私は自称「社外人事部」。人事部は従業員の労務管理はもとより、就業規則など会社のルール作りをする。労務管理やルール作りに大切なのは「平等」「バランス」と心掛けて、サラリーマン人事部時代から23年間、考えを曲げず、強い信念を持って事務所運営・社労士業務に当たっている。

 大手メーカーの人事部にいたころ、私の権限で何かできると思われたのか、当時仲良くしていた方から「○○してもらえないか」といった依頼があった。いくら仲が良くても便宜は図れないため、やんわり断ったが、以後その方と挨拶を交わせなくなった。人事部社員として会社の制度は平等に運用すべきという考え方は、時には人を傷付けることもあるのだと気付いた。だが、これが人事部の使命であり、「平等」「バランス」感覚を持ち、自分を強く持っていないとできない仕事だと痛感した。

 日頃、クライアントと接していると、会社の人間関係がギクシャクするくらいなら従業員のワガママを多少飲み込むか…と、半ばあきらめている経営者がおられるようだ。パワハラと指摘されることを恐れ、少し萎縮気味の経営者もいる。

 厳しい言葉になるが、ワガママを許してしまう、つまり一部の従業員を甘やかすことは労使双方にとって不幸だ。そんな会社へ私が提案する就業規則はガチガチのルールが書かれたもの。打合せの時に「先生、これは社員たちに厳しすぎやしませんか」と社長から言われてしまうのだが、「少し厳しめくらいがちょうど良いです。いざという時に会社を守ってくれるのが就業規則だから。社員から厳しいと言われたならそれを意見書に反映してくれれば良いのだし、規則を作る側としてはありがたいです」と返している。

 経営者の思いを込めたオーダーメイドの就業規則に、関心を持ってもらえないケースは意外に多い。せっかくお金と時間をかけているのに残念なことだ。厳しめと言われた箇所なら良い意味で内部牽制ができる。従業員による不正を未然防止できるのだ。就業規則のおかげで社内秩序が守られ、従業員も会社も守れる、つまり「平等」な条件の下で労働契約がなされていることに気付くのである。

 私は3人の子どもを育てた。複数の子どもを育てるに当たり重要視したのは「平等」だ。しかし子どもたちにはいつもこう言っていた。「お母さんはあなたたちを平等に考えているけど、外の人たちは平等に見てくれないからね」。

 平等は、本来不平等だからこそ意識すべきもの。しかし、平等は時に残酷であることも忘れずにいたい。

社会保険労務士オフィスもりた 森田 涼子【東京】