厚生労働省の中央最低賃金審議会は、令和元年度の最低賃金引上げ目安を27円と決めた。全国加重平均で901円となる。率にすると3.09%アップとなるが、小零細企業の賃金や労働生産性が必ずしも上昇していない実態からいえば、相当に厳しい引上げである。政府がまず取り組まなければならないのは、デフレ傾向から早く抜け出しGDP(国内総生産)を2〜3%程度の成長軌道に乗せることである。

 「経済財政運営と改革の基本方針2019」によると、最低賃金については、この3年の間、年率3%程度を目途として引き上げてきたことを踏まえ、景気や物価動向をにらみつつ、より早期に全国加重平均1000円をめざすとしている。

 中央最賃審は、今年も同方針に沿って目安を決定した。わが国の最低賃金は、国際的にみて低水準にあることなどを考えると、徐々に1000円程度に引き上げていくべきことに反対できないが、経済全体との整合性を保つ必要がある。GDP成長率が1%にも満たない現状にあって、最低賃金だけ突出して引き上げるのが好ましいかは消極的にならざるを得ない。

 毎月勤労統計調査によると、従業員規模100人未満の小零細企業では、賃金は増額改定されていないのが実情だ。法人企業統計からみた労働生産性も、資本金1000万円未満の企業では横ばいか、低下傾向にある。最低賃金の水準に大きな影響を受ける小零細企業において、賃金を一気に3%引き上げるのは容易でない。

 小零細企業の経営を成長軌道に乗せるには、長く続く経済のデフレ傾向を一刻も早く是正することが求められる。政府は、最低賃金の引上げと並行して、経済規模拡大に力を尽くすべきだが、現実の経済政策は逆に均衡縮小に向かっているといわざるを得ない。最低賃金を国際水準に引き上げたいなら、経済政策も国際的なトレンドに準じる必要がある。

 10月には消費税引上げを予定している。消費を抑制しておいて、最低賃金の大幅引上げは整合性が疑わしい。