インフルエンザは冬の感染症というイメージがある。だが、沖縄では夏場にも患者が多く、その数は全国でも突出している。今年は7月10〜23日の2週にわたって定点医療機関で1機関あたりの患者数が「注意報」の基準10人を超え、5年ぶりに夏場の注意報発令となった。沖縄でのインフルエンザの流行傾向や特徴、感染が広がらないために大切なことを調べた。(大城周子) ■今シーズンの特徴
 県は58カ所の定点医療機関(小児科34、内科24)から報告のあったインフルエンザ患者数を流行状況として発表している。夏場に向けて収束する県外に比べて沖縄では安定して数値が高く、7月以降では全国の患者報告数のおよそ6割を沖縄が占めている。5年ぶりに夏場の注意報が発令された後、基準値を下回ったため8月2日付で解除されたが、数値はいまだ高く、油断はできない。  インフルエンザのシーズンは9月から翌年8月を1シーズンと考える。例年は年末から2月ごろにかけてA型ウイルスが流行し、3〜5月にB型が流行した後は収束に向かう傾向にあるが、今季は夏場に入ってからA型が増え始め、全体の58%を占めた。  県地域保健課の仁平稔主任技師は「今季は冬場のまん延が抑えられていた。その分、免疫を持っていない人が多く、夏に感染が広がった可能性がある」と分析する。確かに、1医療機関当たりの患者報告数が30人を超えると出される「警報」が冬場に一度も発令されておらず、これは9年ぶりのことだった。 ■夏流行の背景
 インフルエンザの感染は空気の乾燥と気温の低さに関係するため、冬に流行するといわれる。ところが、沖縄では10年ほど前から夏にも流行を認めるようになってきた。なぜ沖縄だけなのか。実は、はっきりした理由は分かっていない。  東南アジアや台湾、中国南部では夏にもインフルエンザが流行しており、同様に亜熱帯気候の沖縄でも同じパターンで広がりやすいという考え方がある。県立中部病院感染症内科の高山義浩医師によると、夏の流行が明確に捉えられるようになった2005年ごろは、これらの地域からの観光客が増加した時期と一致。沖縄と台湾のウイルスは遺伝子的に相同性があるとの研究結果もあり、高山医師は「こうした地域との交流が盛んな沖縄は、本土に先駆けてウイルスが流入し、夏の流行へ発展するのではないか」という。さらにエアコンの普及により「閉め切った乾燥寒冷環境が増えたことも後押ししているのではないか」と指摘する。 ■防ごう感染拡大
 通常、インフルエンザワクチンは冬の大流行に備え10、11月ごろに接種が行われる。効果の持続は5カ月程度とされ、ウイルスも変異するため、秋に受けた予防接種は残念ながら翌夏までは期待できない。  厚労省や県は流行拡大の防止のため、せきとくしゃみをする際にティッシュペーパーで口と鼻を抑える「せきエチケット」や、手洗いの徹底、不要不急の外出を避ける、などを呼び掛けている。冬に向け、妊婦や幼児、高齢者、基礎疾患のある人など重症化リスクの高い人は早めのワクチン接種も推奨されている。  ただしワクチンの主目的は感染を防ぐことではなく「重症化を抑えること」だ。マスクを着用するせきエチケットも、小さい子にとってはマスクが気になってべたべた触れることで菌が付着して逆効果になってしまう。  重要なのは健康な人がインフルエンザにかからないよう頑張ることよりも、感染者が他人にうつさないよう頑張ることだ。症状のある人が外出を控えて家で静養することが、まん延防止につながる。  そのために、高山医師は「学校や仕事を休める地域文化をつくっていくことが一番の解決策。大事なのは『チームプレー』です」と強調した。