人手不足の解消に60歳以上の人材活用を図る。60歳を過ぎても給与の下がらない仕組づくりを支援

 令和2年に雇用保険法が改正され令和7年4月以降に雇用継続給付の支給率が賃金の原則15%から10%に縮小されることとなりました。各種審議会開催時には将来的に高年齢雇用継続給付の廃止も視野に入れて議論されています。

 激変緩和措置として65歳超雇用推進助成金の活用等、定年延長に関する支援策を強化するとともに併せて、高年齢労働者処遇改善促進助成金が令和3年度に創設されました。

 高年齢労働者処遇改善促進助成金は60歳から64歳までの高年齢労働者の処遇改善に向けて就業規則等の定めるところにより高年齢労働者に適用される賃金規定等の増額改定に取り組む事業主が本助成金の対象となります。これは令和7年(2025年)年4月から高年齢雇用継続給付が削減されることもあり、その前に賃金の増額改定を行う事業主を支援しようとする助成金です。

令和4年度までの概要、支給額

令和5年度改正概要

 助成率は下がりますが、高年齢雇用継続給付の受給額が95%以上削減することの要件が緩和される予定です。その分使い易くなることが考えられます。下記表の現行が令和4年度まで、改正後が令和5年度の内容になります。

受給のポイント

① 実際に高年齢雇用継続給付を削減した金額が助成額の根拠となります。よって、各支給対象期にかかる高年齢雇用継続給付の金額を把握する作業が必要になります。
② 高年齢雇用継続給付の総額の把握等、事務作業が多くなることが考えられます。
③ 会社からの人件費として費用支出は増えるので、受給は慎重に検討することとなります。

お勧めポイント

 資料によると令和4年度まで当助成金の申請件数は極めて少ないのが実情です。また、この助成金の支給は60歳から65歳までの人件費の増大を招くこともあり、受給は慎重に検討する必要がある助成金となります。ただし、65歳超雇用推進助成金との併給調整は無いため、今後の高齢者雇用の推進を考えるのであれば、65歳超雇用推進助成金の各種コースの併給を見据えて支給申請を検討することとなります。

相談先

各労働局、ハローワーク

筆者:岡 佳伸(特定社会保険労務士 社会保険労務士法人岡佳伸事務所代表)

大手人材派遣会社などで人事労務を担当した後に、労働局職員(ハローワーク勤務・厚生労働事務官)としてキャリア支援や雇用保険給付業務に携わる。現在は開業社会保険労務士として活躍。
日経新聞、女性セブン等に取材記事掲載及びNHKあさイチ出演(2020年12月21日)、キャリアコンサルタント

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