厚生労働省は来年度、産業雇用安定助成金の新コースとして、スキルアップ支援コース(仮称)を導入する(関連記事=人への投資 出向通じた能力向上促進 助成金に新コース 厚労省・令和5年度)。新型コロナによる経営への悪影響を受けていない場合であっても、企業が労働者の能力向上を目的に他社への在籍出向を行う場合に、出向労働者の賃金の一部を助成していく。

 自社では習得できない技術・知識の獲得を促すのが狙いで、対象者や出向先での業務などに関する綿密な計画を立てて出向を行えば、大きな成果が期待できるだろう。一方で、業務成績が芳しくない“余剰人員”を調整する目的で出向を行う企業に対し、新コースが適用されるようなことはあってはならない。厳格な支給要件の設定と運用に細心の注意を払うべきだ。

 もともと同助成金は、コロナ禍で事業活動の一時的な縮小を余儀なくされる事業主の雇用維持を支援することなどを目的に、昨年2月に創設された。運輸業や宿泊・飲食サービス業などを中心に活用され、創設からの1年間で、出向実施計画届の対象となった出向労働者数は1万人、出向元は1000社を超える。

 助成金の活用企業が実感している在籍型出向のメリットをみると、出向者の労働意欲の維持・向上や本人のキャリア形成・能力開発効果を挙げる割合がともに6割に上る。労働者では4割が雇用維持による安心感を挙げ、6割が能力開発効果を指摘している。

 新コースの導入は、多くの出向元や労働者が挙げている能力開発効果に着目したものといえる。厚労省では、活用シーンとして、DXをめざす企業がIT企業への出向によって従業員にデジタル技術を習得させるケースなどを想定している。

 適用に当たっては、能力開発に関する計画の提出を求める予定としているが、計画に盛り込む内容などの詳細はまだ決まっていない。

 政府が掲げる「人への投資」の一環として導入する新コースが目的を達成するためには、計画の適切な立案と、それに沿った能力開発が実現できたかどうかのチェックが不可欠だ。厚労省には、厳格な制度設計と、出向実績を確認できる態勢整備を求めたい。