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ビジネスパーソンにとって「カラダは資本」と言いつつも、自分で健康管理をするのは大変だし面倒くさいですよね。ついつい牛丼やコンビニ弁当などで済ませてしまう人も多いのでは?そんな中、「社員食堂」を活用して、社員の健康を守る企業が最近増えてきているそうです。

数多くの社員食堂を取材してきたメディア「社食ドットコム」のスーパーバイザーである、帝京大学法学部の露木美幸准教授に、最新の社食事情について伺いました。

心身ともに健康になれる? 社食に力を入れる企業が増えるワケ

---社食ドットコムでは、様々な社員食堂の取り組みが紹介されていますね。こんなに社員食堂に力を入れている企業があると知って驚きました。

露木美幸(以下、露木) これは大きな時代の流れのひとつでもあるんですよ。私は今こうやって社員食堂に力を入れている企業を「第三世代(の社食企業)」と呼んでいます。

第一世代は、企業周辺に飲食店がないため、会社内に社食を作った時代です。必然的に、肉体労働をする人が満足するような、味が濃くて量が多い高カロリーなメニューになります。

次に、福利厚生として社員食堂を作り始めた第二世代。こちらはとにかく限られた予算で安く社員の方々に食事を提供することが目標のタイプです。また、場所も普段活用されていない社屋の地下の一室を使っているなどが特徴です。

---社食にも時代によって特徴があるんですね。社食といえば、第一世代や第二世代のような、安くてたくさん食べられる、というイメージでした。

露木 それが、第三世代になって大きく変化してきているんです。私たちが取材しているのは、まさにこの第三世代です。特徴としては、まずレストランや飲食店が多い東京や港区のど真ん中などに位置し、わざわざ社員食堂を作る必要がないほど地の利がいい企業が多いこと。そして社員食堂も、景色がいい場所などビルやテナント内でも良いところに作られています。そこでレストランに求められるような健康的で美味しい料理が提供されているのです。値段は安くない場合もある、というのも面白いところ。


---外に出ればレストランがたくさんあるのに、なぜ企業はわざわざ社員食堂に力を入れるのでしょうか?

露木 企業によって目的は変わるかもしれませんが、全体に共通しているのは「従業員に積極的に配慮することが、結果的に企業の繁栄にもつながる」という価値観かもしれませんね。

たとえば、昼食の時間が1時間あったとしても、実際にビルから出て、外のレストランに行って、となるとどうしても時間が少なくなります。お昼が「ただ食べるだけ」の時間になってしまって、気持ちを休めることができないんですね。でも、社員食堂があれば、そういった移動時間がカットできる上に、社員同士のコミュニケーションも高まります。仕事の悩みを相談することだってできるかもしれないし、違う部署の人と話す機会も増えるかもしれない。

ある企業の調査結果では、社員食堂を作り横のつながりが増えた結果、うつ病になる人の減少や離職率の低下といった成果がありました。直接的な因果関係は立証できていませんが、社員食堂を作った後にこういったデータが出たということは、相関関係がないとも言い切れません。

---なるほど、社員食堂はリラックスしたり交流する場になることで、精神衛生上もいい影響があるんですね。

露木 コミュニケーションが活発になることで、仕事上でのイノベーションも起きやすくなりますしね。また、第一・第二世代の社員食堂も、「健康経営」の時代になり、カロリーを抑えたメニューに変える企業も出てきています。第三世代では、給食会社とのコミュニケーションを密にしているところもありますね。健康的で美味しい、社員が喜ぶメニューを企業と給食会社が互いに提案し合いながら作っています。

---リラックスして健康的な食事ができるなら、わざわざ外に行く必要がなくなってきますね。

露木 そうですね。健康管理って自分でコントロールするのはとても大変だと思うんです。いまはこれだけ企業が熱心に健康的なメニューを作っているのですから、一食分だけでも任せられるのは大きなサポートになる思います。働くためには健康であることが必要なのですから。……これは、体を壊してみないとなかなか気づけないことではあるんですけどね。

企業の色によって千差万別! "インパクト社食"の事例

---露木先生が実際に行ってみて印象に残っている社員食堂はどこですか?

露木 いくつかありますが、特に健康面への配慮という点で驚いたのは、資生堂の社員食堂ですね。びっくりしたのが「社員食堂を食べていただけで10kg痩せた」という社員さんの話を聞いたとき。ここは「健美食」というメニューが有名で、書籍なども出版されています。私も実際に食べてみたのですが、ボリュームがあって、味もしっかりついている。「え、これで痩せるの?」と思ってしまうくらい。

カラクリを聞くと、「お野菜を煮て出すことでボリューム感・満足感を感じやすく」し、「出汁をしっかりとっているから、味が濃く感じる」ということなんですよね。ダイエットをしている人も毎日満足のいくランチを食べることができるから、健康管理がしやすくなる。これは、資生堂の「美しく生きていく」という企業ポリシーを感じられる点でも面白い社食でした。

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---確かにダイエットで一番面倒なのって、カロリー計算なんですよね。それを社員食堂が管理してくれる上に、ストレスなくダイエットが実現できるのはすごいです!

露木 他にも、印象に残っているのが、TOTOの社員食堂ですね。TOTOは、経済産業省と東京証券取引所が共同で従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる企業を「健康経営銘柄」として選定する「健康経営銘柄」に3年連続で選ばれるなど、健康経営の代表的な企業です。なので、社員食堂のメニューが健康的であるというのは、まず大前提にあるんです。さらに面白かったのは、社員食堂の壁紙に自社製品を使っているというところ。

---自社製品、ですか。

露木 TOTOはトイレで有名ですが、トイレだけではなくトイレ周辺の商品も作っているんですね。その中に、消臭機能のある壁紙があるんです。それが使われているため、社員食堂に入ってみて全くニオイがしないことに驚きました。社員食堂は、油物などを扱っているとニオイが体にしみついてしまったり、女性だとそれが髪についてしまって嫌な気分になることも多いですよね。でも、TOTOの社員食堂内はそういった嫌なニオイがまったくしないので、とても快適な空間になっていたんです。おまけに、社員は自社製品にこれだけの力があると実感できるわけですから、仕事への自信にもつながっていきます。気分もよくなり、企業への誇りももてる。好循環な環境でしたね。

---健康だけではなく、仕事へのモチベーションにもつながる社員食堂なんですね。企業によって色が違ってくるのが面白いです。

社員じゃなくても利用OK!オススメ社食3選

---最近の社員食堂が、ビジネスマンにとって健康でいるためにぴったりの環境なのはわかりました。ただ、全ての企業が社員食堂を充実できるわけではないですよね。

露木 そうですね。実際、社員食堂がない中小企業の方々からも「うちに社員食堂があったらな」という声が届きます。でも、社員じゃなくても利用ができる社員食堂は意外とあるんですよ。自分の会社から近いところにあれば、お昼の選択肢に入れてみてもいいかもしれません。他社の社員とのコミュニケーションも生まれるかもしれないですからね。

【露木先生オススメ!社員じゃなくても使える社食3選】

1.Yahoo! JAPANのコワーキングスペース「LODGE」

露木 LODGEは他社の社員との積極的なコミュニケーションを推奨しているところが特徴です。Yahoo! JAPANの社員もたくさんいますし、開放的な空間で日替わりのメニューを食べることができます。

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所在地
東京都千代田区紀尾井町1-3 17F

営業時間
平日 9:00 - 21:00
土日 9:00 - 21:00

アクセス
東京メトロ永田町駅 9a出口直結
東京メトロ赤坂見附駅より 徒歩1分


2.農林水産省の食堂「手しごとや 咲くら」

露木 農林水産省らしい、“地産地消”を目指す食堂です。旬の食材を使った、美味しくて健康的な食事を楽しむことができます。

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所在地
東京都千代田区霞が関1-2-1

営業時間
11:30 - 14:30
※定休日:土曜・日曜・祝日及び閉庁日(12月29日〜1月3日)

アクセス
最寄駅は「霞が関」(丸ノ内線、日比谷線、千代田線)

※入館は以下の玄関で受付手続きが必要
本館正面玄関(地下鉄出口A7付近) / 本館南口玄関(地下鉄出口A10付近) / 本館北口玄関(地下鉄出口A5付近) / 別館(地下鉄出口C1付近) / 北別館(地下鉄出口B3a付近)


3.中之島フェスティバルタワー「フェスティバルキッチン」

露木 大阪市の中之島エリアにある中之島フェスティバルタワーの12階にある職域食堂で、ビルで働くビジネスマンだけでなく一般のひとも訪れる人気の食堂となっています。

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所在地
大阪市北区中之島2-3-18 中之島フェスティバルタワー

営業時間
11:00 - 22:00(ランチ営業/年中無休)

アクセス
京阪中之島線「渡辺橋」駅下車12番出口直結
地下鉄四つ橋線「肥後橋」駅下車4番出口直結
地下鉄御堂筋線・京阪本線「淀屋橋」駅下車7番出口より徒歩5分


今は「安くて便利」な社食より、「健康的で美味しい」社食がトレンドなのだそう。栄養バランスはもちろんのこと、社員同士のコミュニケーションによる仕事のストレス発散や気分転換など、精神衛生上もいい効果があれば、午後の仕事もより元気に頑張れそうですね。

上記で紹介している中之島フェスティバルタワー「フェスティバルキッチン」以外にも、ビル内にあるオフィスが開放している共同の食堂"職域食堂"もあるので、テナントで開放しているところを探してみるのもいいかもしれません。

取材・文:園田菜々
カメラマン:本手保行
監修:社食ドットコムスーパーバイザー 露木美幸