商14億円の企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらに40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン(→)』および『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?(→)』のシリーズが、それぞれ12万部を超えるベストセラーとなる。近著では、日本経済新聞出版社からシリーズ2作品目となる『トップ1%の人だけが知っている「仮想通貨の真実」(→)』を上梓。著作累計は42万部。2012年に独立、フランチャイズ2業態5店舗のビジネスオーナーや投資活動の傍ら、『日本IFP協会公認マネースクール(IMS)』を共催。ビジネス誌の掲載実績多数。『ZUU online』『MONEY VOICE』『リクナビNEXTジャーナル』等のオンラインメディアにも寄稿。『まぐまぐ大賞(MONEY VOICE賞)』1位に2年連続で選出されている。一般社団法人日本IFP協会金融教育研究室顧問。

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