日本の音楽の礎となったアーティストに毎月1組ずつスポットを当て、本人や当時の関係者から深く掘り下げた話を引き出していく。2022年5月の特集は「moonriders」。パート1はゲストに鈴木慶一、佐藤優介、澤部渡を迎え、11年振り新アルバム『It‘s the moooonriders』の前半全曲を語る。

田家秀樹:こんばんは。案内人・田家秀樹です。今流れているのはmoonridersの「monorail」。4月20日に発売となった新作アルバム「It‘s the moooonriders」の1曲目です。「J-POP LEGEND FORUM」J-POPの歴史の中の様々な歴史を改めて紐解いていこうという60分。伝説のアーティスト、伝説のアルバム、伝説のライブ、そして伝説のムーブメント。一つのテーマ、一人のアーティストを一ヶ月に渡って特集しようという、贅沢な時間の使い方をしています。

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2022年5月の特集は、moonriders。デビューが1976年。その前に1971年にデビューした前身「はちみつぱい」から数えると51年。現在のメンバーは、鈴木慶一さん、岡田徹さん、武川雅寛さん、鈴木博文さん、白井良明さん、夏秋文尚さんの6名です。それぞれがソロアーティスト、プロデューサー、作詞家、作曲家、演奏家として自立したメンバー。時代に流されずに、自分たちの音楽を追求する史上最強、趣味的職人バンドという風に言ってしまいましょうかね。日本のロックの生きた伝説であります。今月は新作アルバムを入り口に、彼らの歩みを辿ってみようという一ヶ月。今週と来週は11年ぶりの新作の全曲紹介。ゲストは5週間に渡って登場してもらう鈴木慶一さん、そして演奏と曲作りに加わったミュージシャン・佐藤優介さんと、澤部渡さん。1989年生まれと1987年生まれであります。こんばんは。よろしくお願いします。

鈴木 慶一、佐藤 優介、澤部 渡:こんばんは。よろしくお願いします。

田家:まずは11年ぶりのアルバム発売の、心境というのから伺いましょうか。

鈴木:11年間、休止してから色々なことをやっているわけで。ソロやバンド、そんなことがあるうちに、2013年にドラムのかしぶちさんが亡くなり、実に波乱万丈な11年だったと思います。作るきっかけは、何々周年。まあ、2021年が45周年。いわゆる、「火の玉ボーイ」を出してから45周年ということで、2020年くらいから制作しようかなと考え始めましたね。

田家:今回ゲストにお越しいただいているお二人は89年生まれと87年生まれで、moonridersのアルバムをユニット名にした、「カメラ=万年筆」をおやりになっていた。

鈴木:もうバンド名がトリビュートしてるね(笑)。

佐藤:ライダーズの1980年リリースのアルバムタイトルに由来して。

鈴木:スカートっていうアルバムタイトルはないかなあ(笑)。

佐藤:ただ歌詞には出てきます。

田家:澤部さんはスカートというソロプロジェクトもやってらっしゃって、佐藤さんとはそこでも一緒に。

澤部:そうですね。

田家:で、今回のアルバムは皆様でお作りになった訳でしょ?

鈴木:作り始める前にライブが結構沢山あったんですね。まず2020年に「カメラ=万年筆」の40周年記念ということで、無観客で再現ライブみたいなことをやったんですよ。それでまぁ様子見ようと。

田家:様子見(笑)。

鈴木:我々が三十の頃に作った曲が、七十でどうなるか様子見るということですね。その後もすぐ秋にライブをやって、さらにその後、去年のライヴで澤部くんにギターとコーラス、並びにリードボーカルを、佐藤くんにはキーボードとボーカルをやってもらってね。これは試したわけじゃないよ(笑)。それで非常に相性が良かったのとあと、我々の曲を我々より知っているんです。

田家:もはや忘れていることいっぱいあるでしょうからね。

鈴木:もうね、ありすぎ(笑)。

田家 :そうしたレコーディングの中で生まれたアルバムが、お2人にとってもどんなアルバムだったのかも、お聞きしていこうと思います。まずはアルバムの1曲目「monorail」。





田家:こういう始まりのアルバムはmoonridersでなければという感じがありますね。

鈴木:これを1曲目に持ってくるには勇気はいりましたよ。

田家:あ、やっぱりいりましたか。この深淵なピアノは佐藤さんなわけでしょ。

鈴木:でもこれピアノ2つ入っているよね。

佐藤:元のデモにも鈴木博文さんがご自宅の湾岸スタジオで演奏されたピアノが入っていて。

鈴木:4音しか使っていないでしょ?

佐藤:そうですね。繰り返しで。

鈴木:それに優介くんが、ピアノをダビングして。繰り返しと、それから逆回転。ビートルズが使い出した頃、いわゆる「Revolver」とかその辺のね。なんか鼻にツーーンとくるんだよね(笑)。あと、「Rain」のボーカルがそうだ! 鼻にツーーンと。あれがなんか心地良いんですよ。

田家:ボーカルは、慶一さん、武川さん、良明さん、博文さん、夏秋さん。岡田さんを除く全員。

鈴木:そうですね。この声の録り方は実は特殊で、鈴木博文が作ってきたピアノと詩を読んでるようなものがあって。読んでいるのか歌っているのかわからない中間ですね(笑)。それを聞きながら、5人が同時にこの詩をまた読むんですよ。その時に他人の声が聞こえないようにしようと。他人の声が聞こえちゃうとタイミングを考えちゃう。でも、これはエンジニアにとっては大変なんですよ。5人分のキュー・ボックスというヘッドホン用のコントローラーに他の人の声を送り込まないようにするんだから(笑)。で、白井良明はピアノの中にマイクを置いてくれって言って。それでピアノの中にマイクを置いて、ピアノに頭を突っ込んで、それからペダルを踏むと少しピアノが響くんですよ、ホワーーって。なのでそれを使いながら。

佐藤:へーじゃあもう同時にみんなで?

鈴木:そう、同時でね。それで聞いてみるとてんでバラバラで(笑)。でももう一回やるわけにはいかない。一回目の面白さ。一回聞いてしまったから、今度は合わせようという気が出てきてしまうのでこれがオッケーに。

田家:それは、どなたかがやろうと言われたんですか、それともみんなでそういう話になったんですか?

鈴木:あれは私が言ったのかなぁ。よく覚えてないけど。

田家:そういった始まりのアルバムでありますが、さてこの後どうなっていくでしょうか。





田家:流れているのは2曲目の「岸辺のダンス」です。

鈴木:これは岡田くんが作曲し、私が歌詞をつける予定だったのだけど、どうも思いつかなくて。もたもたしている間に鈴木博文が先に作ってしまったんですよ。しかもアレンジもしてきた。岡田くんのアレンジはもっとエレクトロニカなシンセサウンドだったんですけど、今回のアルバムでは岡田くんのシンセサウンド的なものがあまりないんです。「岸辺のダンス」は、その前にライブでやっていて。それが2021年の6月くらいかな。その時に鈴木博文のアレンジでタンゴにしようと。リハーサルでは、じゃあドラムはジェファーソン・エアプレインの「White Rabbit」にしようと言ってね。だから、岡田くんがアレンジをする前に我々でやってしまったんですよ(笑)。それで、非常に生々しいバンドサウンドになっているんです。

田家:佐藤さん、澤部さんのお二人はこの楽曲にどう思われたのですか?

佐藤:さっきの1曲目の「monorail」と、この2曲目の「岸辺のダンス」で、決して明るい幕開けのアルバムではないってことが分かると思うんですけど。

鈴木:暗いのは決して悪いことではないのだけど、このアルバムの特徴は歌い回しなんですよ。私、リードボーカル宣言してませんからね今回!

田家:はい、皆さんで歌ってる。ミュージシャンのクレジットに「RECORDING」という言葉が一曲に一人ずつ入ってますけど、これはレコーディングに対するある種の責任をということなのでしょうか?

鈴木:いや、これは簡単に言いますと、自宅で録音したということですね。

田家:あ〜なるほど。

鈴木:要するに、自分で録音してその音を楽曲に使っていると。例えば、ギターの白井良明は家で録ったから、レコーディングエンジニアになるわけですよ。あとエディティングというのもあって、誰かが弾いたフレーズを、家で編集することですね。

田家:この「岸辺のダンス」では、夏秋さんもレコーディングということになっています。

鈴木:夏秋くんは、何かを沢山被せたんだよね。これダビングしたいですってメーリングリストに来るんですよ。でももうそれは、家に帰ってコンピューターの中を見ないとわからないよね(笑)。

田家:この曲は、エロチックな曲だなぁと思ったんですよ(笑)。

鈴木:これタンゴというより、フラメンコ、タンゴメンコだね。コード進行がフラメンコなんですよ。ギターも途中パコ・デ・ルシアのようなのが入ってますね。

田家:この曲のエディティングは慶一さんであります。

鈴木:ある部分の、キーボードをエディットしたとかですよ。で、もう一個思い出したのが、歌にはAメロ、Bメロ、Cメロとかありますよね。このCの部分を岡田くんがどうしてもいれたいと言って、自分で録音して持ってきたんですね。

佐藤:後からなんですね!

鈴木:そうですね。だからそこにはめ込んで。

佐藤:確か6月のライブでは、そこがなかったんですよね?

鈴木:なかった。でも最終的にどうしても入れたいということで(笑)。歌詞も足しました。

田家:1曲目の「monorail」も、そして「岸辺のダンス」も博文さんの詩ですけど、やっぱりこの年代じゃないと書けないものがいっぱいあるのだろうなと思いましたね。

鈴木:「夜のランチは 舌と舌で」とかね。

田家:そこですよ、エロチックの真髄は(笑)。

鈴木:まぁ「monorail」もそうですけど、防波堤って言葉を使うのは珍しいねとか。普通なら大田区だったら堤防ですよ。防波堤は港区になりますね。はっぴいえんどの「風をあつめて」ですけどね。

田家:やっぱり(笑)。モノレールと路面電車の違いがあるっていうのも。

鈴木:そうそう。まぁモノレールは港区までいってるから、この話は破綻して終わりますが(笑)。

田家:そういう面白さも沢山あるというアルバムであります。





田家:アルバムの3曲目、「S.A.D」。作詞が慶一さんで、作曲が武川さん、夏秋さんと、佐藤優介さんであります。

佐藤:この曲では、武川さんから一緒に曲を作らないかと言って頂き、くじらさん(武川)の家に夏秋さんと一緒に行きまして……。

鈴木:でもあいつの家、録音する場所あるの?

佐藤:もう本当に、防音とか何もないですけど。

田家:ご自分が思春期の頃にカバーしていたバンドの曲を一緒に作るというのは、どういう感覚ですか?

佐藤:もちろん憧れもあるんですけど、どこかでアンタッチャブルな部分も実はあって、最初、そこのせめぎ合いがあったんですけど、でもやっぱり他の誰かがやるくらいならと。

田家:あ、他のやつにやらせたくないと。身も蓋もないことを聞いてしまいますけど(笑)、どこに一番惹かれてたんですか?

佐藤:それを説明しづらいところがmoonridersのいいところというか。そこの複数性ですかね。皆さんが曲を作るし、慶一さんもリーダーではないっていう。誰か一人絶対的なリーダーがいたら、その人の言うことだけ聞いていればいいじゃないですか。でもライダーズはそれとは全然違うバンドですよね。

鈴木:フロントに立つ人がいないってことかな。要するに、我々の音楽には、リーダーがいてそれで作っていくというヒエラルキーはないということですよ。並列に全員が並んでいて、どんな意見を言ってもいい。それが却下される場合もあるし、採用される場合もあるということです。

田家:なるほど。これはあの三週目のお話にもなるんですけど、76年当時“鈴木慶一とmoonriders“というバンド名だったのがすごく居心地が悪かったと。

鈴木:もうめちゃくちゃ悪い(笑)。

田家:でもそういう意味では、このアルバムは、これこそmoonridersと言える作り方になっているということですよね。

鈴木:作り方はね。だから結果的にはサウンドもそうなっているんですよ。それが今終わって確認できたなというアルバムです。

田家:なるほど。作っている時はそこまでは……。

鈴木:作っている時は本当にハイテンションになっているんでね。色々な事を同時に考えているでしょ、不安だし、プレッシャーはあるし、11年ぶりだし、かしぶちくんはいないし、ということを考えると、クオリティーを上げることしか考えない。それが何なのかというのを考えて提案すると、うるせぇなお前みたいな顔をされる時もあると(笑)。でも私も必死ですからね。良いものを作ろうと。

田家:その一端を担ったのが、お二人(佐藤 優介、澤部 渡)だったということですね。

鈴木:二人によって本当にクオリティーが上がったんです。

田家:なるほどねぇ。ホーンセクションが3人と、女性ボーカル、xiangyuさんが入っています。このxiangyuさんっていう方は?

鈴木:xiangyuさんとは、「ほとぼりメルトサウンズ」という映画で一週間ロケをやりまして。私が生まれて初めて長く出演した映画の主演がxiangyuさんだったんですよ。彼女は音楽もやってらしゃって、もの凄い子だなと思ってね。xiangyuさんの曲は、ラップと歌の割と中間のような面白いサウンドなんですよ。声も面白いしね。くじら(武川)が第二回目の声変わりをしたんですよ(笑)。ちょっと手術をして、声が低くなったのと、ハスキーになってしまって、この声を生かすにはどんな感じがいいかなぁと思っていたところで、xiangyuさんの曲を聴き、くじらの今の声を生かすには二人でユニゾンで歌うととてもいいだろうな、と思いました。

田家:あ〜なるほど。

鈴木:色々な曲でも低い声で語っていましてね。「岸辺のダンス」でも語ってますけどね。それを生かしたいのだけど、聞こえにくいところも当然出てくる。そこで女性のボーカルを入れることによって、更にブラッシュアップされるなと思って来て頂いたんですよ。

田家:「S.A.D」という言葉、テーマは、曲が上がってから考えられたんですか?

鈴木:そうです。このアルバムは珍しいことに、鈴木博文さんが最初に演説をかましたのですよ。曲と詩は一緒に出そう!と。私がかつてソロで曽我部恵一さんにプロデュースしてもらった時に、曽我部さんに「歌詞無いんですか?」って言われたことがあって(笑)。「後でよく無い?」って言ったら、「いや、今作って欲しい」ってことでその場で作ったけどね。

澤部:すごい(笑)!

鈴木:ソングライターっていうのは、本来そうなのだなと思います。長年そう思ってきましたが、最初のうちやっただけで、その後ずっとサボってました(笑)。だから21世紀に入ってからは、歌詞と曲はなるべく同時に。で、この曲は最初、曲だけ出来上がってきたんだよね。

佐藤:はい、そうですね。

鈴木:それで私に詩を書いてくれという、武川の意向で。この詩を書く時は、かしぶちくんだったら何使うかなぁって考えてね。リキュールとか私使わないですから。

田家:パフューム。

鈴木:そう、そういうのはね、かしぶちくんっぽくしてみたいなと思って。突然女が出てきて、靴を貸せって言ったり。言ってみれば、非常に不条理な映画のような。これはかしぶちくんを意識しました。





田家:4曲目です。「駄々こね桜、覚醒」。このタイトル、いいですね(笑)。どういうイメージで、このタイトルが出てきたんでしょう?

鈴木:この歌詞を見て、色々な部分でちょっと引っかかるところがあって、というかキーワードがたくさんあるなと思って。(歌詞を見て)朝露(あさか)って読めるでしょ? これ朝霞基地かなぁとか、色々な妄想を働かして。それで、見張らないでね、とかウヨウヨ、とかね。そうこうしているうちに、「アプレゲール躑躅」って言葉が出てきて。

田家:“つつじ“。これ辞書引きましたもの(笑)。

鈴木:これ最初ね、アピール躑躅だったの。アピール躑躅もいいけど、もっと変な名前がいいなと思って。

田家:戦後っぽく。

鈴木:そうそう! いわゆるカストリ雑誌みたいな。それで検索していたら、アプレゲールが出てきて、アプレゲールなんて久しぶりに見る言葉だなぁと思って(笑)。アプレゲールの意味はチャラチャラ反逆してるってことでしょ? あと、最後が駄々こね桜だ、で終わってたのよ。朝霞基地があるなら、この“桜“も“桜田門“という意味も出るなと思い付いてね。

佐藤:はぁ〜〜。

鈴木:こう言われると今わかるというね。そういうことをつい考えちゃうんですよ。

田家:で、取り締まるとか、取り締まらないっていうのも。

鈴木:そうそう! そういうのも後からまた足されていく訳ですよ。“桜田門“が浮かんだ瞬間に、じゃあ取り締まらないでとかにした方が良いんじゃないかってね。

田家:てことは覚醒っていう言葉も何か違う意味がありそうですね(笑)。

鈴木:いやぁそれはありませんよ(笑)。初めて言われた。ネタに使わせてもらうね(笑)。

田家:この曲では岡田さんは演奏で参加して、歌では加わってませんが、ボーカル、コーラスは岡田さん以外の全員でおやりになって。

鈴木:全員ですね。私で始まって、色々な人になっていくんだよね。それで、このギターのリフが印象的なんで、多分選曲会議で引っかかったんじゃないですか。

田家 :インパクトありますものね。歌詞カードでは、「塩分」が、“塩“ではなくて演出の“演“、鉄分の鉄が哲学の“哲“になっているのは、誤植ではないのですよね?

鈴木:いや私も誤植だと思って直そうと思ったんですけど違うみたいです。まぁいわゆる漢字を誤変換することによって、ダブルミーニングにするってことです。

田家:曲出しっていうのは、皆さん一曲ずつ持ってくる訳ではないのでしょ?

鈴木:そうそう。2020年に始めた頃は、1分くらいでいいよと、長いと聴くの面倒くさいから(笑)。それでライブがあったり、このコロナの状況があったりで、一旦ちょっとやめてしまって、翌年の2021年になって集めるようになるんですよ。

田家 :最終的には多数決なんですか?

鈴木:まぁそういう時もありました。で、今度のアルバムは、決まりそうもないということで、外部のオタクの二人に頼んだんですよ。" Geek High Quality " といって「GHQ」と読んでますけどね(笑)。「オタク高品質」。まぁ石原さんていう元NHKの人なんですけど、その人はmoonridersのコピーバンドやってますから。

田家:そうなんですか!有名な人でしょ?

鈴木:うん。でか〜い年末の番組でやってましたよ。

田家:名前は知ってます(笑)。

鈴木:で、もう一人は、90年代のmoonridersがファンハウスだった時代のディレクターだった松本さんっていう方。この二人のオタクに選んでもらったということですね。

田家:なるほど、それも集団性ということですね。

鈴木:そうです。ま、人の意見を聞くようになっちゃたのよ。そこが良いとこです(笑)。

田家:年取ったことが良いとこでもあると(笑)。えーアルバム「It‘s the moooonriders」の四曲目、「駄々こね桜、覚醒」。お聴き頂きました。





田家:5曲目、「雲と群衆」。詩曲は慶一さん。このタイトルもいいですねぇ〜。

鈴木:ありがとうございます。まぁ雲がCloud、群衆もCrowd。Cloud&Crowd。

田家:あ、確かに!英語では同じですね、スペルは違うけど。

鈴木:ザ・ローリング・ストーンズの『一人ぼっちの世界』というのがありますよね。Get Off Of My Cloudで、俺の雲から出ていけっていう意味ですよね。雲を使ってCloudと言えば、今はクラウドでしょ。

佐藤:あー確かにそうですね。

鈴木:クラウドがあって、そこにちょっとデータ置いておくとか。SNSでは群衆が沢山いるとか。ま、そういうようなことを思いつつ、俺の生活を邪魔するなみたいなところもあるんですよ。

佐藤:内臓のすきまに 群衆が巣を作る、っていうのはクラウドなんですね。


左から鈴木慶一、田家秀樹、澤部渡、佐藤優介

鈴木:そうなんです。要するに、そういうものに掬われては嫌だなと。

田家:冒頭で、白い飛行物体というのがあるんですけど、これは肺の影かなと思ったりしたんですけど(笑)。

鈴木:そういう考え方は大歓迎です(笑)。

田家:で、さっきのアプレゲールもありましたが、これはマンホールですものね(笑)。

鈴木:マンホールですね。マンホールって今ありますかね?(笑)

澤部:あります(笑)。

田家:「呼び子」っていうのは?

鈴木:呼び子の笛は、いわゆる、ポリスじゃないですか? 語呂が良いので使ったというところもありますけど。

田家:〈マンホールからは 子供が生まれる〉。この辺はとってもシュールで批評性に富んでいるという様にも取れました(笑)。

鈴木:マンホールという言葉が、色んな意味を持つということでして(笑)。

田家:佐藤優介さんは、ビブラフォンで、澤部渡さんは、ボーカルです。

鈴木:澤部くんがこの曲を歌ってくれるといいなと想定していましたね。メロディも歌詞も出来ていたのだけど、私が低い方を歌うとなると、上は誰が歌うのかなぁと思って。あ、これは澤部くんだなと。

澤部:あ〜嬉しい。

鈴木:あとビブラフォンを生まれて初めて弾いたんでしょ?

佐藤:そうですね(笑)。初めてで。

田家:え、そうなんですか! それは弾かないか?って言われたのですか?

鈴木:大体いつもはくじら(武川)か私がやったりするのですよ。でも、優介くんはドラムも叩けるし、ギターも弾くし、キーボードも弾くと。で、ドラムとキーボードが出来るなら、絶対ビブラフォンも出来るってことになってね。ちょっとやってみてって(笑)。

佐藤:楽しかったですね。その場で慶一さんが、こんな感じのフレーズって口で言ったのを、忘れないうちに叩いて(笑)。音楽はすごいポップで明るいんですけど、歌詞は結構厳しいことを歌ってますよね?

田家:そうなんですよ。そういうアルバムでもありますね。

佐藤:バランスがやっぱ、痺れますね。

鈴木:〈子供が生まれる 助けてやろうにも 検問だらけで〉、とかね。

田家:みんな避難している場所かもしれないということでもある訳で。





田家 :詩は澤部さん。

澤部:はい、私です。曲はね、岡田徹さんと嶋崎洋司さんの共作でして。

田家:嶋崎洋司さんって?

鈴木:私もよくは分からないんですよ。岡田くんは、まぁちょっと体調を崩したのでね、2020年以前に作られた曲ばっかなのですよ。岡田さんは2021年の初頭に、骨折をしてしまってね。ただ、昔の曲なので、誰が関わっているのかちゃんと本人に確認しないと分からないんですよ。

田家:「三叉路」っていう言葉が先にあったんですか?

澤部:これは後ですね。でも、歌詞を書いている時に出てきてた言葉ではあったんですけど、こんなに象徴的にするつもりは最初はなかったですね。僕は、結構ぼんやりした歌詞が好きでよく書くんです。だから、取り立てて何かが起きているってことにならない歌詞が多いですね。

鈴木:〈君が倒れ込んだ三叉路には 気の利いた通り名さえ ひとつも ついてない じゃないか!〉とか

田家:これ怒っているんですものね。何を怒っているんだろうって(笑)。

鈴木:自分と同じように、相手にも怒っているってことかな。しかし、それは三叉路だから、もう一人いるかもしれないという。

田家:ボーカルでクレジットされているのは、慶一さん、武川さん、博文さん、夏秋さん、澤部さん。

鈴木:澤部くんとオクターブユニゾンで、この方法はよく使うんですよ。

澤部:ライブでよくやってますよね。

鈴木:Squeeze法とよく言ってますけどね。Squeezeというバンドが、オクターブ上下で歌う場合が多いんですよ。10ccもよくそういうのがありますね。で、それをやろうとなり、高い声をいくらでも出せそうな澤部くんに頼んで。でも、岡田くんには部分的だけど、歌詞のイメージはあったんだよね?

澤部:元のデモでボコーダーを使って、日本語じゃないような言葉が沢山入っていて。

鈴木:デタラメの言葉で歌っているデモだったからね。

澤部:それをなるべく拾ってくれって(笑)。

田家:この曲で前半が終わり、後半は来週またお聞きしようと思います。

鈴木:面白いね、こりゃ。

田家:来週はどうなりそうですか(笑)?

鈴木:来週もっとバクゾクするんじゃない?

田家:来週もよろしくお願いします。

佐藤、澤部:よろしくお願いします。

鈴木:よろしく!


アルバム『It‘s The moooonriders』ジャケット写真



田家:FM COCOLO「J-POP LEGEND FORUM」。moonriders、今週はパート1。4月の20日に発売になりました、11年ぶりのアルバム、「It‘s the moooonriders」の全曲紹介。 ゲストは、鈴木慶一さん、佐藤優介さん、澤部渡 さん。流れているのは竹内まりやさんの「静かな伝説」です。



鈴木慶一さんが1951年生まれ、佐藤優介さんが1989年生まれ、澤部渡さんが1987年生まれと、これだけ歳が離れているにも関わらず、1枚のアルバムを和気藹々に、そしてとても創造的に作ったという、その辺もとても面白い関係だなと改めて思ったりもしました。

澤部さんがお書きになった詩に「三叉路のふたり」というタイトルがありましたが、目の前には常に三叉路、三つくらいの道があるということですね。例えば、無難な道、苦難な道、誰も行かないような道、近道や遠回りだったり。でも、こっちに行けば売れるだとか、聴き手がもっと増えるだとか、そういった道に絶対に行かない。そのために当然捨てる物もある訳で、それを捨ててしまった人がバンドの解散というところに行きついてしまう。でも、moonridersはそれを拒み、自分達らしさを全く捨てずにここまで来ました。全員がソロアーティスト、スタジオミュージシャン、作詞家作曲家、またプロデューサー。これだけ全員が屈指の実力派でありながら、リーダーを持たないで、全くの合議制、いわゆる民主主義、話し合いで物事を解決するという、この在り方自体が、日本のバンドの歴史の中で比べようがない存在だと言っていいと思います。聴き応えがあるアルバムとは、こういうアルバムのことを言うのだと思いながら、話を聞いておりました。アルバムの後半は来週です。どんな話が飛び出すのでしょうか。このアルバムは改めてどういうアルバムだと思って頂けるのでしょうか。


<INFORMATION>

田家秀樹
1946年、千葉県船橋市生まれ。中央大法学部政治学科卒。1969年、タウン誌のはしりとなった「新宿プレイマップ」創刊編集者を皮切りに、「セイ!ヤング」などの放送作家、若者雑誌編集長を経て音楽評論家、ノンフィクション作家、放送作家、音楽番組パーソリナリテイとして活躍中。
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