反骨精神に貫かれた活動で数々の伝説を残したロック・バンド、頭脳警察のPANTA。ムーンライダーズの中心人物で、最近では映画音楽の作曲家としても活躍する鈴木慶一。日本のロック・シーンの黎明期から、二人はお互いに刺激を与えあってきた親友だ。

頭脳警察はドキュメンタリー映画『zk/頭脳警察50 未来への鼓動』が7月18日から公開され、主題歌となる新曲「絶景かな」を発表したばかり。一方、鈴木慶一はKERAとのユニット、No Lie-Senseの新作『駄々録~Dadalogue』をリリースするなど、どちらも今なお現役で自分の道を走り続けている。そんな二人がコロナに揺れるライブハウスで対談。その日、頭脳警察は無観客で配信ライブを予定していて取材はその直前に行われた。伝説の三田祭事件の「その後」からロックの未来まで、二人のレジェンドが熱く語り合った!


三田祭事件の「その後」

ー慶一さんは出演もされていましたが、『zk/頭脳警察50 未来への鼓動』を観てどんな感想を持たれましたか?

鈴木「ほんとによく出来たドキュメンタリーで、しかも、あんなに昔の映像が残っているのが非常に羨ましかったね。そういう映像が残っていた、記録しようと思っていた人がいた、というのが頭脳警察の魅力なんじゃないかなと思います。俺たちなんて何にも残ってないからね」



ーはちみつぱい(ムーンライダーズの前身バンド)の映像は残ってないんですか?

鈴木「ない、ない。何もないよ」

PANTA「俺たちの時代って、まだビデオテープじゃなかったからね」

鈴木「そう、フィルムでしょ。8ミリを持ってる人は金持ちだった」

ー懐かしい映像はありました?

鈴木「TOSHIと二人でやってる映像を観て、野音に一緒に出た頃を思い出したよ。『怖いなあ』と思ってた(笑)」

ー当時から、頭脳警察は怖いバンドというイメージがあったんですか?

鈴木「あった。バンドを取り巻いている人たちの雰囲気とかも含めてね。それを決定づけたのが三田祭だね」

ー映画にも出て来ましたね、三田祭事件。はっぴいえんどの出番に頭脳警察が乱入してライブをやって、はっぴいえんどは1曲しか演奏できなかったという。

鈴木「はちみつぱいがステージを終えて、次がはっぴいえんどだったんだけど、そこに頭脳警察が入って来て俺たちとすれ違ったんだよ。『あれ? 次はっぴいえんどなのに、なんで頭脳警察なんだろうな?』と思いながら楽屋の教室に戻ったんだよ。そこから先はライブを見ていないから、何が起こったのかわからない。ただ、今だに憶えているのが、風都市の石塚君(はっぴいえんどやはちみつぱいが所属した音楽事務所、風都市のスタッフだった石塚幸一)が傘を持って震えながら『今からあいつらのステージに殴り込む。お前ら危ないから帰れ!』って言ってたこと。俺たちは『飲みに行こうぜ』って、そのまま帰った」

ー帰っちゃったんですか?

鈴木「俺たちは予定した曲を全部やったし、何も被害を受けてないからね。紛争より酒宴だ」

PANTA「邪魔してないから、俺たちは(笑)」

鈴木「非常に紳士的なステージ・ジャックだったね(笑)」

ー三田祭の事件以降、頭脳警察と風都市の間がぎくしゃくしたそうですね。

PANTA「その前から、ちょっと溝があったんだよね。だから、TOSHIが『このまま帰っていいのか』って言ったんだと思うよ」

ー溝があった、というのは何か原因があったのでしょうか?

PANTA「例えばBYGとかのブッキングを風都市がやってたんだけど、頭脳警察はあんまり声がかからなかった。三田祭のオファーも風都市からは話が来てなかったと思う。大学側から『オファーしてるんですけど話を聞いてませんか?』って言われて、『あ、そうなんだ』って、ちょっと遅れてったら『頭脳警察がやる時間ないよ』って言われたんだよ。『やる時間ないよ』ってことは、きっと出る予定になってたんだよね。で、『じゃあ、しょうがない。帰るか』って駐車場まで行ったら、TOSHIが『このまま帰るのかよ』って」

鈴木「はっぴいえんどは1曲しかやらなかったけど、ほんとは5曲ぐらいやれたんじゃないかと思う。憶測だけどね。なぜ、1曲しかやれなかったかというと、その日、たまたま小坂忠さんの結婚式があって、そこに行かなくてはならなかった」

PANTA「そうなんだよ。そういう偶然が重なっちゃった。はっぴいえんどは怒ってたと思うよ」

鈴木「俺たちのライブに乱入されていたら、PANTAとの関係は違っただろうね。不思議なもんだよ、運命とは」

PANTA「で、三田祭が終わって1週間後、女の子と千川通りのメキシコ料理屋に入ったの。そしたら、細野(晴臣)くんがいるんだよ。同じ女連れで。お互い気まずいわけ。トラブルの後だから。で、『やあ』って違うテーブルに座って、しばらくしてパッと見たらいなかった(笑)。でも、この前、エンケンのイベントの時に慶一が仲に入って細野くんとハグしたのよ」

鈴木「40年以上経って楽屋でね」

ー良かったですねー。

PANTA「鈴木茂くんとはすでにムッシュの仲介で和解してるのね。それで一緒に仕事をしたのが堀ちえみだった。俺が曲を書いて鈴木くんがアレンジしてくれた」

鈴木「松本(隆)さんとは一度、和解のチャンスがあったんだよ。2000年にシンガー・ソングライターのクミコさんのプロデュースを二人でやっていて、その時に『ベースにPANTAを呼んで、ドラムを隆さんでやれば』という話になった」

PANTA「そうなの? やれたら面白かっただろうな」

鈴木「『うん、いいよ、それでも』ってなったけど、いろいろあって実現できなかった」

PANTA「まだ、松本くんとは(和解する)チャンスはあるけど、大瀧(詠一)くんとはもうない。会いたかったな」

二人の「お見合い」とPANTA & HALを振り返る

ー慶一さんとPANTAさんの交流に話を戻すと、1978年に慶一さんがPANTA & HALのアルバム『マラッカ』(1979年)のプロデュースしたことが、二人の交流の始まりだったとか。当時、異色の組み合わせで話題になりましたが、どういう経緯だったのでしょうか。

PANTA「平田国二郎っていうのがいたんですよ。当時、ビクターが鳴り物入りでクライング・ドックっていうロック・レーベルを立ち上げたばっかりで、その時にミュージック・マガジンから引っこ抜かれた彼が『鈴木慶一とPANTAは絶対にあう!』って言って」

ーその平田さんの仲介で一緒にやることになった?

PANTA「ビクターの青山スタジオから原宿へ向かうオシャレな道があるわけですよ。そこにまたオシャレな店があって(笑)」

鈴木「カフェバーの走りね」

PANTA「そこに行ったわけです。そしたら南佳孝とかがいて」

鈴木「いろんな人がいたよ、あそこには」

PANTA「普段、俺たちの界隈にはいない人種がね。そこで慶一とテーブルを同じくした」

鈴木「会うまではいろんなことを考えて不安だったけど、1時間くらいでPANTAのイメージが変わったね。会ってすぐに『PANTAだって、笑うんだ』って思ったりして(笑)」

PANTA「平田の言う通り、ほんとに話があった。音楽にしても趣味にしてもセンスがあうんだわ。それまで俺の界隈にいたやつとはできなかった話ができた」

Photo by Hana Yamamoto

ーお見合い成功ですね。慶一さんにとって『マラッカ』は初めてのプロデュース作でしたが、随分大変だったとか。

鈴木「PANTA & HALのサウンドって完全に出来上がってたんだよ。そこに『今』を感じさせるもの。ニュー・ウェイヴ的なるものを、ちょこっとはふりかけようと思ったんだけど……」

ーそういう方向性はPANTAさんと同意の上で?

PANTA「全部、慶一にお任せ。ニュー・ウェイヴに関しては違和感なかった。テクノにはついていけないところはあったけどね。でも、それ以上にフュージョンが大嫌いだったんだよ。あの当時はフュージョンの嵐だった。フュージョンが嫌い、という点では慶一と意見が一致した」

鈴木「それでPANTA & HALのフュージョン色を削っていった。ギターの絡み方とかね」


PANTA & HAL『マラッカ』のタイトル曲

ーバンドの抵抗はありました?

鈴木「そりゃ、大変だったよ(笑)。プロデュースをするのは初めてだし、しかも、これまで会ったことがない人たちだから」

PANTA「俺と慶一はツーカーでわかるんだけど、メンバーには色々説明しないと伝わらないんだよ。あえて説明しないこともあるけどね。面倒臭くて『黙ってやれ!』っていうこともあった」

鈴木「横でみてたら、説得してるな、というのはわかるんだけど、PANTAは私がやることに一切口を出さないんだよ。そうすることで、プロデューサーをプロデュースしていたのかもしれないけど(笑)」

PANTA「よくプロデューサーと喧嘩するバンドがいるけど、なんのためのプロデューサーなんだよ?って思うよ。自分たちにないものを引き出してもらうためのプロデューサーだろって。だから、どんな若造だろうがプロデューサーに信頼を置かなきゃ意味がない」

鈴木「おかげで私は胃に穴が空いて難聴にもなった(笑)」

ーでも、その甲斐があって『マラッカ』は名作に仕上がりましたよね。そして、次作『1980X』(1980年)も慶一さんがプロデュースを手掛けて、さらにニュー・ウェイヴ色が強くなります。

PANTA「このアルバムは、思いきり慶一色を出せたんじゃないの?」

鈴木「それはなぜかというと、『マラッカ』の時は曲のアレンジがほとんど固まっていた。その固まったアレンジからフュージョン色をちょっとずつ抜いてニュー・ウェイヴ色を足していったわけだよ。バンド・アンサンブルは壊さないよう注意深く。『1980X』はゼロからスタートなんで色が出しやすかった。ギター2本のアンサンブルもいちから作れたし非常に面白かったな」


PANTA & HAL『1980X』収録の「オートバイ」

PANTA「『オートバイ』って曲なんて面白かったよ。俺はバイクが心底好きだから俺が書かないほうがいいと思って、慶一にバイクのイメージで曲を書いてもらったの。そしたら、『オートバイ』っていうそのままのタイトルで曲を書いてきた。今時、『オートバイ』なんていうやついないよ!って」

鈴木「力道山の時代じゃないんだからってね(笑)。私はあれはマンディアルグの小説『オートバイ』のイメージで書いたんだよ。マリアンヌ・フェイスフルの映画『あの胸にもう一度』の原作のね」

PANTA「それで夜中に慶一から電話がかかってくるんだよ。『オートバイのギアってなんて言うの?』って」

鈴木「だって、こっちは乗ったことないから(笑)。ビーチ・ボーイズの曲に、ファースト・ギア、セカンド・ギア、サード・ギアって出てくる曲があるでしょ?(「リトル・ホンダ」) あれもバイクの歌だけど、で、どうなんだろうと思ったんだよ」

ーその時はもう、バンド・メンバーの反発みたいなのものはなかったんですか?

鈴木「メンバーに『髪の毛を切れ』って言ったのは根に持たれてるかもしれない(笑)」

ームーンライダーズもニュー・ウェイヴに飛び込んだ時は、まず髪型変えましたもんね(笑)。

ーこの2枚のアルバムを発表した後、PANTAさんはスウィート路線と呼ばれるポップなアルバム『KISS』(1981年)を発表します。映画では、ファンがスウィート路線に対して議論しているシーンがありましたね。

PANTA「当然、反発されるだろうなとはわかってましたよ。レコード会社も大反対、事務所も猛反対。誰一人として賛成するやつがいない。慶一も賛成してくれない(笑)」

鈴木「俺は逃げたからね(笑)。というよりも、これは違う人が手掛けた方が良いと思った」


PANTA『KISS』収録の「想い出のラブ・ソング」

PANTA「でも、その時はそういう作品をやりたかったんだよ。自分がやりたいっていうことを隠して、ファンが望む俺のイメージを演じるのは失礼だと思った、エンターテイナーだったらそうしなきゃいけないんだろうけど、俺はロックで生きて来たんだから、自分のやりたいことをやるしかないだろうと。それで作品を出したら総スカンです。音楽評論家からはボロカスに言われた。しかも、(大瀧詠一の)『A LONG VACATION』とぶつかったんだよな」

鈴木「俺はスウィート路線ってイメージ的に『A LONG VACATION』と似た方向だったと思ってたよ」

PANTA「そうなんだよね。でも、向こうのほうが良かった。やるんだったら、あそこまでやりたかったな」

ー三田祭事件の因縁を感じさせる偶然ですね。スウィート路線をやりたいと思われたのはどうしてだったんですか?

PANTA「ああいう音楽は、本来だったら18とか19(歳)でやってなきゃいけなかったものなの。ホリーズとかキンクスとか、10代の初期衝動から生まれた音楽をやりたくてロックを始めたのに、頭脳警察っていう道を選んじゃったからやる余裕がなかった。本来だともうちょっとロック色が強い、ビート感溢れるアルバムになる予定だったんだけど、レコード会社が『どうせやるんだったら徹底的にスウィートにしよう』って、レコードを売ろうとして下世話な欲を出したんだよ」

鈴木「で、CMのタイアップは決まるわ、不買運動は起きるわ(笑)」

PANTA「『PANTAを殺して俺も死ぬ!』っていう手紙が来たよ。何が悲しいって『あたし(女性)』じゃなくて『俺』だってこと。バカヤロー!(笑)」

ーそういう話を聞くと頭脳警察とファンとの関係性がわかりますね。「慶一を殺して俺も死ぬ!」っていうムーンライダーズのファンはいない気がします。

鈴木「そりゃ、いないよ(笑)」

PANTA「でも、慶一は良い友達がほんとに多いよね、ブレインも含めて。だから、慶一を介して知り合った人って多いんだよ。あの当時、お互いがドアになって、いろんな人と知り合った。慶一はそれまで知らなかった俺のまわりの人を知る。俺も慶一を介していろんな人と知り合いになった。なかには面倒くさいやつもいたけど(笑)」

PANTAと鈴木慶一、お互いの魅力

ーその後、お二人は90年代にP.K.O.というプロジェクトをやられたりして交流が続きます。それぞれ音楽的なアプローチは違いますが、どちらも言葉を大切していて、個性的なロック詩人であるところは共通していると思います。PANTAさんから見て、慶一さんの歌詞や音楽性の魅力はどんなところでしょう。

PANTA「慶一はシニカルなところが光るんだよね、ひねくれてるっていうか、細かく分析してもわからないところがある」

鈴木「俺もわからないからな、自分の歌詞に関しては。最近、聴き手に対して作ってる意識がどんどん薄くなってきてる。どこかで少しは考えてるけど、自分が面白いと思えたら良いんじゃないかと思うようになってきた」

PANTA「No Lie-Senseの新作(『駄々録~Dadalogue』)とか最高だよ。最初、KERAの曲かなって聴いてた曲が慶一の曲だったり、慶一の曲かなと思ってたらKERAの曲だったり。こんな二人の趣味って似てたっけ?って思ったね。メロディーも歌い方も」

鈴木「3枚目だからすり寄ってくるんだよ。KERAと一緒にやると、ロック的なイディオムを排していくから、キュイーンっていう(ロックなギター・サウンドが)なくなっていく。一人だと、ああいうアルバムは作れないね」



PANTA「大昔、KERAが作った『ヤマアラシとその他の変種』っていうアルバムの匂いがしたな。あれも慶一とKERAで作ったようなもんだから」

鈴木「KERAが劇団とコントとミュージシャンを集めて、俺も曲を書いて、PANTAにはベースを弾いてもらった」

PANTA「俺がベースを弾いてエンケンが歌ったんだよ。岡本太郎の歌(「岡本太郎の眼(マーシャルや 強者共が夢の音)」)。最高だったね」

ー慶一さんから見て、PANTAさんの歌詞や音楽の魅力ってどんなところですか?

鈴木「なんて言ったらいいんだろうなあ。PANTAの歌詞はストレートに見えるけどストレートじゃないですよ。1行のなかですごくいろんなことを想像させる。あと、現実に起こったことに対するコメントを歌詞に託してる部分もたくさんある。だから、詩人が作った新聞を読んでる感じだよ」

PANTA「さらに奥底にトリプル・ミーニングみたいな歌詞が並べられてるんだよ。No Lie-Senseもそうだけど」

鈴木「そうだね。ダブル・ミーニング、トリプル・ミーニングを考えて、PANTAも歌詞を作ってる」


Photo by Hana Yamamoto 

—ロックは音楽として楽しむだけではなく、そこに込められたメッセージを読み解く面白さもありますよね。最近は音楽に政治を持ち込むな!という世論もありますが、ロックは権力と戦う武器という面もあって、特に海外のロックは巧みに社会的なメッセージを歌詞に盛り込んできました。

鈴木「ビートルズなんかうまく隠してるよね」

—お二人はそういった部分も、日本語ロックとして昇華されていますよね。お二人の歌詞には、詩的なイマジネーションと共に鋭い批評性を感じさせます。

PANTA「批評と批判は違う。批評すると全面否定されたように感じるやつが多いんだよ、ケツの穴の小さいやつがね。そうじゃなくて、批評されたら『ありがとう!』なんだよ」

鈴木「良いこと言うね。知性と理性は違うからな。知性に溺れると理性をなくす」

PANTA「そんな話が会話のなかでポーンと出来るのが慶一なんだよ」

鈴木「PANTAはポリティカルにはオムニサイトだと思うね。要するに左とか右だけじゃなくて、上も下もある。この360度の位置をキープしているのは素晴らしいことだよ」

ーダブル・ミーニング、トリプル・ミーニングという話も出ましたが、お二人の歌詞には様々な意味やメッセージが隠されていますよね。

PANTA「それをわかってくれるから、お互いに『イエイ!』って感じになるんだよ。だって、種明かしみたいなことを言っちゃったら全然つまん
ない。『これはこういう意味を込めました』なんて説明したらバカバカしいよ」

鈴木「そこ、重要だよ。『こういう意味を込めました』なんて言わないんだよ」

PANTA「安っぽくなっちゃうし、聴いてるほうもつまらない。自分で考えて『そうか!』ってうのが楽しいんだから。(フランク・)ザッパの場合はアメリカのCMのネタとか、そういうのがいろいろ入ってるんで俺たちにはわからない部分が随分ある。(ボブ・)ディランの新しいアルバムなんかも、やたらいっぱい固有名詞が出てくるし。でも、慶一とは、同じエリア、同じシチュエーション、同じ年代で生きてるから、『そういうことね。うん、わかる、わかる』ってなる」

発禁歌詞と日劇オナニー事件

ーお二人は英米のロックに影響を受けながら音楽活動をされてきましたが、日本でロックをやることの難しさみたいなものを感じられことはありましたか?

鈴木「洋楽を聴いているから、浮かんで来て作るメロディーは洋楽なんだよね。で、最初は英語でデタラメで歌ってたりする。それを日本語に変えるのは難しかった。PANTAの歌って、例えば『マラッカ』なんて全然歌えない。もう、難しくて」

PANTA「ハハハ」

鈴木「すごいビートの刻み方なんだよ。大量の歌詞を叩き込んでるんだけど、それを譜面で認識しにくいんだ」

PANTA「譜面でやったら難しいんだろうな」


Photo by Hana Yamamoto

ー日本でロックをやるというのは言葉との戦いなんですね

鈴木「そうだね。言葉のリズムと海外のポップ・ミュージックのメロディーをうまく結びつけなきゃいけない」

PANTA「例えば『理由なき反抗』なんかを観てると、ジャックナイフをパーンと出して『このパンク野郎(PUNKS)!』ってジェイムズ・ディーンがケンカするじゃない。不良言葉でFの四文字(FUCK)がいっぱい出てくる。丁寧な言葉でケンカするやつなんていないから。だから、日本でロックをやる時も、そういう言葉を入れなきゃダメなんだよ。頭脳警察を始めた時、『ふざけんじゃねえ、バカ野郎!』とかそういう言葉を使って既存の歌謡曲をひっくり返そうと思ってたのね。歌謡曲ではそんな言葉使わないじゃない? それで(『頭脳警察1』に収録された「言い訳なんて要らねえよ」の歌詞に)「てめえのマ●コに聞いてみな」って入れたんですよ。そしたら当然発売禁止になった。俺だってね、好き好んで歌ってたんじゃないんだ。恥ずかしかったんだよ(笑)」

ー恥ずかしかったんですか?

PANTA「恥ずかしかったよー」

鈴木「生で歌っているのを見たことあるけど、恥ずかしそうにはしてなかったな(笑)」

PANTA「いや、それは歌わなきゃいけない義務感にかられて歌ってたんだから(笑)」

ー日本のロックのために(笑)。

PANTA「そうです、ロックのためですよ」

鈴木「日劇オナニー事件も(笑)」

PANTA「あれは罰ゲームみたいなもんだよ(笑)」

ーワイルドワンズ、テンプターズ、フォーリーブスといった人気グループと共演した日劇ウエスタン・カーニバルのステージ上でオナニーをした事件ですね。映画でその真相が語られてていますが、これも頭脳警察の伝説のひとつですね。

PANTA「ワイルドワンズの楽屋で話をしてたら、そこにテンプターズの大口(広司)君が来て、盛り上がっている間になぜか俺がステージでオナニーすることになっちゃったの。どうやら、加瀬君(ワイルドワンズの加瀬邦彦)が『マスターベーションやっちゃえば』って言い出して周りが焚きつけたみたいなんだけど。それで出番前にトイレに行ったらショーケンが隣に来て『本当にやるの?』って言うから、『やるよ』って突っ張っちゃった。そしたらもう、後には引けないでしょ(笑)。で、歌いながらズボン脱いでシコシコやってたら、写真に撮られて平凡パンチのグラビアに載っちゃった」

ードアーズのジム・モリソンもステージでオナニーをしたそうですが、日本のロックを背負ったPANTAさんも負けてないですね。

PANTA「とても勃つ状態じゃなかったけどね(笑)。オナニーすることはスタッフには秘密だったけど、もし、スタッフにも伝えていたら、多分そこにいたジャニー(喜多川)さんは『YOU、やっちゃいなよ!』って味方になってくれたと思う(笑)」

鈴木「『こっち向いてやっちゃいなよ』って(笑)」

ーパンツを下ろしたのってフォーリーブスの前だったんですよね。かなりショッキングな事件だったと思います。今、アイドルのコンサートでそんなことやったら、社会的に抹殺されますよ。

PANTA「ナベプロには申し訳ないと思ってるよ。一生懸命音楽を普及させようとしているのに」

鈴木「ロックの社会の窓が開いたんだよ(笑)」

PANTA「うまい!(笑)」

日本のロックと新しい夜明け

ーそうやって、いろいろやりながら日本のロックを切り開いて来たお二人ですが、今の日本のロック・シーンについてどう思われますか?

PANTA「最近は優秀な人がダンス・ミュージックとかヒップホップのほうに流れちゃってるね。だから、今バンドを一緒にやってる90年代生まれのメンバーたちは、自分たちが音楽をやり出した時にヒーローがいなかったって言ってる。俺たちがやり出した頃は、(ローリング・)ストーンズはいるわ、ビートルズはいるわ、マイルス・デイヴィスはいるわ、いっぱいヒーローがいた。そんな彼らに憧れて一生懸命やってきたわけで、ヒーローがいないというのは寂しいね」

鈴木「あと、若い人たちは過去の音楽も新しい音楽も並列で聴くようになった。例えばヒップホップってドラムをサンプリングしたりするじゃない? そうすると時代がわからなくなる。リズムにいちばん時代の特徴が出るから。ネットで音楽を聴くようになったことで、さらに時代がわからなくなった。そんななかで、これまで私たちの音楽を聴く機会がなかったような若い人たちが、偶然、我々の音楽を耳にする機会ができてきた。それはありがたいことではあるよね」


Photo by Hana Yamamoto

PANTA「ある意味、新しい夜明けだね。今世界中が一斉に同じスタートラインに立っている。いま、コロナの影響でライブハウスはどうするんだ?って騒がれてるけど、それ以前に、サブスクとかが普及してCDが売れなくなってきて、音楽のこれからのあり方はどうなるのかっていう根源的なことを考えなきゃいけない。でもね、こういう状況のなかで、これまでの考え方をブチ壊して飛び出てくるヤツが出てくるんだよ。どういうかたちで出て来るのかはわからないない。もしかしたら、それはAIかもしれない」

鈴木「必ず、お金のないところで新しい音楽が生まれる。制限がかかったところで面白いものが生まれるからね」

ーパンク、ヒップホップ、ダブ、みんなそうでしたね。

PANTA「今や新人とかベテランとか関係ない。男も女も関係ない。国も民族も関係ない。ビッグ・チャンスですよ」

鈴木「この後やる無観客配信ライブも世界中で見られるしね」

PANTA「そうだよ。ピコ太郎でも呼べばよかったな(笑)」


『zk/頭脳警察50 未来への鼓動』の主題歌として作られた頭脳警察の新曲「絶景かな」。6月の無観客配信ライブが行われたのと同じ会場、渋谷La.mamaで4月4日にライブ形式にてレコーディングされた。



zk/頭脳警察50 未来への鼓動
7月18日(土)より 新宿Ks cinemaにて公開
©2020 ZK PROJECT
http://www.dogsugar.co.jp/zk.html


No Lie-Sense
『駄々録〜Dadalogue』
2020年7月29日発売
http://www.columbia.jp/nolie-sense/