2021年12月13日に東京・日本武道館で開催されたモーニング娘。‘21佐藤優樹の卒業コンサート。グループの単独公演は2年ぶり。新型コロナウイルス感染予防対策がとられた上で約6000人を動員し、ライブの模様はひかりTVにて生配信され、全国47都道府県の映画館と台湾、香港、計137スクリーンにて行なわれたライブビューイングには3万3000人を超える人数が参加した。異例とも言える状況の中で、メンバーの小田さくらは何を考え、何を感じたのだろうか。

【撮り下ろし写真を見る】モーニング娘。‘21の小田さくら

—武道館コンサート、今振り返ってみて率直な感想は?

小田:当日気にしなきゃいけないことがすごく多かったので、まずはちゃんとできたな、よしよし、っていうのが最初の手応えです。1ツアー分頭に入れるのがとにかく久しぶりで、1ツアー分の動きを覚えるってどうやってたんだろう?っていうのに加えて、今回のステージ形状がセンターステージで、そこに3段階の段差があり、それを1階・2階・3階って呼び分けていたんです。更にそこから四方にステージがA・B・C・Dと延びていて、計5つのステージ全てで場位置を覚えるのがとにかく大変でした。リハーサルの時はメンバーみんな切羽詰まっていたんですけど、私はやってみると何も困ることなく、意外と能力は落ちてないなって。ちょっとずつ間違えて覚えるパターンもあるんですけど、自分はまず不安を感じないように努力したというか。あと場位置を書いた歌詞カードを見ながら動くこともできるんですけど、手放すって決めて覚えると早く頭に入るんです。そうやって追い込みながらリハーサルをやりました。いかに早く場位置を頭に入れて歌詞カードを手放すかに集中して、不安を感じないためにどうやって挑めばいいのかってところから頑張りました。

その結果、意外と大丈夫でした。当日のあるあるとして楽しくなっちゃったとか、お客さんが見てる分表情とか、いつもより気にすることが増えたせいでポーンと飛ぶことがあるんですけど、そういうことが起きることもわかっていたので、リハーサルから表情もしっかり作ってたし、やることも決めていたので。今回は佐藤優樹さんの卒業公演で、佐藤さんはフィーリングで動く方なんですけど、それとは逆で私は割と、決めて決めて計算し切ったものを出せたかなって感じです。本番はできてるできてるって思いながら、リハーサルでは笑ってなかったところで笑ってたりすることもあったんですけど、やっぱり自分が頭の中で決めていったものを出せてよかったなぁって、それが楽しかったなって思います。

—成果を出すためには準備が大事だと。

小田:はい。リハーサルでは鏡の前で一人で表情を作ってみたり、その時は恥ずかしいですけど、そうやっていたものが今になって「あの瞬間の小田ちゃんがいい」とか言っていただくのを聞くと、やってよかったなって思います。私はぶっつけ本番じゃできない人なので、練習した甲斐があったなと

ー自分のマインドをどう整えて本番まで持っていったんですか?

小田:そもそもこの2年間の沸々としたものが大きくあったんです。ハロー!プロジェクトで、OCHA NORMAはデビューを控えているところですけど、それ以外の5グループが活動している中で、なぜうちだけが2年間単独ライブがなかったのかすごくモヤモヤしていて。Juice=Juiceはその間に武道館と横アリのステージに立って、アンジュルムは2回武道館をやって、BEYOOOOONDSは舞台を2つやったし、フェスにも出てた。で、つばきファクトリーも武道館に行って……っていう経過を見てる中で、なんで私たちだけ何にもできないんだ?って気持ちをずっと持ってたんです。つんく♂さんの歌詞でもよくある、悔しいとか羨ましいとか、そういう嫉妬心が今回のコンサートのバネになってました。

で、2年待ったからには、モーニング娘。が一番凄いんだと思わせるのが当然だと思っていて。2年待たなくても、モーニング娘。がハロー!プロジェクトで一番だと思っているし、そうでなきゃいけないと思っていますし、私はやっぱりハローの中でモーニング娘。が一番好き。他のグループも全部好きだけど、モーニング娘。がやっぱりカッコいいなって思うので、それを見せられればいいって信じてきました。それができるメンバーだし、この2年の間にみんなめちゃめちゃ成長したってことも信じているから、特に不安はなかったです。モーニング娘。はゼロから自分たちで築いてきた看板じゃないって言われることもわかってますし、でもそれを背負ってキープしていくことのありがたみを感じ続けること、だからこそ一番になる事が当然だってことも、当たり前のように思い続けて、リハーサルしてました。

—モーニング娘。‘21推しとしては、今の小田さんの言葉は、モーニング娘。を推しててよかった、最高!という気持ちになりました。小田さんのそういう考え方って後輩たちにも伝えたりするんですか?

小田:私がそう思ってることは多分みんな知ってると思うんですけど、私から強要はしないです。そう思いなさいって言ったこともないですし、それぞれ思ってることが違うからグループだと思うので。私はみんなのことを勝手に信じているだけで、みんなに、私の期待に応えて欲しいとは思ってないです。各々、自分のペースで頑張って欲しい。そこで不安を感じている子はもちろんいますし、他のグループの誰々ちゃんの方がカッコいいって思ってる人はいっぱいいると思いますし、私ももちろん、他のグループの一人ひとり
と戦って全員に勝てるかって言われたらそうは思わないですけど、そうじゃなく、私の感覚として当たり前にモーニング娘。が一番カッコいいって感覚が強くあるので。でもみんなはみんなで、不安だからこそいずれ乗り越えるでしょうし、いま私が、こう思えばラクだよとか、大丈夫だからそんなに心配しなくていいよとか言うものでもないのかなって。不安な気持ちも大事なのかなとは思ってるので。

でも今回は先生とかマネージャーさんからもそういう話がありました。モーニング娘。を一番にしたい人たちがいっぱいいる。そういう人たちに支えられてやっているリハーサルだからね、って。モーニング娘。‘21全員が、久しぶりに長時間みんなで集まったから楽しくなっちゃって、リハの雰囲気がふわっとしたタイミングがあったんです。その時にそういう話をされて。それを聞いて私のようにうれしいって思った人もいれば、そういう人がいるんだ、ちゃんとしなきゃってドキッとした人もいるでしょうし、そんなことないんだけどそれをプレッシャーに感じた人も多分いると思います。けど各々の気持ちがあるから、14人がいる意味があるなぁと思ってます。


各々が持つ責任感とか正義

—今回のリハーサル全体を通してメンバーの様子をどう見てました?

小田:最近のモーニング娘。は、みんなで作っていく雰囲気があります。後輩がつまずいていたら、先輩がさっと教える。私はリハ期間中、一回もいっぱいいっぱいにならなかったんですけど、「この子が?」っていう子が思い詰めていたり、弱っていたりするのを見て、いつもとは違うコンサートを作ろうとしてるんだなってすごく感じました。私はハッピー野郎なので(笑)、毎日メンバーと集まれてうれしいと思ってました。でも他の子は自分の実力不足をリハーサル中に感じたり、身体を痛めて辛かったりしたこともあって。私は(身体が)痛くなった時に、痛くなったから本番ちゃんとできるようにと考えるんですけど、それ自体が悔しくなっちゃう子もいるので。だからみんな各々の責任感とか正義があるんだなとあらためて感じました。この2年の間で、みんな変わったなってすごく感じます。

—成長の跡が。

小田:みんな精神的にめちゃめちゃ大人になってますね。実力の成長云々は、それはそれとして、人として内側の成長を感じました。一番感じたのは、ちぇる(野中美希)ちゃんが同じところを何度も練習してた時です。時間さえあればずっと同じパートだけを歌ってて、これまでだったらそういう時って誰かが一緒に口ずさんだり、話しかけたりしてたんですけど、そういうのが一切なくて本人の気持ちをみんなが優先してたんです。

—いい話ですね。でも確かに、2年間っていう時間を考えたら、もちろんストイックにやらなきゃいけない部分も大事だけど、楽しい気持ちも爆発しちゃいますよね。

小田:私は最初はしゃぎすぎたんで、すごく自覚してます(笑)。私、そんな中でも周りの声が冷静に聞けるんですけど、私の声で聞けない人もいるかもしれないわけだから気をつけようと思いました。

—その一方で、佐藤さんの卒業コンサートという特別な意味合いもあって。

小田:佐藤さんが卒業の雰囲気出されるのをすごく嫌がるし、本人もその雰囲気をずっと出さなかったこともあって、コンサート前はむしろみんな自分のことでいっぱいいっぱいだったと思います。佐藤さんって普段からフラーっていなくなる人で、今もそういう感じでいないだけなんじゃないかなって。またいないじゃん、そんな感覚に今でもなります。

ーコロナ禍の前の武道館の卒業コンサートと今回を比べてみると、形式的には全然違うものになりましたよね。

小田:違いましたね。全てがプレミアムすぎて。2年ぶりの単独コンサートということと、佐藤さんの卒業コンサートということの両方があって、ライブビューイングの動員数が過去最高だったみたいで、そういうところでガッて爪痕を残していくのも、佐藤さんの持ってるものだなって思います。そういうところはずっと羨ましかった部分です。特別なタイミングで何かをする人なので。それを狙ってできるし、狙わずともできる人。最後の最後までそういうところずるいなぁって、卒業まで貫いたなって思います。

—「卒業コンサートっぽい雰囲気」を出さないということを尊重して、セレモニーをやらなかったんですか? 

小田:そうです。佐藤さんの要望とコロナの状況も鑑みてセレモニーはやらなかったんです。セレモニーはしっかりやったら20分くらいかかってしまうので、それよりも多くの曲を歌いたいというのが本人のリクエストだったので、とにかく曲をひたすらやるってコンサートになりました。曲が多かったのでちょっと体力も心配でした。

—2年ぶりですからね。

小田:けど全然平気でした。みんなこの2年間で全然衰えてないんだなって思いました。モーニング娘。って感じがして、すごくいい時間でした。


Photo by Rika Tomomatsu



セットリストの意味

—セトリもすごくよかったなと思って。セトリにも佐藤さんの意見が反映されてたんですか?

小田:佐藤さんは一切口を出してないです。最後に自分のソロで歌う曲だけ選んだと思うんですけど、あとは決めてないって言ってました。

—最近の曲が中心で、しかもほとんどつんく♂さんの曲だし、佐藤さんにぴったりのセトリだなって。

小田:セトリに関して佐藤さんと私が同じ意見だったのが、「私のなんにもわかっちゃない」って曲が入ってなかったのだけ悲しかったです。佐藤さんがめちゃめちゃ歌ってる曲だし、ファンの方も最後に聴きたい曲の中に入ってたんじゃないかな、って思うので。『16th〜That‘s J-POP〜』のアルバム曲を披露できたのが本当によかったです。半年以上前にリリースしたアルバムなのにずっと振りがなくて、もったいないなと思っていたので。結果的にアルバムのオリジナル曲は全部やれましたし。

—アルバム曲をやる前に「初披露」って言ってましたけど、アルバムはだいぶ前に出てるのに言われてみて「確かに」と思いました。

小田:普段だったら1曲か2曲初披露で、そこに緊張するのに、今回は初披露がありすぎて緊張はなかったです。全部初めてみたいな感じだったので、逆に「I surrender 愛されど愛」「ロマンスに目覚める妄想女子の歌」「ナルシス カマってちゃん協奏曲第5番」とか、コンサート前半の既に披露している曲のブロックの方が不安というか。いろんなツアーでいろんなセットを踏んでるので、いくつものパターンが頭に入ってるんです。だから選択肢が多くて迷う時もあるんですけど、初披露曲は今のところ一つしか頭に入ってないから体が勝手に動く。リハーサルでは初披露曲の練習を優先しようってことで、コンサート前半曲の練習の回数が少なかったんです。いつもやってる曲とはいえ、2年やってないわけですから大変でした。



あとアンコールの「わがまま 気のまま 愛のジョーク」はいろんな人の意見が入って3回変わって、最終的にゲネの後にステージングが全部変わったので、あのフォーメーションで披露したのって、リハ、リハ、本番の3回だけだったんです。間違えちゃいけないっていうのと、冷静になってもいけないっていうので葛藤しながら(笑)。でもこの曲だけでなく、コンサート全編を通して誰も迷子にならず。それってめちゃめちゃ珍しいんですよ。みんなすごい頑張ったんだなと思います。偶然かもしれないですけど。私はリハーサルで一回迷子になりました。でも一回迷子になったらもう間違えない。リハーサルでは何人か迷子になっていたけど本番はならなかったので、さすがモーニング娘。だなって感じで、カッコいいです。



—本編最後 or アンコール最後は「わがまま 気のまま 愛のジョーク」かなって思ってたんです。佐藤さんのカッコよさが一番よく出てる曲かなと思うので。でもその後に「笑顔の君は太陽さ」で感動的に終わるとはまったく予想してませんでした。でもそれもすごく佐藤さんっぽいですよね。

小田: そうですよね。今は「まーちゃんの曲だ」って多くの人に思ってもらえてますが、モーニング娘。としてもどんどん歌っていきたい曲です。「笑顔の君は太陽さ」は佐藤優樹さんそのものみたいな曲だけど、モーニング娘。にとっても本当に大事な曲で。‘14を経験しているメンバーからしたら歌詞の内容もそうですし、振り付けが大変だったこともありますし、そもそも心に残っている曲なんです。





幻の「ほまめいタイム」

—道重(さゆみ)さんもブログに書いてましたけど、単独コンサートの時のモーニング娘。のメドレーはほんと最高ですよね。久々にやってみてどうでしたか?

小田:いいですよね。つんく♂さん曲のディレクターさんがいらっしゃるんですけど、ハロー!プロジェクトのコンサートで関わってるのはモーニング娘。だけなんです。その方が(メドレーを)作ってくださるんですけど、やっぱりカッコいいし、ありがたいことだなって気づきました。このコロナ禍の2年間、ご一緒できる機会がなかったので。MOMM(「モーニング娘。‘20コンサートツアー春 〜MOMM〜 」 ※新型コロナの影響で全公演中止となった)のメドレーを今回ベースにしていて、曲と曲の繋ぎを少し変えたりしてるんです。MOMMのメドレーの中に、岡村ほまれちゃんと山﨑愛生ちゃんのモーニング娘。の末っ子の2人がすごくかわいいシーンがあったんです。短い時間なんですけど、“ほまめいタイム“があって。実は武道館の時にそのシーンの音も使われていて、確かに武道館のメドレーはめちゃめちゃカッコよかったです。ただもう一つあるという(笑)。それも早く見せたいです。いつか見せられるのかなぁ。

—今回、メドレーの最後が「愛の軍団」だったのもカッコよかった。

小田:しかも「愛の軍団」の構成はツーコーラスだったんですよ。これまでのメドレーではワンコーラスが多かったので、ツーコーラスは久々でした。鞘師(里保)さんパートの歌割りは私が担当になったのですが、今回ツーコーラス目の鞘師さんパートに佐藤さんが入ったんですよ。多分しばらくツーコーラスはやらないと思うんですけど、できてよかったし、道重さん以外と歌ったことがなかったと思うので、ここ道重さんと2人パートだったなとか思いながら歌って、ちょっと切ない気持ちになりました。また1人卒業してしまうなって。



—単独コンサートにはメドレーがあるのはお馴染みだったから、ファンも2年ぶりに見れてうれしかったと思います。

小田:やっぱりモーニング娘。のコンサートにはこれがあったなって、メンバーもファンの方も改めて感じたんじゃないかと思います。

—最新シングル『Teenage Solution/よしよししてほしいの/ビートの惑星』の曲も披露してましたけど、時代とともに音楽性も変わってきてますよね。EDMっぽさとは異なる奥行きが出てきた気がします。

小田:「よしよししてほしいの」のイントロも懐かしいけど新鮮というか、また新しいことしてるなって思います。「One・Two・Three」や「ワクテカ Take a chance」は、今リリースしても今っぽい曲だなって感じると思うんですけど、2012年に出してるので。当時は「これは歌なのか」みたいに言われたりもしましたし、恐れずに新しいことを次々とやるつんく♂さんの精神こそが、モーニング娘。なんだなと。だから、こういう曲をいただくと私たちも技量をもっと上げなきゃいけないんだなって、背中を押されます。逆に「Teenage Solution」は古き良きハロプロって感じがして、ベリーズ(Berryz工房)さんとか、6人のスマイレージさんの感じもあって、モーニング娘。にしては新鮮でした。







つんく♂さんの歌詞の読み解き方

—つんく♂さんの曲ではない「ビートの惑星」も武道館で聴いてあらためていいなと感じました。モーニング娘。の新しい一面が出ているなと。

小田:タイトルに「ビート」って入ってますし、モーニング娘。らしいリズムが大事な曲を作ってくださったんだなって思います。武道館でやってみてライブ映えするなと感じました。私はこの曲をレコーディングした時、ほどほどに裏声と地声を行ったり来たりして、ちょっとだけムーディな歌い方で録ったんですけど、ライブだとパーンって地声が出たんです。だから、自然とスイッチが入る曲というか。テレビの歌番組とかじゃなくて、ライブでやった方が良さが活きる気がしました。大きな会場で人前で歌いたい一曲です。



—「Teenage Solution」「よしよししてほしいの」「ビートの惑星」の中だと、小田さん的に特にチャレンジングだった曲はどれですか?

小田:「よしよししてほしいの」が歌唱的にも難しいし、自分の中で自分の実力を思い知らされる曲でした。特に歌詞を噛み砕くのが大変で。「よしよししてほしいの」って、女の子が男の子に言ってるわけじゃない、そもそも恋愛の曲じゃないって気がつくまでに時間がかかったんです。最初はカップルで、彼女が彼氏に言ってるんだろうと思ってました。でもこれは恋愛の歌じゃなくて人間の歌なんだなって気づいてからは、歌詞の内容もすごく理解できたんです。男の人の目線でも、自分を評価してくれない上司とか、うまいこと出世していく同僚とか、そういう人を思い浮かべて聴いてもらうと、グッと来るかもしれません。そのことに気づいたのは、ミュージックビデオも全部撮り終わった後のことでした。だから、ミュージックビデオではこの曲に合った表情をしていないと思うと、本当は撮り直したいくらいです(笑)。

—(笑)パフォーマンス面だけじゃなく、歌詞も自分の中で「これだ!」って感覚になるまでに時間がかかったりするんですね。

小田:ありますね。ここ1年くらいで、やっとつんく♂さんの歌詞の読み解き方がわかってきた感じがします。「恋愛Destiny〜本音を論じたい〜」もすごく深いこと言ってるのに、曲の楽しさばっかりに気をとられてたなと。熱く苦しい歌なのに、曲が明るいのでそっちに引っ張られてて、佐藤さんの卒業の武道館で歌って初めて「あ、こういう曲なんだ」ってわかる。だからまだまだだなって思います。今、10年目にしてやっと私はそこに行き着いたんだなって感じがして、そういう意味でも、つんく♂さんの最近の歌詞は特に難しいです。昔の曲の方がもうちょっとわかりやすかった気がします。つんく♂さんってメンバーの年齢に合った曲を書いてくださるので、最近メンバーが大人になってきたから、歌詞も難しくなってきたのかなって感じてますね。



「笑顔の君が太陽さ」とかは、中学生にもわかりやすい言葉だったんですけど、私たちの年齢が上がって、本能的なところに語りかける歌詞が増えてきて。あたかもその話はしてないかのようにその話をしてるみたいな感じで、難しいです。「青春Night」と「人生Blues」は同じシングルで出したんですけど、「青春Night」の曲調はファンクでめちゃめちゃ明るいけど、泣き腫らしているような子の歌で、「人生Blues」の方がエスニックで暗いんですけど、前へ前へってメッセージの歌で、曲調と歌詞の内容が逆なんですよね。「Do it! Now」って曲も、恋愛の最高潮にハッピーな瞬間の歌なのにクールなR&Bって感じで。つんく♂さんの歌ではあるあるなんですかね。







—「本能的なところに語りかける歌詞」っていうのは、ブログに小田さん書いてましたけど、「みんな頑張ってて言いたいけど言えないことをモーニング娘。が代弁したり」「モーニング娘。はわかってるよ!って寄り添えるようなパフォーマンスがしたい」っていう想いと少しリンクしますよね。

小田:「よしよししてほしいの」は歌詞を理解してから聴くと涙が出てきました。私は特に“問題児扱いするじゃん“のフレーズが悲しく感じて。集団の中で一人でいることで場を乱してたり、チャンスを逃してたりするのかもしれないけど、それは自分が醒めてるってこととは違うというか。私もよくあるんです。私は熱い考え方をするタイプだし、人の心とか、平和とか、考えてるテーマみたいなものが大きいから、そういう本音を話すと、周りに引かれることもある。佐藤さんと私の歌でもあるんですけど、多分佐藤さんも、自分には音楽がこう聞こえるんだ、って本音を周りに話した時に、「変わってるね」とか言われたりすることがあると思うんです。

「問題児扱いするじゃん」っていうのは怒ってる言い方だと思ってたんですよ。でも本当は落ち込んでるだなと。「じゃん」って言葉が、女の子の悲しい口調に聞こえて。そこに気づくまでが大変だったけど、気づいてからはすごく腑に落ちた。まあ、佐藤さんは本当に問題児的なところがあるから難しいんですけど(笑)。でも私も、そういう、人とはちょっと違った考え方とか、夢物語的なことを本気でやろうとしてたりすると、そうだねそうだね、とか、本当にそんなこと思ってる人いるんだ、みたいに扱われたりすることがあって。「問題児扱いするじゃん……」って思ったことはないけど、自分の話なんだなぁと。

ーなるほど。

小田:2番の歌詞で“本音を話すと/なんかその後ぐったり/脱力感が残る“ってあって、その「脱力感」ってワードにも共感しました。いい本音だろうが悪い本音だろうが、(本音を)話した後って、言ってよかったのかなとか、今の話ってするべきだったのかなってぐったりする感じがあるんです。「この曲を聴いてると涙が出てくる」とか「悲しくなるけど、元気が出る」とか、ミュージックビデオが公開されて、YouTubeのコメント欄にいろんな感想を書いてるファンの方がたくさんいて、私よりこの人たちの方がつんく♂さんの曲を深く聴いてるなと痛感しました。私はちゃんと(歌詞を)理解していない状態でビデオを撮られているのに、先にそこまで辿り着いてるファンの方がいるので、恐れ多いですね、本当に。まだまだだなって感じです。


Photo by Rika Tomomatsu



「小田ちゃんにしては」の呪縛

—佐藤さんが卒業した今、小田さん目線で2022年からのモーニング娘。‘22をどうしていきたいと考えていますか?

小田:佐藤さんがいたときのパワーをキープしようとするのではなく新しいものをやっていきたいと思ってます。確かに佐藤さんは支持率も高くて、一番注目されていたメンバーと言ってもいいと思うんですけど、それでもみんな前向きなのと、ここ最近のメンバーの音楽に対する姿勢が変わってきたことが今後プラスになっていくんじゃないかなと思います。音楽に興味のある子が多いので、そういうところを出していきたいです。EDMとは?みたいな時期に比べると、これはシャッフルってリズムなんだな、とかすぐに共有できる。そういうのを理解するだけで曲に馴染むと思うんです。声も楽器の一つだと思うので、曲がキュッとまとまりやすいというか、一曲一曲のクオリティをまずは上げていきたいです。

「アイドルだけれども、音楽」ってつんく♂さんがずっと言ってきていることを、今のメンバーなら立ち向かえる気がするんです。ダンスも、石田(亜佑美)さんと(加賀)楓とちぃちゃん(森戸知沙希)は、新しい知識や経験を増やそうと頑張ってる最中なので。でもプロ集団になりすぎて、モーニング娘。の泥臭さとか青春っぽさが抜けるのは嫌なので、普通の女の子が必死に足掻いてる感じも残したいとは思います。2年間みんな沸々としていたので、こっからは勢いも上がる一方な気がしてます。けど油断はせずに。


13人編成のモーニング娘。‘21:前列左から譜久村聖(リーダー)、牧野真莉愛、石田亜佑美(サブリーダー)、北川莉央、小田さくら、羽賀朱音、山﨑愛生、後列左から生田衣梨奈(サブリーダー)、加賀楓、岡村ほまれ、野中美希、森戸知沙希、横山玲奈

—小田さん自身のコンディションはどうですか? 2021年は喉の状態が不調で(「機能性発声障害」と診断されたことを8月に公表)、歌唱をセーブしてステージに立っていた時期もありましたが。

小田:声が出づらいということを公表したことで、ちょっと安心したところもあって。私は「小田ちゃんにしては」みたいに言われるのが好きじゃなくて、自分に劣るって一番嫌じゃないですか。だから「小田ちゃんにしてはよくなかった」っていうふうに言われなくなっただけで、私的には心の余裕ができたんです。その間にボイストレーニングも行きましたし、歌い方もいろいろ考えました。で、こないだの武道館では私を好きな人に満足していただけるパフォーマンスができたと思ってます。今のところ、期待以下だったってことはなかったつもりです。正直この1年は、“小田さくら“本来のレベルまで追いついていないステージもあったりしたんですけど、武道館はすごく小田さくらっぽかったなって思います。ここからさらに整えて、崩さないようにしていきたいです。

—喉に関しては、ボイトレに通ったりしてうまく向き合えるようになりましたか?

小田:「小田ちゃんにしては」っていうのが好きじゃなかったのと同じように、私が自分に対して期待していたところもあったと思います。私と“小田さくら“って別のところにあるっていうか、私もアイドル・小田さくらには夢を見ているので、その人が崩れていくのが嫌だったんです。でもそれは自分のせいであって、私しか解決できないのに、こんがらがってしまって。常に120%で歌ってるというイメージを皆さん持ってると思うんですけど、100%で満足されない感じがちょっと理不尽じゃないかって勝手に思いこんでしまったんです。普通は100%で褒められるのに……と思いましたけど、私がこの9年間、120%でやってきたということを認めてもらっていることの裏返しでもあるから、じゃあもうその上を目指すしかないと思って踏ん張りました。

9年間、失速しないってめちゃめちゃ難しいことなんです。でも「よしよししてほしいの」の歌詞が解読できるようになってきたとか、音楽の知識が増えてきたとか、これまでできなかったことが今になってできるようになってきた。それって多分まだできるってことなのかなって思いつつ、また期待しすぎるとそれに及ばない自分に嫌になって、ということになりかねないので、バランスはとりながら。自分に期待し続けるのも私のよさだと思うんです。ボイストレーニングも私の力ではなくて、先生に助けてもらって乗り越えたものだと思うので、そういうふうに人の力をうまく借りながら頑張っていきたいです。メンバーのこともすごく好きですし、メンバーと周りの人に支えてもらいながら、でも自分でやる前提で、ちょっと助けてもらおうくらいの感じでできたらなって思います。

—そういう話を聞いてると、フィジカルとメンタルって大事なんだなって思います。それぞれ支え合ってベストな状態に持って行くというか。

小田:そうなんですよ。多分下手になったわけじゃなくて、失速した感じが嫌だったんだと思うんです。でも確かに年齢を重ねて、出せる音域が変わったりすることもあって、本当は前よりできることが増えてるのに、そこを見れなくなったんですよね。できるようになった部分じゃなくて、できない部分ばかり目立つようになってしまったというか。今はそのへんがしっかり見られるようになりました。

—最後に、武道館のMCで言ってた髪型の件なんですけど……(「2年前の単独コンサートから髪にハサミを入れていない。(伸びた)髪の長さは私たちと皆さんが沸々とした時間を表している」といった内容の話)。

小田:あ、髪の毛、違いますよ〜(笑)。あれ、なんか私が執念深い女みたいな(笑)。この2年間わざと伸ばしてたわけじゃなく、5cmずつとか、痛む分はちゃんと切ってるんです。私、2年前に毛先を紫にしたんですね。ただ、紫ってナチュラルなものに似合わないので、例えば写真集を出すとか、他のメンバーとの髪型のバランスで「小田、ちょっと紫やめて欲しいんだけど」って言われた時のために、いつでも切り落とそうとは思っていて。そしたらなかなかその機会が来ず、ちょうどそれがコロナ禍の2年間だった。だからこの髪型が結果的にその時間を表すことになったなって。で、私も自分の髪を鏡で見て、うわぁ、2年って長いんだなって感じたりする……っていう話をしたら、この2年、単独公演ができるまで意地でも髪切らなかった人みたいになっちゃって(笑)。もし意地でも2年切らなかったら、多分あと15cm長いんで、お尻が隠れるくらい。まぁ確かに言葉が足りてなかったんですけど、髪に念を込めてたら怖いじゃないですか(笑)。でも私ってそういうことしそうですよね。それはすごくわかります。本当はブログとかに書いてもよかったんですけど、訂正するようなことでもないし、そういうストーリーだったらロマンチックでいいかなと思って。

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Photo by Rika Tomomatsu

<INFORMATION>


『Teenage Solution/よしよししてほしいの/ビートの惑星』
モーニング娘。‘21
zetima
発売中

<Hello! Project 2022 Winter 〜LOVE & PEACE〜>
1/2(日)    中野サンプラザ (東京)
1/3(月)    中野サンプラザ (東京)
1/4(火)    中野サンプラザ (東京)
1/8(土)    中野サンプラザ (東京)
1/9(日)    中野サンプラザ (東京)
1/15(土)    上野学園ホール (広島)
1/22(土)    日本特殊陶業市民会館 フォレストホール (愛知)
1/23(日)    日本特殊陶業市民会館 フォレストホール (愛知)
1/29(土)    オリックス劇場 (大阪)
1/30(日)    オリックス劇場 (大阪)
2/5(土)    中野サンプラザ (東京)
2/6(日)    中野サンプラザ (東京)
2/11(金・祝)    仙台サンプラザホール (宮城)
2/19(土)    札幌文化芸術劇場 hitaru (北海道)
2/26(土)    福岡国際会議場 メインホール (福岡)
2/27(日)    福岡国際会議場 メインホール (福岡)

詳細ページ: 
http://www.helloproject.com/event/detail/09f68553ab68f4e7a8b3f2dd5876ab2024f3 d852/