私は、おそらく日本で唯一の「元コンビニ経営者の社労士」であり、その点から異色の社労士といえる。会社経営と社労士事業を同時に進行させてきたため、経営者目線と人事担当者マインドを備えている。

 社労士をしながら、コンビニ本部の影響力が大きい契約条件の下で、ファミリーマート6店舗(スタッフ100人)を20年間経営してきた。延べ1000人超を採用して自社で助成金を活用し、そのノウハウを顧問先に提供する実践提案型の社労士事務所と、コンビニ経営、人事担当者の3つの立場を経験してきた。

 2019年2月にはコンビニ経営を卒業し、専業で社労士事業を開始した。長くコンビニ経営を続けてこられたのは、守るべき従業員たちがいてくれたからかもしれない。だから、誰よりも会社と従業員を守る術を熟知している社労士といえるだろう。

 さて、今、中小企業に迫りくる最大の経営リスクは、今年4月から中小企業にも適用される「ハラスメント防止措置の義務化」である。

 中小企業の社長には、今までトップダウンで会社を動かし、成長させてきた自負がある。このような場合、高い確率でハラスメントのリスクがあると断言できる。社長や上司が、会社や部下のために厳しく処するという想いは理解できる。しかし、ハラスメントは受ける側の感じ方次第で成立してしまうのである。

 そのため、無意識にパワハラを起こしている可能性や、ハラスメントが常態化している社風になっている恐れがある、ということを認識しなければならない。

 たとえば、社員が職場に定着せず、退職理由の中に「職場環境」が入っている場合は赤信号だ。担当者の責任にもなる。そのような状況を放置した場合の最悪の例としては、暁産業ほか事件(福井地判平26.11.28)がある。高卒の新入社員が上司のパワハラによって自殺に至った痛ましい事件である。裁判では「上司が人格否定を繰り返した」とし、合計約7200万円の支払い命令が出た。

 過去の成功体験に基づいた思い込みが、社員や部下を無意識に追い込んでしまうのである。だから、ハラスメントは予防が最重要だ。パワハラが起こってからの対処では限界がある。

 私は今、「パワハラ予防カード」の活用など、いかにポジティブかつ効果的にパワハラ予防意識を組織に植え付けるか、についての研究に注力している。その結果、かなり効果のある方法をみつけたところだ。企業の担当者や他の社労士の方に伝えていきたい。

あけぼのフェニックス社会保険労務士事務所 齋藤 晃人【東京】