I Don‘t Like Mondays.が約2年ぶり4枚目となるフルアルバム『Black Humor』をリリースした。今作には2019年11月より約1年半にわたって発表してきた配信シングル曲に加え、新録5曲を含む全17曲を収録。洒脱なネオソウルやR&Bを取り入れたバンドサウンドだけでなく、これまでバンドとしてタブーとしてきた転調やJ-POP要素を取り入れるなど、実験的な楽曲が詰め込められた充実作となっている。全国16都市24公演を巡る<I Don‘t Like Mondays. “Black Humor Tour“>の開催も控えている4人にアルバムについて話を訊いた。

ー今作のアルバムタイトル『Black Humor』は、I Don‘t Like Mondays.の楽曲や雰囲気からすると意外な感じもしたんですが、どうしてこの言葉が浮かんだんでしょう。

YU:自分はブラックユーモアが好きなんです。バンクシーやホアン・コルネラなど過激なことをポップに描いている作品が好きで。そんな世界観を音楽で表現できたらなとよく考えていたんです。そういう意味で、自分の内面が表れたタイトルになっていると思います。

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ーどうしてこのタイミングで、このタイトルをつけたんでしょう。

YU:去年コロナ禍によってアルバムを出す予定とツアーが延期になってしまい、僕らミュージシャンにとっては笑えないくらいの冗談が起きたことがきっかけだったんです。バンド名のI Don‘t Like Mondays.も「月曜日に会社行くのだるいよね、めんどくさいよね」ということをポップに表した名前でもありますし、自分たちはどこか皮肉屋でアイロニックなことが好きで。今、世の中で笑えないような深刻な問題をそれぞれが抱えているけど、それをどう捉えるかは自分たち次第。笑って過ごすのか、笑えない冗談だと思うのか葛藤はみんなあると思いながら、アルバムの基軸になった「MR.CLEVER」を作りました。それらの考えを総称して『Black Humor』というタイトルにしています。あと僕らはファッション的にも黒が好きなので、バンドのテーマカラーの黒とかけ合わさってしっくりきたタイトルだと思っています。



ーアルバムを制作する前にメンバー間ではどのようなことを話し合われたんですか?

YU:ホワイトボードに「I Don‘t Like Mondays.」と書いて、「俺らが持つ要素とはなんだ?」とか「自分たちが他のアーティストと違うところはどこ?」と企業みたいな会議を最初にしたんです(笑)。自分たちは常に新しいことにトライしていきたいので、まずはメンバー間で共通認識を持っておくことが必要だと思って。バンドの思想とか概念って目に見えないものじゃないですか? マネージャー含め制作のメンバーも、新しく入ってくださったスタッフの方とも一丸となって、バンド軸の擦りあわせをしたいなと思って自分たちを言語化したんです。



ーバンドを因数分解して考えたわけですね。それによって何か気づいたことはありますか?

KENJI:自分たちがどう成長しているか、何かが変わってきたか、文字に起こして自分たちを理解するって他のバンドマンはあまりやらないですよね。「あ、自分たちってこうだったんだよな」ってちゃんと文字で分かるってすごく便利だなとあらためて思いました(笑)。文字に起こして、自分たちを見つめ直せたからこそ、今回のアルバムはできた曲がいっぱいあるんです。

SHUKI:その時の会議はアルバムタイトルを決めることがメインだったんですけど、そもそもこんな時期にアルバムに17曲も入れること自体クレイジーだなと(笑)。でも、「よく考えると変じゃない?」ってことを僕たちは皮肉っぽくやってきたなとも気がついて。



CHOJI:もともと僕らは初めましてでバンドを組み始めたので、「こういうバンドになりたいね」って話をたくさんして、1stアルバムの『PLAY』では遊び心を全面に出したんです。次の『TOKYO』では最先端なことをやって、『FASHION』は「バンドってファッションも大事だよね」ということを伝えたかった。今回のアルバムは、いよいよ人間性の部分を出したいと思ったんです。I Don‘t Like Mondays.が培ってきた人間性が「MR.CLEVER」然り、アルバム・タイトルの『Black Humor』にすごくしっくりハマったんです。僕は井上陽水がすごく好きで、よく聴くんですけど、男性から見てもどこか力が抜けているというか、斜に構えている面がかっこいいなと思うんです。このバンドなら井上陽水のようなことをやれるという想いがあって。いろいろなタイミングが重なって、今回の『Black Humor』を出せたと思っています。

ーブラックユーモアは海外だと日常に溶け込んでいるイメージですが、日本においてアルバムの真意がちゃんと伝わるか不安はありませんでしたか?

YU:一般的に使われているブラックユーモアの概念は皮肉的だったり狂気的な笑いだと思うんですけど、僕らの『Black Humor』にはそういう要素もあるし、「MR.CLEVER」的な曲があったり多面性を込めているつもりなんです。ブラックユーモアで笑える人、笑えない人、何のことを表しているのか分からない人もいると思うんですけど、それでいいと思うんです。あくまでも僕らは作り手なので、受け手がどう感じるかは、その人自身の想像なので。ある意味、受け手を突き放しているんですけど、それでいいのかなと思っています。



ー『Black Humor』には新曲が5曲収録されています。それまでの配信曲にはないピースを取り入れようとして作った楽曲なんでしょうか

YU:もちろんそういった要素もあります。例えば、「サボテン」はちょっとしたバラードで、アルバムだからこそ映える曲だと思って、あえてアルバム曲として出すことにしたんです。

CHOJI:「馬鹿」と「独り占め」は、連続配信が終わった後に違う作り方をしてみたくてピアニストの方にスタジオに来てもらったんです。基本は4人の中である程度コード進行を作ってメロディを起こしていっていて。他の人にアレンジを任せてみようという試みは前にもちょっとあったんですけど、今回は根幹となるコード進行とメロディの部分からピアニストさんを入れているんです。今まで鍵盤でメロディを考えることがあまりなかったんですけど、僕たちが想定できないコード進行をアイデアとして出してもらおうと実験的にやってみたんです。「MOON NIGHT」も気楽に作りましたね。



ーサウンド面で新しく取り入れたり、チャンレジした部分はどんなところでしょう。

SHUKI:個人的にやっていて楽しかったのは「ノラリ・クラリ」と「MOON NIGHT」で。音数が少ない曲なので、ネオファンク、ネオソウルの要素を取り入れて特色を出そうと思ったんです。最近流行している洋楽は意外と80sのテイストが残っている印象があるんですけど、ドージャ・キャット、Samm Henshawはさらにソウルの要素をさらに足しているので、そのへんをイメージしました。アルバムの中でも、「ノラリ・クラリ」と「MOON NIGHT」は最後の方に作ったというのもあって、いろいろチャンレジできるバッファがある曲でした。



ーメンバー4人の合議制で「こういう音色にしよう」と決めているんですか?

SHUKI:バンドなので、アレンジの段階でギターの音色で曲に表情をつけたり、「CHOJIはこのフレーズだったら、こういう音色」と誰かが言ったり、CHOJIが自分からアイデアを出してていく中で徐々に見えることもあります。

ーギターフレーズのお話が出ましたが、CHOJIさんが今回サウンドメイキングで印象に残っている楽曲はありますか?


CHOJI

CHOJI:「モンスター」をレコーディングした時、最初に自分の竿で録ったんですけど「なんか違うな」とずっと思っていたんです。別日、違うギターを持ってきて録り直してみたらしっくり来て。その時にKENJIもSHUKIも「CHOJIのギターがそういう感じなら、自分たちもこういうサウンドにしてみようかな」となって、おもしろかったです。アルバムの中では異端児的な曲なのであってよかったし、ツアーを盛り上げていく楽曲になっていると思います。



ー楽器が変わると曲の雰囲気にも影響が出るんですね。

CHOJI:全然違いますね。CDだとライブのような空気感もないし、ヘッドホンをつけているので、繊細かつ立体的に作っていくことを意識しています。

ーKENJIさんはどの曲が印象に残っていますか。

KENJI:「馬鹿」と「独り占め」は個人的に苦労しました。主に洋楽を聴いてきたので、J-POPっぽい楽曲をどういうベースフレーズで弾くか悩んだんです。僕はこのバンドでベースを始めたので、自分の中にフレーズの引き出しを作っていくところからスタートしました。今流行しているJ-POPの人たちの中で、この2曲に合いそうなフレーズをいっぱい聴いて。でも、それを真似してもおもしろくないので、自分が今まで培ってきたものとミックスして、どうやって昇華させていくかということに挑戦しています。「ノラリ・クラリ」と「MOON NIGHT」、「全部アナタのせいなんだ」もそうなんですけど、I Don‘t Like Mondays.が昔から心がけている音数をできる限り少なくして音の粒立ちをよくしていくことは引き続きやっていて。この3曲に関しては最後の方に作った曲なので、それがよりできた楽曲になっていると思います。



ー今回、どうしてJ-POP的な要素を取り入れようと思ったんでしょう?


KENJI

KENJI:最初はもう少し日本詞を増やしたいと考えていたんですけど、「MR.CLEVER」ぐらいからYUの中にある生々しい部分が見えてきたというか。自分をさらけ出す歌詞のスタイルに変えていきたい方向になり、楽器隊も楽曲的なアプローチで新しいことに挑戦したいと思ったんです。プログレみたいに進行が複雑に変わっていく曲もあると思うんですけど、基本的に洋楽はループの中でメロディが展開していくことが多いと思っていて。今回僕たちは楽曲のセクションごとに転調していったり、「独り占め」は大きく2回転調しています。

CHOJI:今まで転調は自分たちの中ではタブーだったよね。

YU:そういう意味では「独り占め」、「馬鹿」は今までだったら採用しなかったメロディ、リズム、譜割りをあえて採用しています。本当に実験というか。世の中に出た時に「ファンの人たちはどんな反応するんだろう?」と見てみたかった。大きな社会実験みたいに楽しみながらやっています。過去にやったことをそのままやるだけだと退屈なんです。常に今までやってこなかったことに挑戦したい。そういう意味では「MR.CLEVER」、「Sunflower」、「ENTERTAINER」はプロデュースを曲ごとにお願いしてコラボして作った曲で。自分たちだったら使わない音色を入れてくださって実験的なサウンドになりました。



ーYUさん的に、ボーカル面で印象的な曲はありますか?

YU:最も挑戦的という意味では「モンスター」ですね。今までのアルバムだったら絶対に書かない内容の曲です。自分を色濃く出せたなと思ったのは「地上を夢見る魚」。生々しさとか、毒々しさって、人間みんなそれぞれが持っていて。僕も人間なのであるんですけど、今までは僕らのサウンドに合わないと思って排除してきたんです。でも今回はあえて採用してみようと思った。だからメンバーに見せる時も、すごくドキドキしながら見せました。この曲を出せたことによって僕の中で歌詞を書くことに解放的になって、より自由になったと思っています。自分の中で大きなステップアップに繋がった曲です。


YU

ーYUさんから「地上を夢見る魚」の歌詞を見せられた時、みなさんはどう思いましたか?

KENJI:今まではあくまでもサウンドが基軸で、いかに綺麗に歌詞を乗せるかを意識してきたんです。歌詞を書くのはYUなので、曲が上がって来た時に「ここは響き的によくないから、こうしてほしい」と伝えていたんです。でも「モンスター」と「地上を夢見る魚」は、もう既にYUの中で決まっているような出し方でした。歌詞的な部分で言うと、今までは綺麗にまとまっていたところに棘を出してきた印象で。YUの中で確固たるものがあったから、メンバー間でも1回任せてみようということになったので、いい化学反応でした。



CHOJI:1人1人の曲に対して責任感やお互いを尊重したい気持ちありつつ、「もっとこうできないの?」ってことはこれまでよく言い合ってきたんです。ただ、これまでの経験や積み重ねもって、なんだかんだ形になるし、曲が聴き馴染んでくると身を持って分かってきたというか。むしろ、メロディに関して、あまり決めすぎない方がいいことを『Black Humor』を制作している時に気づいたんです。1フレーズでもいいところがあればいいと思うようになったというか。全部が好きとかじゃなく、聴き終わった後に残る部分があればいいと思ったんです。

SHUKI:なので「独り占め」と「馬鹿」は歌詞が1番刺さるように、歌詞を優先して曲を作り始めています。今まであまりやったことがなかったので、新しい経験でおもしろかったです。


SHUKI

YU:正直、アルバムを3枚出す中で、自分の中でジレンマがあったんです。よく「おしゃれだよね」という言葉を言われるんですけど、うれしい反面、「ただおしゃれな音楽って価値があるのかな」と思っちゃう自分もいて。要するにBGMになってしまうんですよね。もちろんBGMで使われることも、「おしゃれ」と言われることもうれしいんですけど、一方で「今まで苦労して作ってきた曲がただのBGMで終わるのか」という想いもあって。なぜそうなっているのか考えると、全てを綺麗にしすぎている自分がいたんです。それこそ曲中で響きがよくないから歌詞を削ってきたけど、削ってしまったものが、もしかしたらフロントに立てたんじゃないかと曲を出す度に思うようになってきて。『Black Humor』は、「もうおしゃれとか知らんし」と思い切って歌詞を書き始めたことが大きな変化です。

ーそれは大きな変化ですね。

YU:逆に言うと、バンドを始めたばかりでは気づかなかったことでもあるんです。ある程度キャリアを踏んで、世間の反応を見ながら大きく変化していった部分かなと思います。



ー「ノラリ・クラリ」は、彼女との些細な行き違いを歌っていますが、最終的に「僕は僕でいいのかな」と自己完結で終わっている歌。そこがダメ男のようでおもしろいなとも思いました。

YU:その感想は、うれしいですね(笑)。冒頭は彼女との恋愛の話で始まるんですけど、最終的には自己啓発的な感じで終わる。自分がすごくいいなと思う曲は、例えばMr.Childrenさんは始まりのテーマから最終的なテーマが違うものになって終わる曲が多かったりするんです。そういう影響もどこかで受けているので、ポップに気楽に歌えてよかったなと思っています。



ーコロナ禍によって、一度立ち止まって自分たちを見つめ直したからこそ完成したアルバムでもあるんですね。

SHUKI:今回、アートワークもアートディレクターの安田さんと一緒にやらせてもらっていて。アートワークを含め、タイトルと世界観、収録曲が今までで1番マッチしたアルバムになっているので楽しんでもらいたいです。CD・DVDと別にフォトブックが入っている限定盤があって。アートワークやCDというものを飛び越えて、かっこいいものができました。

YU: 1つのアートになってますね。ポスターでもありつつ、後ろが歌詞カードになっていて、かっこいいんです。フォトブックも映画のワンシーンみたいになっていて、それぞれ裏でストーリーが進んでいるのをアルバム全体で感じてほしいですね。

ー現在、全国16都市24公演を巡る「Black Humor Tour」も予定されています。どういうツアーにしていきたいですか?

YU:2020年はツアーができなかったので、すごく久々の全国ツアーなんです。今まで行ったことがない場所でもライブができるのは単純に楽しみですし、2021年は生で音楽を届ける活動がかなり限られた範囲でしかできていないので、あたらしく作った曲たちを生音で広げていく、今まで以上に気合いが入るツアーにしていきたいと思います。


<リリース情報>



I Don‘t Like Mondays.
『Black Humor』
発売日:2021年8月18日(水)
商品概要:https://idlms.com/news/337193
配信URL:https://idlms.lnk.to/norarikurari

8月4日(水)先行配信楽曲「ノラリ・クラリ」:https://idlms.lnk.to/norarikurari
8月11日(水)先行配信楽曲「MOON NIGHT」:https://idlms.lnk.to/moonnight

<ツアー情報>

「I Don‘t Like Mondays. "Black Humor Tour"」
公演概要:https://idlms.com/news/337153
ツアーグッズ:https://idlms.com/news/338154