今、チェックしておきたい次世代シーンの主役を集結させる「ツタロックDIG」が、2022年5月29日、「ツタロック DIG LIVE vol.9 -OSAKA-」として大阪で開催された。

会場は心斎橋BIGCAT。2021年11月にTSUTAYA O-EASTで過去最大規模で行われた「ツタロックDIG LIVE Vol.8」を経て、初めての大阪開催となる。

関連記事:ツタロックDIG LIVE Vol.10 開催決定

出演者はammo、Ochunism、ケプラ、ドラマストア、ねぐせ。、ハク。、 pachae、ヤユヨ、ユアネス(50音順)の9組。BIGCATは関西のライブハウスで中規模のハコだが、関西で活動をしている若手バンドにとっては、次のステップに進む際の登竜門的な存在である。「BIGCATは憧れのハコ」と口を揃える若手バンドは多く、実際にこの日もBIGCATに立てた喜びを口にするバンドが散見された。

「ライブハウス・シーンが逼迫する中、少しでも多くの人とアーティストを繋げる大切な場所になることを目指している」という想いが込められた「ツタロックDIG」が大阪で実現したことは意義深いものだったと思う。大トリだったドラマストアの長谷川海(Vo.Gt.)が述べたMCに帰結するのではないだろうか。とにかく音楽愛に溢れた素晴らしい1日だった。今回はその模様をレポートしよう。

【写真gallery】「ツタロックDIG Vol.9」大阪公演



トップバッターは「murffin discs オーディション2020」の準グランプリアーティストにも選ばれたpachae。ところがライブ前夜、バンドの公式Twitterにて突如デカ(Dr.)の脱退が発表された。音山大亮(Vo.)は曲に入る前にそのことに触れ「急な報告になって本当にごめんなさい。ここからもpachaeは止まることなくやっていくつもりなのでよろしくお願いします」と全員で深々とお辞儀。この日はみっつー(Ba.)とカムラ(Dr.)をサポートに迎えた新体制でライブが行われた。ファンにとってはバンド創設メンバーの突然の脱退に戸惑いもあっただろう。しかし音山の指パッチンを合図に「エゴイスティック・レスキュー」からスタートしたライブは、ロック、ポップ、ファンク、歌謡曲などのジャンルをクロスオーバーしたキャッチーな楽曲たちの連発で、確実に客席を踊らせていった。曲の構成は個性的だが、耳に残るメロディや音山の歌声、自然に体を任せてしまうグルーヴには中毒性がある。バンバ(Gt)のギターソロが炸裂した「ムスカイ・ボリタンテス」や、さなえ(Key.)の高音がアンサンブルを生み出した「遣る方無いブルース」など演奏力の高さもしっかりと提示。唯一無二の世界観をカラフルに彩った。音山の実験的なMCを含め、まだまだ秘めた創造力と野心がありそうだ。未知数を感じたステージだった。


pachae(photo by 松本いづみ)

圧倒的な生命力とエネルギーを全身で解き放ったのは、東大阪発の3ピースバンド・ammo。リハから感じた3人の気合いは、爆発力を伴って演奏に集約された。1曲目の「未開封」から空気をビリビリ震わせるような疾走感と勢いで突っ込んでくる、その熱量は言わずもがな会場に伝わり、のっけから手が上がる。岡本優星(Vo.Gt.)の叫びにも似た歌声、北出大洋(Dr.)のパワフルで重量感のあるビート、川原創馬(Ba.Cho.)の支えるベース。川原が左足を軸に、くるんと片足を蹴り上げる仕草も癖になる。「寝た振りの君へ」につながる弾き語りでは「憧れ、BIGCAT歌ってる、俺らを、見てて」と岡本が力強く歌う。リアルな心情を叙情的に歌い上げ、しっかり会場を掌握した。MCで岡本は言った。「この目で今見たもの、それだけを信じてもらって大丈夫なんで」。潔いほどの現場主義。彼らは2021年、125本のライブを行った。単純計算で3日に1本。まるで「俺たちの生きる姿をその目で見て、その耳で聴いて、その体で示して」と叫んでいるようだ。「CAUTION」にある〈身体に閃光猛スピード走る衝動 奏でていたいんだ〉をそのまま体現するかのように豪速球でたたき込み、「生きて音楽を鳴らすバンドがここにいる」という証を刻みつけた最高のステージを見せてくれた。


ammo(photo by 松本いづみ)



対バンライブの醍醐味は、前の出番のバンドが良いライブをすると連鎖反応的に熱量が伝播してゆくところだと思う。続いてステージに立った名古屋の4ピースバンド・ねぐせ。も気合いを感じさせるライブで魅了した。彼らは2020年のコロナ禍に結成された。ルーツがMrs.GREEN APPLE、影響を受けたのがMr.ふぉるてやKALMAというから、本当に次世代バンドであることを実感する。なおと(Dr.)がパワフルにドラムを叩きこみ「BIGCATから宇宙へ!」とりょたち(Gt.Vo.)が高らかに叫ぶ。「片手にビール」からの丸い歌声と良質なメロディが会場を満たし、しょうと(Ba.)がクラップを煽るとあっという間に会場の後ろまでクラップが広がる。ツタロックに出るのが念願だったという彼らは、とにかく笑顔で楽しそうに演奏していた。その姿を見ているだけでこちらも幸せになってしまう。途中、りょたちのギターの弦が切れるトラブルもあったが、りょたちが戻るまで3人のセッションと観客のクラップで場をつなぎ、お互いの絆を確かめる瞬間が生まれたこともこの日のハイライト。自然に体が跳ねた新曲「グッドな音楽を」や、なおや(Gt.)のギターソロがバッチリ決まった「スーパー愛したい」などグッドメロディを連発し、客席を魅了した。コロナ禍で結成されたねぐせ。は観客が声を出せる状況でライブをしたことがない。これから声が出せるようになる日が来たのなら、どんどんパフォーマンスを更新してゆくのだろう。バンドというものの良さを存分に見せつけたライブだった。


ねぐせ。(photo by 松本いづみ)

続いては3月に行われた「ツタロックフェス2022」のO.A.もつとめたユアネス。事前インタビューで古閑翔平(Gt.Prog.)が「これからのユアネスの定番曲になるであろう」と答えていた「アミュレット」から音を奏でてゆく。曇りない一筋の強さを貫いて、会場の一番後ろまでくっきり届く黒川侑司(Vo.Gt.)の歌声は、一瞬でその場の空気を変える力を持つ。安定感がありつつもダイナミックな小野貴寛(Dr.)のドラム、主張しすぎないが確実にサウンドの厚みを担う田中雄大(Ba.)のベース、古閑の感情に触れるギターが作り出す重厚なアンサンブルが黒川の歌声を支える。さらに変拍子やアレンジでドラマティックに世界観を増幅させ、ピアノの旋律と歌詞が物語性を引き立てる。ユアネスの生音をくらったらもう釘付けになるしかない。『「私の最後の日」』での、髪の毛一本にまで染み渡るほどの黒川の限りなく高く響く歌声は、あまりに美しすぎて息が止まりそうになった。ラストの「籠の中に鳥」では古閑のギターソロが天井まで羽ばたき、世界観の美しさにただ虜になった。圧倒的な表現力と存在感を示し、すさまじい余韻を残してステージを去ったユアネス。いつまでも鳴り止まなかった拍手が何よりの証拠だろう。


ユアネス(photo by 松本いづみ)

折り返し地点で登場したのは、2019年に大阪で結成された「ハク。」。平均年齢19歳で十代才能発掘プロジェクト「十代白書2021」でもグランプリを獲得した実力派。「ワタシ」「ハルライト」といった爽やかでメロディアスなサウンドに、あい(Gt.Vo.)の透明感のある歌声が会場を満たしてゆく。なずな(Gt.)、カノ(Ba.Cho.)、まゆ(Dr.)が彼女の歌声を支える。軽やかな歌声とディレイのきいたギターがドリームポップ的な「ナイーブ女の子」、流れる水を連想させるたゆたうアンサンブルが心地良い「ame.」など、浮遊感のある軽やかでポップなロックで柔らかく会場を包んでいった。終始笑顔で朗らかに演奏する彼女たちのサウンドは丸くてまろやかで、ひだまりの花畑で駆けているようだった。「皆の1日が幸せなものになりますよーに!」との言葉から、ラストは「BLUE GIRL」でロックに締める。透明感があるだけではなく、曲によってシズル感や浮遊感を出すなど、細やかに変化するあいの歌い方には表現力の深さを見たし、カノのコーラスはそこにもうひとつ華を添えていた。インタビューで「どこか純粋さを感じるライブになるのではないか」とあいは語っていたが、佇まいや表情も含めてまさにピュアなパフォーマンスを見せてくれた。


ハク。(photo by 松本いづみ)

「関西出身のジャンル不特定6人組」と謳うOchunismは、揃いのツナギを着て登場。1曲目は「Mirror」。凪渡(Vo.)の高い歌声がグルーヴィに響き、イクミン(Dr.)の繰り出すリズムに思わず体が揺れる。ちゅーそん(Gt. )からkakeru(Ba.)のソロのカッコ良さに痺れ、Sampler okadaのサンプラーさばきに釘付けに。ソウルフルな「freefall」で熱量を上げ、たいち(Key.)の高音がアダルトな「rainy」でメロウに聴かせる。ジャンルレスを掲げる彼ららしく、ロックやR&B、HIPHOPなど様々な要素を織り込んだ楽曲を次々に繰り出し、BIGCATをダンスフロアに変えていった。MCでは凪渡が「ステップ踏んだり好きなように楽しんでくださいね。大阪のバンドですからBIGCATに立てて本当に嬉しいです」と述べる。後半はプチョヘンザと手拍子で会場の一体感を高めた「Mongoose」、EDMの要素が入ったダンスミュージック「shinsou」など、問答無用で客席を巻き込んでゆく。縦横無尽に駆け巡るサウンドの波に内から湧き出る情熱を刺激される。ラストは4月に配信リリースされた新曲「夢中」。彼らはこの曲でメジャーデビューした。楽曲の幅広さとOchunismワールドで客席を魅了したライブだった。


Ochunism(photo by 松本いづみ)



サウンドチェックから客席を盛り上げていたのは、女子大生バンドから社会人バンドになった4人組ポップスバンド・ヤユヨ。すーちゃん(Dr.Cho.)のカウントからリコ(Vo.Gt.)の鋭いボーカルとともに突き抜けた「いい日になりそう」から軽快にスタート。同時に、華やかさとヘルシーさがステージからパッと弾ける。間髪入れずに「futtou!!!!」でカラフルなサウンドを投下。リコはウェーブのかかったロングヘアを揺らして、天真爛漫かつキレのあるパフォーマンスで場を牽引する。はな(Ba.Cho.)がクラップを煽ると客席がひとつになった初期の楽曲「ユー!」を経て、MCではリコが笑顔で「BIGCATに出るのも初めてで楽しみにしてきました。Tポイントカードにあわせて黄色のパンツを履いてきたよ」と無邪気に話す。ツタロック本編出演の夢も口にして、キュートでポップな前半からカッコ良いゾーンの後半へ。ぺっぺ(Gt.Cho.)の歪んだギターがうなる「おとぎばなし」では、切なさも孕んだメロディと情緒的な歌声で、前半とのギャップを見せる。ヤユヨは男性性と女性性のバランスが良いバンドだなと思う。前進するパワーと同時に、女性ならではの柔らかさや逞しさも感じる。一番自信のある曲と、一番大切な曲と紹介された「あばよ、」「さよなら前夜」の2曲からは、潔さにも似た彼女たちの本気と覚悟が感じられた。性別や世代を超えて愛される魅力を全力で放っていたヤユヨ。ますます大きくなっていくだろう頼もしさを感じたライブだった。


ヤユヨ。(photo by 松本いづみ)

2022年3月に全員が高校を卒業したばかりの4ピースバンド・ケプラは、THE 2の「ケプラー」をSEに登場。「初めましてケプラです! 今日はよろしくお願いします!」と柳澤律希(Vo.Gt.)が元気に挨拶し、1曲目の「春が過ぎたら」で爽やかに音を跳ねさせてゆく。彼らは2020年9月に高校の同級生で結成、同年11月よりライブ活動を開始した、コロナ禍生まれのバンド。2021年9月から受験のためライブ活動を休止するも配信シングルを2枚立て続けにリリースするなどバンドの動きは止まることはなく、卒業後の5月にライブ活動を再開した。短くポップな新曲「グランピー」、4人全員のカウントから始まった「くしゃみ」、高校生活のストレートな感情を歌った「YOUTH」と立て続けにアッパーな楽曲を投下し、フロアの熱をぐんぐん上げてゆく。けんた(Gt.)のギターリフが印象的な「これからのこと」はTikTokでバズった楽曲。柳澤の弾き語りから始まる「おねだり」では、ハヤト(Dr.)とかず(Ba.)のリズム隊がしっかりとメロディを支える。SNS世代でありながら、どこか懐かしさも感じさせるメロディーライン。バランスの良い演奏力はもちろんのこと、ソングライティング能力の高さを感じさせる。ラスト2曲はグッドメロディーで爽快感を滲ませた新曲「うわごと」、弾けるようなロックチューン「16」で一気に駆け抜けた。フレッシュな彼らだからこそ鳴らせる、等身大の青春ロックを堂々と響かせた4人だった。


ケプラ(photo by 松本いづみ)



イベントのトリをつとめたのは大阪出身のドラマストア。のっけからメロディアスかつポップなサウンドを繰り出し、会場の空気を華やかに彩る。「君を主人公にする音楽」というコンセプトで、正統派ポップバンドとして活動する彼ら。長谷川海(Vo,Gt)のクリアな歌声がグッドメロディに乗って響いてくる。高橋悠真(Ba)と鳥山昂(Gt,Key)がステージ前方に設置されたお立ち台に乗り、笑顔で観客を煽る。松本和也(Dr,Cho)のコーラスワークも素晴らしい。長丁場ながらもしっかり手を挙げ、クラップで一体感をみせる観客に「今日序盤からいるよって方いらっしゃいますか?」と長谷川が聞くと結構な数の手が上がり、「俺大阪のこういうとこ好きやねんな〜!」と驚きつつも笑顔ではしゃぐ。それは疲れも吹っ飛ぶようなドラマストアのライブに引っ張られているからに他ならないのだが、残ってくれてありがとうと感謝を述べ「総括して楽しかったという気持ちが溢れるよう、僕らも全力で歌います。全力で受け取って帰ってください」とトリの役目を背負う意気込みを見せた。「knock you , knock me」までの本編8曲で楽曲の質と演奏力の高さはもちろん、エンターテイメント性も兼ね備えた実力派バンドであることを堂々と突き立てた。


ドラマストア(photo by 松本いづみ)

MCで長谷川は「イベント担当の方がわざわざ楽屋に挨拶に来てくださったんですよね。受付の方もにこやかにお願いします!と言ってくださったんです」と話す。「出るステージに優劣をつけるわけじゃないですけど、そういう人たちが大事にしているイベントだから、皆はもちろんスタッフの方にも届いたらいいなという想いで歌うことができています」とスタッフを労った。これはきっと運営側のアーティストへのリスペクトや「良い音楽と出会ってほしい」という音楽への想いが表れていることの証明だろう。大切に育ててきたイベントだからこそのエピソードではないだろうか。大阪の観客は音楽への反応も素直。メンバーも「3日連続のライブ最終日だけど一番元気かも」と語っていたが、現場によって全ては変わる。生きた音楽なのだ。イベントを創り上げる人と音楽の力を強く感じることができた1日でもあった。

9時間にも及んだ大阪初開催の「ツタロックDIG LIVE」はこうして終了した。この日集結した9組は、これからの音楽シーンを引っ張っていく若き才能たち。それぞれの今後の活躍に期待したい。


<イベント情報>

「ツタロックDIG LIVE Vol.9 -OSAKA-」

2022年5月29日(日)大阪・心斎橋BIGCAT
【SET LIST】
pachae
1.エゴイスティック・レスキュー
2.ムスカイ・ボリタンテス
3.7
4.冥王星ガール
5.ウェルカムポップ!!!
6. 遣る方無いブルース

ammo
1.未開封
2.星とオレンジ
3.歌種
4.寝た振りの君へ
5.不気味ちゃん
6.CAUTION
7.これっきり

ねぐせ。
1.片手にビール
2.猫背と癖
3.最愛
4.グッドな音楽を
5.彩り
6.秋の終
7.スーパー愛したい

ユアネス
1.アミュレット
2.日照雨(そばえ)
3.Layer
4.躍動
5.「私の最後の日」
6.籠の中に鳥

ハク。
1.ワタシ
2.ハルライト
3.ナイーブ女の子
4.ame.
5.カランコエ
6.BLUE GIRL


Ochunism
1.Mirror
2.freefall
3.rainy
4.Mongoose
5.shinsou
6.glass
7.夢中

ヤユヨ
1.いい日になりそう
2.futtou!!!!
3.ユー!
4.おとぎばなし
5.メアリーちゃん
6.あばよ、
7.さよなら前夜

ケプラ
1.春が過ぎたら
2.グランピー
3.くしゃみ
4.YOUTH
5.これからのこと
6.おねだり
7.うわごと
8.16

ドラマストア
1.可愛い子にはトゲがある?
2.アンサイクル
3.ガールズルール
4.月と旅人
5.東京無理心中
6.花風
7.ラブソングはいらない
8.knock you , knock me
EN1.スイミー

「ツタロックDIG LIVE Vol.10」

2022年8月3日(水)渋谷・Spotify O-EAST
料金:4900円(全自由・入場整理番号付・ドリンク別・税込)
時間:OPEN 14:30 / START 15:00 / CLOSE 21:00 ※変更可能性あり
主催・企画:CCCミュージックラボ株式会社
制作」株式会社シブヤテレビジョン
協力:Rolling Stone Japan
最速先行受付(先着)【6月10日18時〜6月19日23時59分】
https://eplus.jp/tsutarock-diglive-10/
※ご購入の際 は、専用URLで詳細をご確認ください。
※出演者の変更・キャンセルに伴う払い戻しは一切いたしません。
※チケットの譲渡、転売は固くお断りいたします。チケットを転売、
あるいは転売目的で入手することは条例により違法な行為となる場合があります。ご注意ください。