『プロフェッショナルサラリーマン(プレジデント社、小学館文庫)』や『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」(日本経済新聞出版社)』等のベストセラー著者である俣野成敏さんに、ビジネスの視点で名作マンガを解説いただくコーナー。今回は、三田紀房先生の『インベスターZ』の第34回目です。

『インベスターZ』から学ぶ!【本日の一言】

こんにちは。俣野成敏です。

名作マンガは、ビジネス書に勝るとも劣らない、多くの示唆に富んでいます。ストーリーの面白さもさることながら、何気ないセリフの中にも、人生やビジネスについて深く考えさせられるものが少なくありません。そうした名作マンガの中から、私が特にオススメしたい一言をピックアップして解説することによって、その深い意味を味わっていただけたら幸いです。

【本日の一言】

「だからちょっと、バカなフリをしたんです」

(『インベスターZ』第6巻credit.45より)


大人気マンガの『インベスターZ』より。創立130年の超進学校・道塾学園にトップで入学した主人公・財前孝史は、各学年の成績トップで構成される秘密の部活「投資部」に入部します。そこでは学校の資産3000億円を6名で運用し、年8%以上の利回りを上げることによって学費を無料にする、という極秘の任務が課されているのでした。

「突然、大金が手に入ったら?」

ある日、財前が家に帰ると、母と見知らぬ中年男性が話をしていました。聞くと、その人は父とは母親違いの兄(伯父)だというのです。それまで、父が「母一人子一人で育った」と聞かされていた財前は驚きます。伯父は財前の祖父が有名な大学教授で、異国で客死したことを伝え、祖父の残した株券3000万円分を父と財前に相続させるためにやってきたのでした。

なぜか、財前の父は昔から「お金」という言葉に敏感なところがあり、ことあるごとに「自分は母から働いて得た収入以外の金銭を保有してはならないと教えられた」と口にしていました。だから兄から父の遺産の話を聞くと、「自分たちは受け取れない」と頑なに拒否します。ところが後日、父は財前に「やっぱり相続をしようと思う。相続後に、そのお金を大学に寄付するつもりだ」と話します。

数日後、伯父がやってきて、父と財前は祖父の遺産を相続しました。手続きが終わった後に、父が株を売ったお金を大学に寄付したいと申し出ると、伯父が「今は良くない。相場が下げ基調だから」と言います。「だったらひとまず別銘柄へ買い替えては?」と、急に株式投資の話題で盛り上がる2人。相続をきっかけに、2人が投資について勉強していたことを知って驚く財前。しかし所詮はにわか知識にすぎず、財前の目には、2人が失敗することが目に見えているのでした。

議論をしても、相手を説得することはできない

中学1年生にして、すでに投資部で100億円ものお金を運用している財前。その財前からしてみれば、自分の父も伯父も素人同然です。大人たちのプライドを傷つけずに投資を思いとどまらせようと、財前が考えた方法とは「自分がバカなフリをする」というものでした。大金を手に舞い上がったフリをして、「働かずに投資をして暮らしたい」と告げると、焦った父は即刻、遺産を処分してしまったのです。

「自分は何も知らないフリをして、その場を上手く収める」という方法は、世界的な大ベストセラー『人を動かす』にも書かれている説得術の王道です。著者のデール・カーネギー氏は、同書の中で「議論に勝つ唯一の方法は、議論をしないことだ」と述べています。

本来、議論をすることの目的は別にあるはずです。たとえば「間違っていることに気づいてもらいたい」「同じミスをしないで欲しい」など。なのについ、自分の勝ち負けにこだわってしまうのが私たちではないでしょうか。それで相手を打ち負かしたとしても、結局、欲しい結果は手に入らず、わだかまりだけが残る、といったことになりがちです。

主張が正しくても、信頼関係が壊れてしまえば意味はない

「仕事で大事なのは人間関係」と言いますが、言い合いが元で気まずい関係になってしまうのはよくあることです。事例をお話ししますと、元スターバックスコーヒージャパンCEOの岩田松雄氏は若いころ、ある会議で先輩と衝突してしまい、議論になってしまったことがあるそうです。

岩田氏は、「周りのみんなも、自分のほうが正しいとわかっているはずだ」と思っていました。ところが、当時の上司は先輩社員の意見を採り上げました。岩田氏はこのことを長い間、根に持っていたそうです。

ところが年月が経ち、やがて自分も人の上に立つようになって、ようやくその上司のことが理解できるようになった、と言います。岩田氏は著書の中で当時のことを振り返り、「あの時もし、先輩を守っていなければ、おそらくチーム全体の信頼関係が崩れていただろう」というようなことを述べています。

自分に関係している人は、「すべて自分の人脈」

今は年下の上司が珍しくはなくなり、日本でも「年齢に関係なく、正しい意見を採用すべきだ」という世の中になりつつあります。とはいえ、他人から「自分を認めて欲しい」と思わない人などいないでしょう。

私がサラリーマン時代によく使っていたのは、「教えてください」「いただいたアドバイスがうまくいきました」「勉強になりました」といった言葉です。おべっかを言う必要はありませんが、こうした言葉を添えるだけで、相手は喜び、こちらの期待した以上の情報を教えてくれるものです。「職場の上司や同僚も自分の人脈だ」と考えるようにすれば、相手の欠点が見えてもそこまで気にならなくなるのではないでしょうか。

俣野成敏(またの・なるとし)

大学卒業後、シチズン時計(株)入社。リストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。31歳でアウトレット流通を社内起業。年商14億円企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらに40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン』(プレジデント社)と『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?』(クロスメディア・パブリッシング)のシリーズが共に12万部を超えるベストセラーに。近著では、日本経済新聞出版社からシリーズ2作品目となる『トップ1%の人だけが知っている「仮想通貨の真実」』を上梓。著作累計は40万部。2012年に独立後は、ビジネスオーナーや投資家としての活動の傍ら、私塾『プロ研』を創設。マネースクール等を主宰する。メディア掲載実績多数。『ZUU online』『MONEY VOICE』『リクナビNEXTジャーナル』等のオンラインメディアにも寄稿している。『まぐまぐ大賞2016』で1位(MONEY VOICE賞)を受賞。一般社団法人日本IFP協会金融教育顧問。

俣野成敏 公式サイト


【関連記事】
→ 俣野 成敏氏の記事一覧