BiSHがメジャー3.5thアルバム『LETTERS』を7月22日にリリースした。コロナ禍による現状を見据え、元々予定されていたシングルリリースを変更し、新たに楽曲を制作し完成させた全7曲収録のアルバム。テレビアニメ『キングダム』オープニングテーマ「TOMORROW」、ドラマ24『浦安鉄筋家族』エンディングテーマ「ぶち抜け」、「夜の遊園地からの脱出」主題歌「co」の3曲のタイアップ楽曲を収録しつつ、CD盤には初回出荷される全てにメンバー手書きによる「世界に一つだけのアナザージャケット」が封入されるなど、リスナーに届けることをとことん意識していた『LETTERS』。本作品はどのようにして完成に至ったのか。メンバー6人に話を訊いた。

ー最近は「CDTVライブ!ライブ!」や「ミュージックステーション」に生出演するなど、テレビへの出演の機会も増えてきましたね。少しずつ日常は戻ってきた感じはありますか?

チッチ : ちょっとずつって感じです。

ーやっぱり、まだお客さんの前でライブができていないですもんね。

チッチ : そこはさみしいですね。



ー一方で、コロナ禍に、じっくり考える時間を持つことができたのかなとも思うんですけど、どんなことを考えたりしていたんでしょう。

アユニ : こういう状況になって真っ先に音楽とか芸術が停止せざるをえなくなったことがすごく悔しくて。無責任にライブをしたりできないし抗えない状況だからこそ、爪を研ぐ時間だと思っていて。自分たちができることは曲を作って届けることなので、今できることをしたいとずっと考えていました。BiSHチーム全体がそう思っていたので、3.5枚目のアルバムができたり、行動に移せた。そういう気持ちをみんな持っているのがすごく嬉しかったです。

ー『LETTERS』は、音楽や芸術を正面から肯定してくれる作品だと思いました。アルバムタイトルからして、BiSHからリスナーに伝えるんだという想いが込められていますよね。



チッチ : BiSHを好きな人や応援してきてくれた1人1人に届けるという想いで作りました。それで全体のテーマが手紙という形になっているんです。BiSHが何をできるか考えた時に、こうやって曲を新しく作って、今の気持ちを詰め込んで、手紙みたいにみんなに届ける。それが、今までやってきた私たちらしさだなと思って。渡辺(淳之介)さんとか松隈(ケンタ)さんの歌詞も、メンバーの歌詞も生々しさがあって、今しか作れなかった曲たちになっています。自分宛に届いた手紙のように、じっくり聴いてもらえたらって思います。

ー初回出荷されるCD全てのジャケットに、メンバーが手書きで一つ一つコメントを書いているんですよね。世界に1つしかないものが届くと。

チッチ : 手にとってくれた1人1人が喜んでもらえるようなことをしたいと思ったんです。コロナ禍で時間を取ることができたので、その人にしかない1枚を残せたら想いがより伝わるかなと思って、みんなで書きました。



──しかも、全部違う内容を書いたんですよね? どんなことを書いたんでしょう。

アイナ : 人によって全然違っていて。ハシヤスメとかリンリンは絵も描いたりして丁寧なイメージがある。チッチは達筆だし言葉の印象が強かった。本当に1人1人それぞれでした。

チッチ : 書くこと以上に、内容をひねり出すことにすごい時間がかかりました(笑)。

ハシヤスメ : 私は、ひねり出して、いろいろな「ありがとう」だったり、デザインをちょっと変えた「サンキュー」を書きました。この期間待っていてくれていてありがとうって気持ちや、今まで約5年の活動のありがとうの意味も込めています。

ーアユニさんはどんなことを書いたんですか?

アユニ : 私はことわざとかを書きました。あとは動物の名前とか。

ハシヤスメ : 誕生日とかも書いていたよね。

アユニ : 何月何日生まれの方へとか。

ー誰がどれを手にするかわからないんですよね(笑)?

ハシヤスメ : だから、「(譲)8月1日、(求)9月27日」とかありそうですよね(笑)。「僕8月1日持っているので、誰か9月27日の誕生日ください」とか。

チッチ : 逆に受け取った人が自分で意味を付け加えてくれるかもしれない。自分の誕生日じゃなくても、それが僕とアユニの記念日みたいな解釈もできるだろうし。

ーコロナ禍中に取材したミュージシャンの方には、ネガティブな気持ちが出てきて歌詞が書けないという人もいました。本作ではメンバーも歌詞を書いていますが、曲を書くにあたってそういう気持ちにならなかったですか?

チッチ : 私は全くそういうのはなくて。どちらかと言うと、BiSHは清掃員のみんなと一緒に何度も苦しい状況を乗り越えてきた。そういう私の中に刻まれたものがたくさんあったので、「Im waiting for my dawn」は、自分の中から湧き出た気持ちを歌詞にしました。少し悲しくなった時間もあったし、今でも少し悲しいけど、前を向いている意識があった。BiSHと清掃員の絆みたいなものでできている歌詞だと思います。



ーいつぐらいの時期に書いたか覚えていますか?

チッチ : 4月終わりぐらいかな。全然家から出られない時期で、こもっていた時に書きました。暗闇みたいな時期だったけど、清掃員といる時間は私の中で光みたいな時間だから。いつかまたその時間にまた戻れると思って、願いを込めた曲です。

ー「スーパーヒーローミュージック」はアユニさんの作詞曲です。音楽に救われたという想いが込められた、非常にアユニさんらしい曲だと思ったんですけど、これはどんな思いを込めて書いた曲でしょう?

アユニ : コロナでこういう状況になったとか、会えない清掃員のためとかってことはあまり意識していなくて。自分が音楽を本当に好きになって思うことがたくさんあったので、今1番書きたいことを書きました。こういう状況になって、私はつらい時、音楽に救われていたなと思って。人生の糧にしていたライブがなくなってしまったと思っている人が、自分以外にもたくさんいるんだろうなと思ったので、たまたま今の状況とリンクしたというのはあります。

ーここまでストレートでポジティブな歌詞は、加入した当時のアユニさんと比べると大きな変化なんじゃないかと思いました。

アユニ : ポジティブに書いたつもりはないんです。〈匙を投げたならすぐ拾えばいいだろ〉みたいな歌詞は、ネガティブがあってこそというか。

ーモモコさんは「ぶち抜け」の作詞をしています。この曲はコロナ禍の前に書いたものですか?

モモコ : そうですね。だからコロナ禍とは真逆の内容というか。人と触れ合っていたからこその歌詞かなと思っていて。例えば、「ふざけあった」とか「裸足で走り回って」とか、そういう表現は当たり前の日常があったからこそだったのかなって。今思うと、ちょっと懐かしいなと思います。



ー今回のアルバムは、歌割りも今までと大きく変わっていますよね。

チッチ :「LETTERS」に関しては、松隈さんのこだわりが結構あると思っていて。リンリンとハシヤスメから始まったり、1サビでアイナと私のユニゾンで始まるってこと初めてで。松隈さんが「やろう!」って、すごくうれしそうに言っていたので、こだわっているところだと思います。



ーリンリンさんが、1曲目の歌い出しというのはどういう気持ちですか?

リンリン : 怖い。

ー怖いっていうのはどういうこと?

リンリン : 歌でご迷惑をいっぱいかけてきているので、怖いです……。

ーすごく曲と合っていると思いましたよ。松隈さんからもらったアドバイスで印象的的だったことはありますか?

リンリン : 私はあまり言われないので、今回も自分の感じたままで歌いました。

ーハシヤスメさんは歌い方が力強い感じがしました。

ハシヤスメ : 全体的にですか?

ー所々でインパンクトのある声がするなって。

ハシヤスメ : 私は最初に自分なりの歌い方で歌った後、松隈さんから「もうちょっと語尾を”ん?”?みたいに上げてみようか」とか指示をもらっていろいろ試して。レコーディングスタジオに、7色に光る月…… ムーンがあるんですよ。それを抱えて、曲によって色を青にしたりオレンジにしたりして、自分の気分を高めたりして歌いました。歌にいろいろな感情を乗せたりしているので、力強く聴こえたりもしたんだと思います。

ームーンが影響しているんですね(笑)。

ハシヤスメ : ムーンだけど、自分の中で「これは地球」って思っているときもあって。そうすると、私はゴッドだから大丈夫だよ… って思えたり。やっぱり力強くなるんですよね、地球を持つと。

ーごめんなさい、よく分からないです(笑)。

チッチ : このアルバムはストレートな思いがすごく強いので、あっちゃんはストレートな声だからハマったんじゃないかなと思います。ゴッドとかはちょっと分からないですけど(笑)。

アイナ : 松隈さんがYouTubeを始めてから、ディレクションも変わった気がするんです。特にアユニとか、PEDROでこういう歌い方するから、こういう部分を活かせるとか、そういう部分も見据えてディレクションをしているなと思って。松隈さん自体も挑戦したディレクションだったり歌割りだったなと思いました。チッチの書いた歌詞の曲に〈夢から醒めて〉ってフレーズがあるんですけど、リンリンが〈夢から醒めてい〉っていう”てい節”みたいなものを編み出したんですよ。採用はされていないんですけど、ほんまになんで採用されなかったのか分からないぐらいよかったんです。そういう提案がリンリンから出たのも初めてでしたし、松隈さんの斬新さもすごく詰まっている。松隈さんだけじゃなく、そこに対してメンバーが応えられた気がします。

ーモモコさんはレコーディングで印象的だったことはありますか?

モモコ : チッチが書いた曲で、ここを歌ってほしいとか、自分もここを歌いたいとか、そういうことを言ってくれて。例えば、「サラバかな」の歌詞をここに引用しているから、モモコとアイナに歌ってほしいって言ってくれたんです。自分たちで作っている感じもあって、いいなと思いました。

チッチ :「サラバかな」の〈これからも共に時を縮めよう〉ってアイナがいつも歌っている箇所がすごく好きで、いつも1つになっている気持ちになるんです。初期からずっと歌ってきた曲で、一緒に歩んできたなと思ったので、〈これからも共に時を縮めると約束したの〉という歌詞を3人で割れたらすごくうれしいなと思って、「アイナとモモコと歌いたいんですよね」って松隈さんに言ったら「ええやん!」って。ただ、すごく速くて難しいところをモモコが歌わないといけなくて大変だったから申し訳なかったなと思っていて。でも、それがよかったと思ってくれていて、よかったなって思いました。

ーこのメンバーにこの箇所を歌ってほしいってことも考えているのは、曲により血が通っている感じがして素敵なことですね。

チッチ : 自分の想いがこもっている曲だったので、後悔しないように言いたいことは言っておこうと思って伝えたんです。その気持ちが松隈さんにも伝わって入れてくれて本当によかったです。

ー先ほど、アユニさんに対する松隈さんのディレクションの話が出ましたけど、PEDROでバンドをしながら歌うようになった影響はあると思いますか。

アユニ : 今思うとめっちゃあると思います。音楽の深いところというか、歌だけじゃなくて、曲のサウンド1つ1つをちゃんと理解した上で歌があるというか。そういう深いところまで突き詰めてくれていたのはすごく思いました。

ーアイナさんは松隈さんから何か言われたことはありましたか?

アイナ : 今回の歌録りは、アユニから始まって、次にリンリンかアイナっていうペアで録ったイメージが大きくて。個人的に何か言われたことはあまりなくて、アユニが言われていたことを私もノートに書いて歌った感じでした。

アユニ : いつもは、アイナちゃんが歌入れの始まりなんですよ。

アイナ : そう、チッチかアイナが最初に録ってデモみたいにすることが多かったんです。今回はアユニが多くて。それがものすごい勉強になった。ヴォーカルブースって密室だから、ヘッドホンから聴こえてくる松隈さんの声だけで指示をキャッチするんですよ。だから耳に集中しないと、指示が多いとき、とっさに答えられなくて結構パニックになっちゃったりする。そこでいかに冷静にいられるかが自分の課題だったんですけど、今回はアユニが一通り先に歌ってくれて、私はみんながいる空間で耳と目と体で松隈さんの指示を最初に受け取れたので、ちょっと幅が広がったというか。そこがものすごく勉強になりました。なので、今回はいつも以上に自由に歌わせてもらえた気がします。



ー現状、少しずつ音楽活動が戻ってきていますが、ウィズコロナ時代のBiSHのあり方という部分を現状で訊かせてほしいなと思います。

モモコ : この数ヶ月は生でやる対面式ライブの良さだったり、貴重さを再認識したのと同時に、ライブだけが全てではないということも実感した時期でした。例えば生放送でテレビを通してBiSHを届ける機会をもらって。そこで伝わることもあるだろうし、この3.5thアルバムもそうですし。こういう時期だからこそ、対面式のライブ以外でも届けられるものを大切にしていきたいです。

チッチ : 本当の気持ちは、今までみたいにライブをやりたいというのが1番なんですけど、音楽を絶やしちゃいけないし、私たちらしくやっていきたいという気持ちが強くて。どんな形でも絶対にライブというものは取り戻すし、またお客さんと目と目を、顔を合わせて同じ空間で音楽を楽しめる瞬間ができるように何かしたい。モモコが言っていた、いろいろな形で届けられるということもこの期間で学べたから、WACKだからできるおもしろいことっていうのが、生まれるんじゃないかなとも思っています。清掃員と近くにいたい、というのがBiSHの気持ちなので、同じ場所で生きているんだってことをずっと伝え続けられたらいいなと思います。

ー最後、ハシヤスメさんはどうですか?

ハシヤスメ : NHKツアーの最後、チッチが「世界が変わったとしてもBiSHはBiSHのままでいたい」ってことを言っていたんですけど、本当にその通りで。世界が変わってしまってもBiSHはBiSHのままでいたいし、音楽をいろいろな人に届けたい。その気持ちは全く変わっていません。これは私が考えたんですけど、無声ライブだったり、BiSHなりにできることっていっぱいあると思うんです。ファンの人が一切声を発しないで、自分のスマホのボイスレコーダーに3つぐらい声を入れて、いいと思ったら流すっていう。一切無声。拍手はできる。あと、本当に少人数で24時間ライブ再びみたいなのもやってもいいかなと思っています。でもこれメンバーに何も言ってないい、私の案なんですけど。

アイナ : 24時間!? 1人でやって(笑)。




<リリース情報>



BiSH
メジャー3.5thアルバム『LETTERS』

発売日:2020年7月22日(水)
【形態】
・初回生産限定盤 BOX仕様
アルバムCD+LIVE CD2枚組+Blu-ray Disc+写真集(100P)
価格:10000円(税抜)

・DVD盤
CD+DVD
価格:5800円(税抜)

・CD盤
価格:2000(税抜)
初回仕様:有(詳細未定)

=収録内容=
・アルバム収録曲※3形態共通
「TOMORROW」(TVアニメ『キングダム』オープニング・テーマ)
「ぶち抜け」(テレビ東京系ドラマ24『浦安鉄筋家族』エンディングテーマ)
「co」(リアル脱出ゲーム『夜のゾンビ遊園地からの脱出』テーマソング)
他新曲4曲の全7曲収録曲

・LIVECD2枚組 ※初回生産限定盤収録
LIVE CD2枚組(22曲)収録
-2020.01.23 NEW HATEFUL KiND TOUR FiNAL at NHK HALL公演分

・Blu-ray ※初回生産限定盤に収録
NEW HATEFUL KiND TOUR FiNAL NHKホールでのライブ映像を完全収録
メンバーによる副音声収録
-2020.01.23 NEW HATEFUL KiND TOUR FiNAL at NHK HALL
-MV「TOMORROW」

・DVD ※DVD盤収録
NEW HATEFUL KiND TOUR FiNALNHKホールでのライブ映像を完全収録
-2020.01.23 NEW HATEFUL KiND TOUR FiNAL at NHK HALL

その他、詳細な特典はオフィシャルサイトにて。
BiSH Official HP:http://www.bish.tokyo