性的人身売買をした疑いで司法省の捜査対象となっている米共和党のマット・ゲーツ下院議員(フロリダ州選出)の政治活動委員会が、一連の性的容疑から弁護する目的で数十万ドル相当の広告枠を購入する手段に出た。

3月後半、ニューヨーク・タイムズ紙は、同議員が17歳の少女に売春させた容疑で連邦捜査を受けている、と報じた。違法活動や関連性を示す証拠が山積みの中、当然ゲ−ツ議員は、これらはみな自分を破滅させようとするリベラル派の企みだと主張している。「すべての黒幕は分かっています。アメリカ合衆国議員の排除を目的とした、民主党とメディアを中心とした中傷行為です」。政治情報メディアPoliticoによると、政治活動委員会Friends of Matt Gaetzの広報担当者は広告枠に購入に関する声明でこう述べた。今となっては、同委員会がゲーツ議員の友人代わりだ。

政治基盤のパンハンドル地区と全米で放映予定のこのCMは、評判回復を図るゲーツ議員が唯一放送上で得られる支援をいささか示すことになるだろう。というのも、通常なら影響力を持つ仲間がMAGA軍団の同胞の擁護にかけつけるが、彼らの大半が彼を見限ったからだ。

CM枠の購入は最善の宣伝方法とはいえない。このことは誰よりもゲーツ議員本人がよく知っている。いかにも信頼できる人物が――この場合、連邦議員はうってつけだ――TVに出演して、これら嫌疑は自分を陥れようとする民主党やフェイクニュースやディープステートが画策したものだ、自分がこれほどアメリカを愛しているのが気に入らないのだ、と強調するのが一番いい。そもそもゲーツ議員も、トランプ前大統領のために数百ものメディアに出演してその名をとどろかせた。議員仲間が彼のために同じことをしてくれたなら、おそらく彼も自分の身を守るために6桁相当の献金をはたいてCM枠を買う必要もなかっただろう。

だが、議員たちはそうしなかった。

ケビン・マッカーシー下院少数党院内総務(共和党、カリフォルニア州代表)は、今年初めにマージョリー・テイラー・グリーン議員の人種差別的、陰謀論的、その他さまざまな虚言を擁護してきたが、ゲーツ議員の疑惑は「深刻だ」と述べ、人々は「あらゆる情報を知る」必要がある、と指摘した。おわかりだろう。同じく少数党幹部のスティーヴ・スカリース下院議員(共和党、ルイジアナ州代表)も14日、捜査について慎重に言葉を選びながらコメントした。「噂に基づいて憶測するのは難しいが、もし司法から何らかの正式な動きがあれば、もちろん我々も対応と措置を講じるだろう」


共和党議員の大半が口を閉ざしたまま

ゲーツ議員には、ジム・ジョーダン下院議員(共和党、オハイオ州代表)がおざなりな助け舟を出している。ゲーツ議員とはビーヴァス&バットヘッドのような間柄のジョーダン議員は、ゲーツ議員の否認を「信じる」と発言した。また非常に熱心な連邦議員、グリーン議員も支持を表明している。彼女は先ごろ、Black Lives Matterの抗議デモ参加者と対峙した警察官に「金メダル」を授与する法案を提起する、と発表したばかりだ。「私を信じてください、噂やニュースは真実と同じではありません」。Qアノン大好きの陰謀論者は先月、このようにツイートした。「私は@mattgaetz議員の味方です」 グリーン議員は以前からゲーツ議員のもっとも熱烈な擁護者で、その都度、彼女なりの「真実」を吹聴している(グリーン議員はこれまでにも、銃乱射事件はやらせだ、オバマ元大統領はイスラム教徒だ、カリフォルニアの山火事の原因は高速鉄道の用地を確保するために宇宙空間から放たれたレーザー光線だ、と主張している)。

だが他の共和党議員はほとんど口を閉ざしたままだ。自分と寝た女性たちの写真を議員仲間に見せた他は、ゲーツ議員が議会内でとくに友人を作ろうと努力してこなかったことを考えれば、さして驚くことでもあるまい。

ゲーツ議員はFOCニュースのエコシステムに受け入れられる努力は惜しまなかった。だが同ネットワークも今回は距離を置いている。これはおそらく、ニューヨーク・タイムズ紙が捜査について報じた夜に『タッカー・カールソン・トゥナイト』に出演して、ぶざまな姿をさらしたせいでもある。FOXではいつでも口達者なゲーツ議員だが、この日のインタビューでは始終口ごもり、何度となくカールソンに助け舟を促した。カールソンは明らかに不機嫌そうだった。「今までやってきたインタビューの中でも、とくに奇妙なものでした」 ゲーツ議員が去った後、司会者はこう発言した。

ではショーン・ハニティー氏は? NPO団体Media Mattersによると、2017年8月以降ゲーツ議員は彼の番組に127回も出演した。議員としては、リンゼイ・グラハム上院議員(共和党、サウスカロライナ州選出)の次に多い。ハニティー氏もかつてオフレコでゲーツ議員を称賛し、2018年フロリダ州知事選の際にはロン・デサンティス候補の選挙集会で、ゲーツ議員を「連邦議会のミッキー・マントル」と呼んだ。ちなみにデサンティス州知事も、性的人身売買疑惑でゲーツ議員の擁護を拒んだ友人の1人だ。「とくに言うことはありません」。スキャンダルについてコメントを求められた州知事はこう答えた。

ディープステートがトランプ前大統領を陥れようとしている、とあれだけ騒いでいたハニティー氏も、ゲーツ議員の捜査の黒幕として司法省内の悪党を名指しするには至っていない。事実、ハニティー氏は捜査に言及してすらいない。かつてフロリダ州議員にとって連邦議会よりも居心地のいい場所だったFOXでも、今回のスキャンダルははほとんど取り上げられていない。「しばらくは彼の姿を見ることはまずないでしょう」 FOXニュースの情報筋も先ごろ、情報サイトDaily Beastにこう語っている。


頼るのはトランプ前大統領のみ?

議会もだめ、FOXニュースもだめ。きっとトランプ前大統領なら――ディープステート陰謀論者で、自身も複数の性犯罪疑惑をかけられ、ゲーツ議員が政治生命を捧げてきた彼なら――議員の弁護に回るはず……だろう? 実はそうとも言えない。前大統領は数日間スキャンダルについて口を閉ざした後、ようやく短い声明を発表し、タイムズ紙が報じたように、ゲーツ議員から恩赦を求められたことは一度もない、「本人が疑惑を完全に否認している点を忘れてはならない」と述べた。

それから数日後、捜査が報じられたのを受けてゲーツ議員はトランプ前大統領を訪問しようと打診したが、面会を断られた、とCNNが報じた。議員はこの報道を否定している。

議員生命の終わり、ともすれば刑務所生活の始まりを告げるかもしれないセックススキャンダルを打破しようとするゲーツ議員にとって、唯一の真の友はQアノン信奉者とごくわずかな右派Twitter著名人だ。議員は先日ランディ・クウェイド氏をリツィートした。これは大事件だ。

広告枠の購入をゲーツ議員が14日に発表したのは、彼が有力者から必要な支援を得られなかったこと、そして従来のワシントンのやり方からさらに大きく逸脱していることを示している。性犯罪捜査を受けた政治家は、ニュースにできるだけ自分の名前が出ないようにするのが普通だ。だが代わりにゲーツ議員は、スキャンダルをリアリティ番組の一幕のように扱い、議会の仲間よりも、スキャンダルにまみれたトランプ軍団の面々と親睦を深めようとしているかのようだ。ロジャー・ストーンやマイケル・コーエン、ジェイソン・ミラーと違って、ゲーツ議員はたまたま現職の連邦議員であるにすぎない。

自らの意思に反して、あるいは自主的にゲーツ議員が議会を去るとしても、おそらく実際の彼の行動には対して影響はないだろう。TVネットワークが彼を出演させて好き放題させる限り、彼はリベラル派をこき下ろすだけだ。捜査報道が出る以前にささやかれていたように、有罪を阻止できればメディアと一種の独占契約を結ぶかもしれない。だがそれまでは、議員がTVでメッセージを発信するには、献金者の金を使って30秒のCM枠を買い占める以外に方法はない。

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