80年代初頭、ポストパンク・シーンに、一枚のアルバムを発表して伝説になったバンド、ヤング・マーブル・ジャイアンツ。その名盤『Colossal Youth』(80年)の40周年記念盤の国内盤リリースにあわせて、ヴォーカルのアリソン・スタットンに先ごろインタビューを行った。お気に入りの作品を選んでもらって、そこから音楽的なルーツを解き明かすという企画だったが、その続編として今回はギターのスチュアート・モクサムに話を聞いた。メールでのインタビューということもあり、YMGのサウンド同様、シンプルな回答だが、そこにはスチュアートの豊かな音楽性や知性が伝わってくる。


―選盤ありがとうございます。この10枚のアルバムは、どういった基準で選んだ作品なのでしょうか。

スチュアート:今回選んだアルバムは、すべて僕が何度も聴いたアルバムなんだ。

ー各作品についてコメントをお願いします。その際にあなた個人やYMGに影響を与えたところがあれば教えてください。

1. Eiks『A Morsel Of Love』(2013年)

スチュアート:このアルバムは美しくて穏やかな曲のコレクション。日本の日常に潜在する美を彷彿とさせる珍しいコードと歌詞が駆使されているアレンジとプロデュースも素晴らしい。



2. ブライアン・イーノ『Another Green World』(1975年)

スチュアート:ブライアン・イーノの独特のスタイルで出来上がった多様多彩な曲がぎっしり詰まった作品。



3. ブラインド・フェイス『Blind Faith』(1969年)

スチュアート:僕が初めて買ったスーパーグループによるLP。それがこの作品の全てを物語っている。



4. ザ・ビートルズ『A Hard Day‘s Night』(1964年)

スチュアート:このLPは、子どもの頃に僕が大好きだった叔母からもらったレコード。今だにパーフェクトなポップ・アルバムだと思う。



5. レナード・バーンスタイン『West Side Story』(1961年)

スチュアート:僕が幼少期の頃影響を受けたもう一枚の重要なアルバム。父親がこの映画を見に映画館に連れて行ってくれたんだけれど、僕にとって、この作品は未だに音楽の花火が詰まった箱。とてもエモーショナルで、パワフルで、洗練された音楽。



6. ニール・ヤング『After The Gold Rush』(1970年)

スチュアート:不満を抱えたティーンエイジャーにとって、このアルバムはすごく励みになる作品だった。最初のガールフレンドと一緒にしょっちゅう聴いていたよ。



7. ジョニ・ミッチェル『Hejira』(1976年)

スチュアート:その後のガールフレンドが持っていたレコード・コレクションからの一枚。この作品は啓示であり、詩において私的な見解が表現されている。ソングライティングとギターのプレイスタイルもユニークだ。



8. エマーソン・レイク・アンド・パーマー『Pictures At An Exhibition』(1971年)

スチュアート:この作品を聴いてから、僕のロシアの交響曲への生涯変わらぬ愛が芽生えたんだ」



9. レッド・ツェッペリン『II』

スチュアート:僕が15歳の時、一番オシャレなレコードだった。初めて聴いた時から魅了されたんだ。



10. V.A.『Amacord Nino Rota』(1981年)

スチュアート:このアルバムは、私の兄であるフィル(・モクサム:YMGのベーシスト)からもらった作品。このアルバムに飽きたことは一度もない。僕はフェリーニのファンで、この音楽は僕を彼のファンタジーの世界へ連れていってくれるんだ。



YMGとその後の音楽人生について

ーあなたはどんな音楽環境で育ったのでしょう。

スチュアート:僕は普通の音楽環境で育った。音楽を愛する家庭に育ち、家では賛美歌からブログレッシヴ・ロック、ギルバート・アンド・サリバンに至るまで様々な音楽がかかっていたよ。今回選んだトップ10はよく知られた作品が多いけど、そこにはジョニ・ミッチェル、レナード・バーンスタイン、ブライアン・イーノのような密かに先鋭的な要素が多く含まれている。作品の内容とそこから何を感じるかは、聴き手の聴き方によって変わるものだからね。

ーYMG結成当時、あなたはパンク・シーンをどのように見ていましたか? 同世代のアーティストで刺激を受けたアーティストはいますか?

スチュアート:僕はパンクは好きではなかった。僕にとってパンクは粗野で子供じみた革命だったし、音楽への関心も感じられなかったから。


Photo by Andrew Tucker

ーYMG独自のスタイルはバンド結成時からヴィジョンとしてあったのでしょうか? それとも試行錯誤しながら生み出されたもの?

スチュアート:始めからヴィジョンとして持っていたものだ。でも、それを実際形にするためには色々と考えなければいけなかったけれどね。

ー『Colossal Youth』はポスト・パンクを代表するアルバムで今も影響を与え続けています。このアルバムのどんなところが人々を惹きつけるのだと思いますか?

スチュアート:素晴らしいアイディアがギュッと詰まっているからだと思う。すべてにおいて最大の価値が与えられた作品だからね。



ーYMG解散後、あなたはThe Gistをスタートさせます。YMGをポップに発展させたようなサウンドでしたが、The Gistであなたが目指したことは?

スチュアート:The Gistは、とにかく音楽を作り続けるために始めたんだ。



ーあなたがルイ・フィリップと共作した2枚のアルバム(『Huddle House』『The Devil Laughs』)が大好きです。彼との共同作業はいかがでした?

スチュアート:ありがとう。フィル・モクサム以降、僕が音楽的にビビッときた最初の人物がルイスだった。彼と僕の音楽性は正反対だけれど、それがうまく機能するんだ。彼は僕にとって寛容で素晴らしい友人の一人でもある。



ー最近の音楽シーンで気に入っているミュージシャン、作品があれば教えてください。

スチュアート:昔はお金がなくてレコードが買えなかったけど、今はほとんどの人々がシングルをストリームするようになった。でも、僕はフリート・フォクシーズのヴァイナルをいまだに買ってるよ。

ー今のあなたから見て、YMGの3人の若者達はどんな風に見えますか?

スチュアート:僕自身はソングライターとして成功することを強く目指していた。この意欲が、僕をエネルギッシュでクリエイティブで生意気な若者にしていたと思う。フィルはあまり一般的ではないやり方でベースにハマっていた。だからこそ、YMGのサウンドでベースが大きな役割を果たしていたんだ。サウンドの前面に出てきていたし、メロディックだったし、多様な素晴らしいサウンドを奏でていたからね。キックドラムのビートの単なるパートナーではなく、それ以上の存在だった。あと、アイディアに対して最終決定権も持っていたのもフィル。アリソンは昔も今も静かに覚悟をきめる。当時の彼女は、僕が書いたメロディーと歌詞を歌うために自分のエゴを捨てていたよ。

ーYMGのお気に入りの曲を1曲、教えてください。できれば、その理由も。

スチュアート:「N.I.T.A.」だな。この曲は個人的にものすごくノスタルジーを感じるんだ。

【関連記事】ヤング・マーブル・ジャイアンツを構成する5枚 アリソンが語るポストパンクという青春





ヤング・マーブル・ジャイアンツ
『Colossal Youth 40周年記念盤』
発売中

●国内盤2枚組CD
●ライナーノーツ対訳、歌詞対訳、日本版解説、1980年当時の冊子をモチーフとしたイラスト入りのスペシャル・ブックレットを封入
●Disc 2『Loose Ends And Sharp Cuts』にはEP/シングル/コンピレーションの楽曲を収録
●Tシャツ付セットも発売(数量限定)

詳細:https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=12163