日本経済が力を失って久しい。経済成長率は低迷し、少子化に歯止めがかからず、先進諸国の中で賃金水準が断トツに低いという状態が続いている。

 この状態を打破するためには、労働生産性の向上が必要である。日本は中小企業とそこで働く従業員の割合が高く、中小企業は平均的に生産性が低いため、日本全体の労働生産性の水準を引き下げている、という指摘がある。この指摘に全面的に賛成はできないが、労働生産性とはつまるところ、成果を労働量で除した数値であり、最新機器などを導入し、投入労働量を減少させるといった余力に乏しい中小企業も多いと思われることから、あながち的外れな指摘だとも思わない。

 他にも、労働生産性を向上させる方法として、従業員のスキルアップ、取引条件の見直し、IT技術の活用などが考えられるが、いずれも中小企業にとって、容易な取組みであるとはいえないであろう。

 国なり行政なりは、労働生産性の向上こそが日本経済浮上の鍵であることに遥か前から気付いていた。ようやく、長時間労働抑制や同一労働同一賃金といった具体的施策をもってそのことに取り組み始めたと感じている。副業・兼業の推進、ジョブ型雇用の推進、最低賃金の引上げ政策等々も、指向しているものは同じであろう。

 注意する必要があるのは、国全体として労働生産性を向上させようとすれば、それについて来られない中小企業の淘汰が進む可能性があるということだ。

 我われ社会保険労務士の顧客の多くは中小企業である。弊法人においてもその事情は変わらない。顧客が淘汰される方に入ってしまわないよう尽力しなければならない。恐らく、適切な助言を行うために、ある程度は、下請法、会社法、民法などの関連法律の知識も必要となってくるであろう。コンサルタントとしての士業の情報収集に区分や制限はないということを肝に銘じたい。

 とはいうものの、今後の日本全体でみた場合、中小企業の淘汰は避けられないと考える。

 有能な人材を抱え、高い技術力を有する中小企業が「廃業」してしまうことは日本全体にとっても大きな損失である。何とか、「合併」や「事業譲渡」につなげ、技術や人材が承継されるような仕組みは作れないものか。行政ベースでそのような仕組みがあることは承知している。そうではなく、社会保険労務士が、必要であれば隣接士業を巻き込んで、そのような仕組みを作れないものかと夢想している。

社会保険労務士法人アドバンス富山 代表社員 岩峅 勲【富山】