コミュニケーション総合研究所代表理事の松橋良紀さん。そんな松橋さんに「コミュニケーションの極意」についてお話しいただくこのコーナー。第25回目は「ダメ出しばかりする上司との付き合い方」についてです。

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私が会社員だった30代のころに、ダメ出しをしないと気が済まない上司がいました。

「社内の売上を上げるためにこんな案を考えてきました!どうですか?」
「どれどれ、うーん・・・」
そんな沈黙のあと、たった一言。
「なんか違うんだよな」
「そうですか・・・では、どこをどう、直せばいいですか?」
「それは自分で考えろ」……。


当時の私は、途方にくれることもありました。

皆さんも、一度は経験したことがあるかもしれませんが、ダメなところを細かく指摘するわけではなく、「なんか違うんだよな」など抽象的にダメ出しする人がいます。
考え抜いて提案しても「なんとなく違うからやり直し」と言われ、どこをどう直すのか、時には困ることもありますよね。
そんなときはどうしたらいいのか、傾向と対策をご紹介します。

上司のタイプを見極める

心理学者ミラーの提唱した概念で、人が情報を知覚する際の情報の「まとまり」「かたまり」をさす“チャンク”という考え方をもとに上司のタイプをご説明します。
人の物事の捉え方には、「スモールチャンク型」と「ビッグチャンク型」、両方が組み合わさった「混合型」の3タイプがあります。

(1)「木ばかり見て森が見えていないタイプ」(スモールチャンク型)
詳細を突き詰めるのが「スモールチャンク型」です。
このタイプは、他の人が気づかないような物事の詳細な面が見えます。
大雑把なタイプには、あら捜しをしているようにしか思えないでしょうが、細かい改善点を発見できるのが大きな才能です。
ただし、焦点を絞りすぎるために、全体のことが見えなくなってしまう傾向があり、「木を見て森を見ず」となりがちです。

(2)「森ばかり見て木が見えないタイプ」(ビッグチャンク型)
物事を全体的に大きく捉えるのが「ビッグチャンク型」です。
全体を見るのが得意で、抽象的な言葉が多いです。
方向性などの大まかなことを考えるのは得意ですが、具体性に欠ける傾向にあります。

(3)「森を見て、木も見るタイプ」(混合型)
「スモールチャンク型」と「ビッグチャンク型」の両方をあわせ持つタイプを、「混合型」といいます。
全体的な部分を見ることができて、細かなことにも目が行き届く、まさに目指すべきタイプです。混合型の人は、多角的な視点を持っており、とても能力が高いです。
しかし、この混合型が上司になった場合、「森を見て、木も見る」という両方の能力を求められるので、部下にも結果として高いレベルが求められることになります。

上司が理由も言わずに提案を突き返す理由とは?

上司のチャンクタイプを説明してきましたが、どういう場合に抽象的なダメ出しをされてしまうのでしょうか。

「上司が理由も言わずに提案を突き返してきた」こういう場合は、部下が全体を見ていない「スモールチャンク型」か、詳細がすっかり抜け落ちている「ビッグチャンク型」のどちらかの可能性が高いです。
部下が「スモールチャンク型」なら、「ビッグチャンク型」の上司にとってはまるで全体が見えていないように感じてしまいます。
部下が「ビッグチャンク型」だと、「スモールチャンク型」の上司にとっては、ザルのように詳細が抜け落ちているように感じます。
つまり一方の視点が欠けていることで、上司は部下のアイディアに対し、「まだ検討する段階にもなっていない」と感じてしまう。その結果、納得することがないため、「理由も言わずに提案を突き返す」ことになるのです。
それは、上司と部下の「チャンク型」(「ビッグチャンク型」「スモールチャンク型」)の組み合わせが、同型より異なるほうが、提案にズレを感じやすくなりますが、もし同型であっても程度の違いから、同じように抽象的なダメ出しになってしまう可能性はあるでしょう。
また、「混合型」の上司の場合には、どちらか一つの視点が欠けている時点で、提案としては不完全であるという認識を強く持ってしてしまうので、こうした傾向があらわれやすいといえます。

対応策とは?

根本的な解決策は、部下が混合型の視点を持つことです。しかし、実際に混合型の視点を持つのは、非常に高度なことです。時間をかけて、両方の視点を持つことを目指しながら、まずは、足りない視点を補うために「たたき台」の段階で意見をもらうようにしましょう。
「完璧なものをつくりましたので、見てください」というスタンスは失敗の元です。意見をお聞きしたいというスタンスで相談し、細かなステップをたくさん踏む中で、相手の期待しているレベルやイメージとのすり合わせをしましょう。

ダメ出ししてくれるのはありがたいこと

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ここまで、上司の「ダメ出し」への対応についてお話しさせていただきましたが、「ダメ出し」は、決して「否定すること」と同義ではありません。

人に「ダメ出し」をすることは、正直面倒なことです。言わずに穏便に過ごせるのなら、それに越したことはありません。しかし、それでも「ダメ出し」をするのは、「成長してほしい」という期待があるからです。見込みがないと思ったら、人は、そこまで労力を使いません。

あなたも、友人に対して厳しくアドバイスをしたことがあるかもしれません。そこには、相手に対しての“想いやり”があったはずです。今、私自身の経験に基づき強く思うことは、ダメ出ししてくれる人は、私に嫌われるかもしれないのを覚悟で、耳の痛いことをおっしゃってくれている「ありがたい存在」だということです。

先ほどの上司のように、理由をいわずにダメ出しをしてくる上司も含めて、ダメ出しされることは、自分を磨く貴重なチャンスです。
年齢を重ねると「ダメ出し」される機会も減っていきます。
もし、「ダメ出しばかりされる」「企画が全然通らない」と思ったら、“言われている内が花”だと意識を変えましょう。
ダメ出しを力に変えて、ステージを駆け上がっていただきたいと思います。

松橋良紀(まつはし・よしのり)

コミュニケーション総合研究所代表理事/一般社団法人日本聴き方協会代表理事/対人関係が激変するコミュニケーション改善の専門家/コミュニケーション本を約20冊の執筆家

1964年生青森市出身、青森東高校卒。ギタリストを目指して高校卒業後に上京して営業職に就くが、3年以上も売れずに借金まみれになりクビ寸前になる。30才で心理学を学ぶと、たった1ヶ月で全国430人中1位の成績に。営業16年間で、約1万件を超える対面営業と多くの社員研修を経験する。2007年にコミュニケーション総合研究所を設立。参加者が、すぐに成果が出るという口コミが広がり出版の機会を得る。NHKで特集されたり、雑誌の取材なども多く、マスコミでも多数紹介される。

約20冊で累計30万部を超えるベストセラー作家としても活躍。「コミュニケーションで悩む人をゼロにする!」を合言葉に奮闘中。

著書

『「売れる営業」がやっていること 「売れない営業」がやらかしていること』(大和書房)

「あたりまえだけどなかなかできない聞き方のルール」(明日香出版社)

「相手がべらべらしゃべりだす!『聞き方会話術』」(ダイヤモンド社)

「人見知りのための沈黙営業術」(KADOKAWA)

「何を話したらいいのかわからない人のための雑談のルール」(KAODOKAWA)

「話し方で成功する人と失敗する人の習慣」(明日香出版社)

公式サイト http://nlp-oneness.com