トラック運転者の労働時間等改善基準告示の見直しを検討している労働政策審議会作業部会で、使用者側が総拘束時間の引下げや休息期間の拡大に難色を示している。荷主都合により恒常的な荷待ちが発生していることが理由だ。

 先月下旬の部会では、時間外・休日労働が月100時間未満に収まるように拘束時間の延長限度を現行の月320時間から294時間まで引き下げるのであれば、「義務」ではなく、努力目標として設定するよう訴えた。過重労働による脳・心臓疾患事案で道路貨物運送業の占める割合が高まるなか、健康確保につながる基準の設定を期待したい。

 厚生労働省の2021年度脳・心臓疾患労災支給決定状況によると、同業種は全業種中最多の56件。全体に占める割合は32.5%で、20年度比で4ポイント、09年度比で10ポイント以上増えている。増加傾向に歯止めをかけるために、24年4月からの時間外労働の上限規制適用に合わせ、拘束時間などの規制を強化することに異論を挟む余地は少ないだろう。

 現行基準は、月の拘束時間について「原則293時間以内、労使協定締結時には年間3516時間を超えない範囲内で、年間6カ月に限り月320時間まで延長可能」とする。改正案として労働者側は「原則275時間以内、年3300時間の範囲内で月294時間まで」と主張、使用者側は「原則284時間以内、年3408時間の範囲内で月320時間まで」を求めている。

 使用者側は、コロナ禍で荷主への交渉力が低下してきたと指摘。「原油価格上昇に伴う燃料費値上げも拒否されており、拘束時間削減に向けた環境改善に応じてもらえるか疑問」として、仮に294時間に設定する際は、努力目標にするよう訴えている。課題解決に向けて厚労省は、労働基準監督署が個別の荷主企業に対し、配慮要請を展開する方針を示している。

 過労死発生状況を踏まえれば、改善基準は上限規制の内容を念頭に置いた内容に見直すべきだ。ただ、まずは荷主企業の意識の転換が欠かせないため、施行予定の24年4月までに、労基署による積極的な働きかけの実施が望まれる。