平成23年3月11日の東日本大震災発生から約4週間後、当時損害保険業務に従事していた私は、栃木県宇都宮市の保険会社の地震対策室へ赴き、地震による住宅建物、家財道具の損害調査を始めた。

 タクシーを使って午前2件、午後2件の損害調査を行い、支払いに回す作業だったが、5月末までに一人で3億円の支払いを行ったと思う。20人近い調査員が従事していたので、すごい金額が被災者の再建を支えたと思う。

 地震対策室での約45日間に、2つのことを得ることができた。

 1つは、同年9月に開業する社労士事務所のメイン業務をみつけたこと。2つ目は、念願であった栗田美術館へ5回も行けたこと。

 足利市にある栗田美術館は、肥前鍋島焼のコレクションでは右に出るものはなく、鍋島焼を有する世界一の美術館である。ダイアナ妃も日本滞在時に訪問されたことで知られている。

 地震被災調査を終えた日の宿泊先のホテルでは、インターネットにおいて、障害年金請求支援を主業務とする事務所の存在を知った。そのため、同年9月には、①障害年金請求支援、②労災事故への対応支援(長く損保に従事した経験を生かすものとして)、③助成金請求支援  を主業務として登録開業。今年で10年になった。

 障害年金請求支援では、大学生や社会人になって初めて、社会との適応力に苦しむ若人が多い現実を知った。当初は、会社に入るための支援や、そこに定着するための支援が求められると思っていた。だが今は、1つのことに時間を掛け、腕に技をしみこませ、職人・匠をめざす人生を歩むことが、遅れた年月を取り戻せる道、と信じるようになった。

 自分は今、身の程知らずの野心的な望みを持っている。
栗田美術館の鍋島焼コレクションの足元にも及ばないが、同じ肥前である現在の佐賀県嬉野市塩田町で幕末に誕生した「志田焼染付大皿」の魅力を発信する陶磁館を、地元の古民家を使って設立することだ。

 昨年は、コロナ禍により助成金支援、また労災事故対応への支援も行うことができた。この分野では今後も一層経験を重ね知識を増やし、補助金申請支援、労災被災者支援を充実させていきたいと思っている。

 また、これから歩む道を職人や匠への道に求める若人には、就労継続支援事業A型事業所を立ち上げ、「志田焼の魅力を伝える陶磁館」と「平尾社労士事務所」がかかわれる道をみつけようと思っている。

平尾社会保険労務士事務所 平尾 豪【京都】