わが国の賃金水準が再び下降局面に転じた。消費を拡大し、デフレから完全脱却してGDP(国内総生産)を増加させ、国力を強化しなければならないのに、賃金が下がったら元も子もない。10月から消費税増税が実施されたため、可処分所得が縮小し、将来にわたる消費マインドも削がれてしまう恐れがある。政府は、雇用情勢に悪影響が出ないうちに、大規模な財政出動を行って景気底上げに注意を払うべきである。

 10月からの消費税増税は、タイミングが最悪だった。毎月勤労統計調査によると、今年1月から名目、実質の双方の賃金指数が一転して下がり続けている。

 実質賃金指数をみると、昨年11月、12月に1%前後上昇していたものが、今年1月に入って下降局面に転じてしまった。しかも、3月はマイナス1.9%、4月はマイナス1.4%、そして7月確定値はマイナス1.7%と、近年にない大幅な下落傾向となっている。今後、消費税増税分2%が重くのしかかるのは明らかといえよう。

 一方、7月分の現金給与総額は37万4609円で、前年同月比マイナス1.0%だった。パートタイム労働者は同0.3%上昇したが、一般労働者は同0.5%減少だ。

 わが国は、いうまでもなく長期間にわたってデフレ状態が続き、未だにインフレ率2%に到達していない。どちらかといえば、デフレ傾向が続いているとみることができる。賃金指数が大きくマイナスに転じたうえ、消費税増税による先行き不安が加われば、国民の消費意欲が減退し、再びデフレに戻ってしまうかもしれない。国力が失われ、国民一人ひとりの貧困化も止まらなくなる。

 現在の状況では、消費を喚起するために政府が大規模な財政出動をする外に道がない。安倍首相は消費税増税に関し、「影響はしっかりと注視していく。万全の対応を取っていく」とし、必要と判断すれば機動的に対策を講じるとした。良好な雇用情勢が腰折れすることがあったら大変である。その前に躊躇なく思い切った経済対策の実行を望みたい。