古川玲子さんと下宿の選手たち=鳥栖市萱方町の下宿

 転機となった1通の手紙がある。駅伝部の選手を受け入れる下宿を始めて5年目のある夕方、夫で監督の昌道さん(52)と口論になった。選手たちにも聞こえたのだろう、翌日、主将から手紙を受け取った。

 「自分たちのことでけんかするのはやめてください。自分たちには家に帰ったらお父さんお母さんがいます。まだ小さい2人のお嬢さんには、お母さんは奥さんしかいないので思いっきり遊んであげてください。自分たちのことは自分たちでやりますから」

 当時の下宿生は十数人。幼い娘2人よりも選手たちの世話を優先する日々。子育てと家庭、下宿生の食事作りなどで多忙のあまり疲れ切っていた。市内のショッピングセンター2階の片隅で一人手紙を読み、涙が止まらなかった。

 この“小さな事件”がチームの結束力を強めた。この年、鳥栖工は県高校駅伝でライバル・白石を破って11年ぶりに優勝、昌道さんにとっては就任6年目の悲願達成となった。

 現在、昌道さんは就任22年で優勝11回、8連覇中。いろんなことがあったが、玲子さんにとって生徒たちがくれた手紙は宝物だ。「全く勝てなかったころにうちを選んでいただいた保護者や選手のみなさんに感謝しています。みんなの夢を少しでも実現できるように手伝いたい」