労務関連手続きの電子化が進んでいる。資本金1億円を超える大企業等は2020年4月から電子申請が義務化され、今後は資本金の規模を下げ中小企業にも普及させる可能性も高い。

 ただ、電子化のメリットは多くあるが、大企業への電子化導入の実情はなかなか難しいようである。

 その理由として、まず電子証明書の運用がある。事業主名で電子証明書を取得しても、実際に運用するのは人事部や総務部のメンバーである。もちろん、メンバーを信用したいところだが、セキュリティー上は万全の体制とは言い切れず、内部統制の面で検討が必要だろう。

 ただし、法令施行は待ったなし。さて、どうしたものかだが、外部にアウトソースするというのも手である。

 内部統制の都合でできないのなら、電子申請を行える社労士事務所に業務を委託することで解決できる。

 また、大企業であっても労務管理が追いついていないケースがままある。

 最近でもセブンイレブンで給与計算の割増率が間違っており、およそ4.9億円の追加支払いが必要となった。経営陣の謝罪会見も記憶に新しいところである。

 私の経験上、他社でも偏った管理をしている場面がある。労務担当者が保険加入要件を知らない、36協定の意味を知らず毎年定型的に労働基準監督署に提出している、就業規則の形骸化など、普段の業務を何も考えずに行っていることがある。これを労務管理の専門家に委託することで、アウトソーシングによる業務効率化が図られるばかりでなく、社内の労務環境を整備するといったチャンスに恵まれる。社労士に積極的にかかわってもらえば、勉強会や説明会などを実施して、社内メンバーの育成を図ることもできるだろう。

 話は変わるが、ITの普及により人間の仕事がなくなるというのは、個人的に全くの誤解と思っている。労務管理に携わる業務がIT化されるのは、書類の作成、政府への申請、各種計算といったある意味定型的な業務である。本来は人間が実施しなくても良い作業をITが代行するということは、裏を返せば相手の意向を酌む、重要な判断をする、結果を予測するといった人間にしかできない業務が残る。人間の仕事がなくなるのではなく、むしろ人間にしかできない仕事が増えていく。より人間のチカラが必要となっていくだろう。

 その意味で、電子化を経営のチャンスと捉え、これを内外に発信し続けることこそ、我われ社会保険労務士に求められているのではないだろうか。

三島社会保険労務士事務所 代表 三島 潤【埼玉】