声優として活動する降幡 愛が、9月に発表した1stシングル「ハネムーン」に続いて2ndシングル「東から西へ」をリリースする。

映画『189』の主題歌でもある表題曲の他、カップリングの2曲を含め全曲降幡が作詞し、本間昭光がプロデュース・作編曲を手がける。降幡が好きなサウンドを追求するこのソロプロジェクト、気づけば80年代オマージュ云々とは別の次元で音を鳴らしていることが分かる充実の仕上がりだ。そんな降幡がRolling Stone Japan初登場。いろんな角度から話を聞いてみた。



—「降幡 愛 2nd Live Tour “ATTENTION PLEASE!“」初日のZepp Hanedaを観させていただいたのですが、降幡さんのヴォーカルとプロデューサーの本間(昭光)さんのキーボードを中心とした楽器隊との一体感も心地よく、ソロデビューして1年とは思えない完成度の高さだと思いました。バンドを従えての歌唱はやはり気持ちいいですか?

降幡:1stツアーからご一緒しているベースのタケウチ(カズヒロ)さんに安心感を感じつつ、ドラムの髭白(健)さんとギターの高田(翼)さんは初めましてだったんですけど、バンマスのnishi-kenさんと本間さんを中心に、グループの一体感は初日のリハーサルの段階からすごくあって、空気感もよかったです。なのでバンドを従えるというよりは、みなさんと楽しくステージに立てている感覚で、贅沢だと思いながら初日を迎えました。

—本間さんもMCで話してましたけど、降幡さんのやりたいことが明確にあるからこそ、これだけのまとまりが生まれるのかなと。ご自身的にはどうですか?

降幡:アーティストとしてデビューする前の段階では、まだ明確に自分のやりたいことはなくて。以前から80年代の音楽は好きでしたけど、ここまで突き詰めてやるとは思ってなかったんです。ただ、本間さんがプロデューサーになって密にやっていくなかで、最初に歌詞を書いた「CITY」で本間さんも本気になってくださって。コンセプトがはっきりしているので、みなさんも面白がってくださるし、私も蓋を開けたらやりたいことだらけで。特に本間さんがアイデアマンで、サウンド含め、照明はもっとこういう感じがいいよとか、いろいろなお話をしてくださいます。本間さんがお仕事されてきた偉大なアーティストたちを考えると凄いことですし、今こうしてご一緒できているのがうれしいです。

—降幡さんが自分で曲を制作していることも皆のモチベーションになってるのかもしれないですね。

降幡:はい。やれと言われたことができないタイプなので、自分でストーリーや世界観をつくっているからこそ、できるものがあるのかなと思います。令和の時代に80年代のものをコテコテにやるってイロモノに捉えられがちですけど、本間さんやレーベルのチームと一緒にやっている本気さが、だんだん周りの方たちにも伝わっているのかなってことは、この1年アーティスト活動をしていて思います。周囲の評価もだんだん変わっていったのがうれしいです。


降幡が紡ぐ言葉のインプット源

—ライブの話に戻ると、例えば「ハネムーン」はライブでだとギアが一段上がる曲だなと感じました。音源とライブのアレンジの違いに関してはどうですか?

降幡:「ハネムーン」は初めて音源で聴いたときはキラキラしているリード曲ってイメージだったんですけど、ステージでやってみてライブ映えするんだって気づきました。ライブを通して本間さんのピアノも凄いなってあらためて思えたので。今回のツアーは本間さんとnishi-kenさんとご一緒してるんですけど(両者が別日でそれぞれキーボードを担当)、二人とも弾き方が全然違うので面白いです。あとはベースの音色がライブだと私のツボで、タケちゃんもいろいろ考えてくださっているんだなって。



—星が降ってくる演出は、本当は前のツアーでやりたかったとか。

降幡:1stツアーの最後のZepp DiverCity TOKYOで降らせる予定だったんですけど、無観客になってしまったので、今回は「AXIOM」って曲で星を降らせました。お客さんたちは何が起きたんだろうみたいな感じでびっくりしsていましたけど(笑)、あの光景を見られてよかったです。

—開演前〜冒頭の演出も、降幡さんのアイデアですか?

降幡:はい。空港でフライトを待っている感じを出したい……って話をして、ナレーションの声も新曲のレコーディングのタイミングで録りました。空港の中のざわざわした環境音も、音響スタッフの方がわざわざ空港まで行って、しかも本間さんの発案で国際線のターミナルの音を録ってきてくれたんです。ライブの世界観にどっぷりつかる雰囲気づくりをみなさんと一緒につくっていけて楽しかったです。

—今回は2ndシングル「東から西へ」の話を聞かせていただこうと思うんですけど、リリースのペースが早いですよね。

降幡:思いがけず(笑)。うれしいです。

—今回も収録曲3曲、「東から西へ」「サンセットに忍ばせて」「ネオ・イルミネーション」、すべて降幡さんの作詞です。日頃から歌詞のアイデアを書き溜めてるんですか?

降幡:はい。iPhoneのメモ機能に、この言葉使えそうだなって思ったフレーズを常日頃メモしていますね。曲をつくることになったら、テーマは事前にチームでお話しして決めます。そこから使いたいフレーズを、今まで書き溜めてたものから抜くこともありますし、あらためて違うインスピレーションで書くこともあります。

—降幡さんの言葉のインプット源は何ですか?

降幡:最近は、人と話しているときに気になったフレーズをiPhoneにメモしてるんですが、カフェでいろんな人が話している内容もアイデアの種になったりします。みなさんけっこう面白いこと喋ってるじゃないですか。そう考えると、人に興味があるんだと思います。自分のことはよくわかってないですけど、この方はこういう人なんだろうな、とか、分析するのが好きです。

—なるほど。

降幡:言葉の裏にあるものを知りたいんですよね。本当はそんなこと思ってないのに言ってしまったんだなとか。家族構成とか関係性とか、バックボーンを考えるのが好きです。


アーティストとしていろいろな発見があった「東から西へ」

—「東から西へ」の歌詞には“かなしみ“ってワードが繰り返し出てきますけど、最後の“つよく、つよく、生きるのだから“がとても心に残ります。

降幡:「東から西へ」は映画主題歌ってこともあったので、自分が書きたいものというよりはその作品に対するアプローチをうまく自分の中で表現できるかってことを大事にしました。今までは悲恋歌みたいなものは書いてたんですけど、そうじゃないアプローチで書かなきゃってことは、この「東から西へ」で特に思ってたことです。明日への希望の光みたいなものを、今までの作風じゃないところで書かなきゃなとは思ってました。



—歌詞を完成させるのは大変でしたか?

降幡:そうですね。最初は映画観終わった方たちにあなたはどう思いますか?って問う歌詞だったので。その歌詞を加門(幾生)監督にお渡ししたときに、もっと希望を与えられるような、あったかい歌詞がいいです、ってオーダーをいただいて今の形になったので、最初にできたものとは180度違う内容なんです。でも、映画の試写で初めて「東から西へ」を聴いたとき、これでよかったって思えました。映画にすごく溶け込んだ曲がつくれたなって。

—これまでの降幡さんの曲の中では、異色な感じですよね。

降幡:だいぶ異色です。羽田で初披露して、これまでの自分とはまた違った歌い方や表現ができて、ライブでこういう表現もできるんだって発見にもなりましたし、アーティストデビューから1年経ってのリリースで、いいタイミングでいろいろ気づかされた曲です。

—サウンドも弦楽器の響きが美しくて、ビートも柔らかい。

降幡:チェロも生楽器で、音の温かさは本間さんも追求していたと思います。これまでの曲でチェロは使っていなくて、今回は音数も少ないし、曲調もバラードで、自分の中では難関でした(笑)。

—これまでの曲とはアプローチが全然違うけど、80年代っぽさも何となくありますよね。

降幡:そうですね。80年代って括りで語るなら歌謡曲寄りというか。いろんなサウンドがあってもいいと思います。

—「サンセットに忍ばせて」の歌詞は降幡節で、この曲はどういうところから書いていったんですか?

降幡:今回のシングル収録曲は、まず「東から西へ」があって、次に「ネオ・イルミネーション」があって、この曲は最後につくった曲なんです。3曲通してどういうテーマにしようか考えたときに、日が昇って落ちるところまでは「東から西へ」「ネオ・イルミネーション」で書けたから、次は夕陽だと思って「サンセット」って言葉が思いついて、そこから書き始めました。夕焼けに自分の想いを乗せて、夕陽が沈む。自分っぽいものを書こうと思って、恋愛要素や強い女性、怒りをテーマに書いた感じです。怒りを静めるというか。

—冒頭の“心のバランスが崩れ“って掴みにハッとさせられるというか。曲のフックになってると感じたんですけど、そこには怒りが起因してるんですね。

降幡:コロナ禍になってみなさんいろんなストレスを抱えてると思うんです。発散できないやり場のない怒りは少なからず自分にもあると思うので、そういうものを書きました。大人の女性の怒りというか、静かに怒ってる。今だから書けるのかなって部分もちょっとあります。

—そういう話って本間さんに歌詞を渡すときに話したりするんですか?

降幡:歌詞の話はあまりしないですね。レコーディングのときにちょっとおしゃべるするタイミングで、会話の延長線上で話すくらい。歌詞の内容について熱弁することはないです。


「サンセットに忍ばせて」のリファレンスは和田加奈子「悲しいハートは燃えている」

—シンセの流麗なサウンドと、ちょっと尖った感じのギターサウンドが印象的で。

降幡:ああ! そうですね。ギターソロって意味で言うと、本間さんに怒りの曲です、ってことは言いましたけど、ギタリストの方にそんなに細かくは伝えてなかったと思います。

—ギターで怒りが表現されつつ、でもサウンドの空気感は80年代っぽい華やかさを纏っていて、そこが面白いなと思いました。

降幡:本間さんはもうわたしの好みを知ってるので。そういうのが多分、1年やってきて言わなくてもわかるようになったところはあるかもしれないです。

—本間さんにリファレンスを出することもあるんですか? こういう曲がいいです、みたいな。

降幡:「サンセットに忍ばせて」に関しては、和田加奈子さんの「悲しいハートは燃えている」っぽい感じがいいとお伝えしました。バンドっぽい強いサウンドというか。



—強いサウンドと強い言葉、ですね。歌詞は基本シンプルですよね。

降幡:長くなりすぎないようには気をつけてますね。サビも同じフレーズを繰り返していて、耳に残りやすいようにしてます。令和の曲って情景を一言一句書くところがあるじゃないですか。もちろんそれはそれで素敵なんですけど、そんなに説明っぽくならない歌詞にしようとは常に思ってますね。

—「ネオ・イルミネーション」は、最初からクリスマスソングにしようと決まってたんですか?

降幡:決まってました。シンプルなクリスマスソングをつくろうと思ったんですけど、結果ちょっとこじれた感じの女の子の主人公ができた感じです。

—ジングルが入ってて、これぞクリスマスソングって感じですよね。

降幡:チャラーンみたいな乾杯の音は入れてくださいってオーダーはしました。曲の中で何度も出てくるんですけど(笑)。

—思い描いていた通りの曲になりました?

降幡:思い描いていた以上の感じです。街中で流れてそうな王道なクリスマスソングであり、自分の詩の世界観が合わさって新しい一面も生まれた曲です。もちろん本間さんらしい部分も出てて、詩はそんなに80‘sに寄せてはないんですけど、サウンドとマッチしてる。すごく素敵なキラキラした曲ができたなって思います。

— “買ってもらったワンピース脱ぎ捨てた/シャワーヘッドをマイクにリサイタル“って歌詞とか、昭和な感じだなと思いました。

降幡:(笑)そうですね、言われてみると。普通の恋愛ソングじゃない感じというか。クリスマスって恋人だけで過ごすわけでもないじゃないですか。自分の中のクリスマス像が王道じゃないんだなって再認識しました(笑)。


「共感は何一つできないと思います」

—降幡さんの曲って、今時の恋愛ソングとは全然違いますよね。ラブソングを聴いている気分にならないというか。

降幡:ははは(笑)。たしかにラブソングとして聴くものでもないですね。わたしの頭の中で描いているドラマを歌詞にしてるので、どこか俯瞰な部分ができるのかもしれないです。「あなた悲しいでしょ」みたいに、独りよがりっぽくないというか。「東から西へ」はまた別ですけど、希望に向かっていこうぜ!みたいな歌詞は書けないです(笑)。

—いい意味で、共感を誘う曲じゃないなって。

降幡:(笑)共感は何一つできないと思います。前にリスナーの方に「降幡さんの歌詞は共感する部分は一切ないんですけど、聴いてて楽しいです」って言われました。本当だ、と思いました(笑)。別に共感して欲しくて書いてるわけでもないので、その見方はちょっと盲点だったなと思ったんですけど(笑)。

—ソロでアーティスト活動を始めてみて、自分の中の新しい扉が開いた感じはありますか?

降幡:アーティストデビュー前はもっと役柄のイメージに沿った可愛らしい歌声だったところが、いざソロ活動してみたら大人っぽい感じの、今までの印象とは違うギャップが出せているので、そういう感覚はあるかもしれないです。いろんな自分を見せられる場ができてうれしいなって思います。

—アーティスト活動で得たものを、他のお仕事でもフィードバックできてるなと感じますか?

降幡:はい。声優のお仕事で台本を読むときに、人間関係だったり、キャラクターの違う一面ももっと考えなきゃと思うようになりましたし、これまでとは違うアプローチができるようになってきたかなって思います。

—今後やってみたいことは?

降幡:これまで他のアーティストの方と絡む機会がなかったので、自分の歌詞を誰かに提供するでもいいですし、別の方との相乗効果というか、コラボレーションみたいなことができたら面白いなとは、漠然とですけど思っています。

降幡 愛(Ai Furihata)
2月19日生まれ、長野県出身。 2015年に『ラブライブ!サンシャイン!!』の黒澤ルビィ役で本格声優デビュー。同作品のスクールアイドルグループ「Aqours」のメンバーとして活動し、2018年には東京ドーム2DAYSのライブにて、 国内外ライブビューイングを含め15 万人を動員。 同年末の第69回NHK紅白歌合戦に出演を果たした。 2020年9月23日にデビューミニアルバム『Moonrise』をリリースし、ソロアーティストデビュー。2021年には2度のライブツアーを開催した。

<INFORMATION>

「東から西へ」
降幡 愛
Purple One Star/バンダイナムコアーツ
12月1日発売


初回限定盤
価格:3080円(10%税込)/2800 円(税抜)
品番:LAPS-34007~8
仕様:CD1枚+Blu-ray1枚
20Pフォトブック、スリーブ付
初回生産特典:2022年2月開催・スペシャルライブ「Ai Furihata “Trip to STAR“」チケット最速先行抽選申込券


通常盤
価格:1430 円(10%税込)/ 1300 円(税抜)
品番:LAPS-4007
仕様:CD1枚
初回生産特典:2022年2月開催・スペシャルライブ「Ai Furihata “Trip to STAR“」 チケット最速先行抽選申込券

【CD】
01:東から西へ
02:サンセットに忍ばせて
03:ネオ・イルミネーション
04:東から西へ(Instrumental)
05:サンセットに忍ばせて(Instrumental)
06:ネオ・イルミネーション(Instrumental)

【Blu-ray】 ※初回限定盤のみ
・「東から西へ」Music Video
・Music Video Making

https://furihataai.jp/