社労士として開業する前は、運送会社に勤務していた。学生時代のアルバイトとして赤帽のドライバーから始まり、宅配便、タクシー、大型トラックなど、ドライバーとしてハンドルを握り、それらを経験した後、配車担当、運行管理者、整備管理者として長く運送業界に身を置いていた。社労士として開業した現在も、顧問先の多くを運送会社が占めている。

 業種を問わず中小企業では、2023年4月1日から月60時間超の時間外割増賃金率として50%が適用され、自動車運転業務については24年4月1日から時間外労働時間の上限規制が適用される。事業を継続する上で避けて通れない非常に大きな波が押し迫っている。

 また、これら2つの規制強化の影に隠れているが、未払賃金請求権の延長も無視できない。20年4月1日以降、賃金請求権の消滅期間はそれまでの2年から5年(当分の間は3年)に延長されている。

 すでに2年を超える未払残業代の請求が可能となっており、改正から3年が経過する23年4月以降は、退職したドライバーから弁護士を通じて3年分の未払賃金を請求されるケースが多くなると予想される。

 運送業界には他業種には適用されていない法律として、物流二法(貨物自動車運送事業法、貨物運送取扱事業法)の遵守義務がある。この二法を遵守するために導入が必要なものなどもあり、コストの負担は大きい。

 運送業界は中小企業の集合体である。働き方改革によって、経営基盤が弱い会社は淘汰されるリスクがある。

 また、ブラックな企業も淘汰されることだろう。運送会社の過半数は赤字経営となっており、その背景に構造的な課題があるのは否めない。

 23年4月と24年4月に適用される2つの規制は荒療治とも思える施策であり、これから来る大波を乗り越えるための行動が必要だ。

 では、「具体的に社労士として何ができるのか」を考えた場合、お手伝いできることは多い。ただし、その内容が一般的な社労士業務の範囲内に留まっていては、顧問先がこの大波を乗り越えるのは困難だと思っている。

 小さな運送会社でも取り組めるDX、原価計算を用いた荷主との運賃交渉、人手不足解消に向けた提案、働き方に対する労働者の意識改革、SDGsへの取組み、そして何より、淘汰されずに会社を継続的に発展させるためのシステム作りに向け、微力ながら一社労士として尽力していく所存である。

Officeうりずん社会保険労務士事務所 代表 前西原 清城【神奈川】