ひとくちに「認知症」といっても、発症する原因や症状、個人差などその種類はいくつも存在します。

今回は、一般的に知られている「三大認知症」について触れるとともに、若年層を襲う認知症や、早期発見・早期治癒によって快方に向かう見込みのある認知症についてご紹介します。

認知症の約85%を占める三大認知症

認知症と診断された人の約85%は以下の3つの認知症に分類することができます。

1. アルツハイマー型認知症
アルツハイマー型認知症は脳細胞の委縮によって発症する認知症で、認知症と診断された人の約半数はアルツハイマー型にあたります。病名になっている「アルツハイマー」という言葉はドイツのアロイス・アルツハイマー博士が、診察した患者の記憶力の低下などを主訴とする症例を1906年に学会で発表したことに由来します。

主な症状としてはもの忘れ、同じことを何度も繰り返し発言するなどの中核症状に始まり、その病状はゆっくり進行していきます。症状が進んでくると人や物、時間、場所などの誤認識が始まり、人によっては妄想や徘徊をおこします。

男性に比べ女性に多く発症するのが特徴で、発症してからの余命は多くの場合10年前後とされています。発症の原因が老化による細胞萎縮のため、根本的に治癒することはできませんが、薬で病状の進行を遅らせることは可能です。

脳内には記憶の働きに関係するアセチルコリンという神経伝達物質があり、投薬によってアセチルコリンを分解する酵素の働きを抑えることができるのです。ただし薬にはさまざまな副作用があって胃腸障害や皮膚症状などがみられ、場合によっては周囲に暴力をふるうなど攻撃的になる人もいます。必ず処方を守り、適切な量を摂取しなくてはなりません。

2. レビー小体型認知症
レビー小体型認知症は、大脳の皮質の神経細胞内に「レビー小体」と呼ばれるタンパク質が溜まることによって起こります。1976年に小阪憲司医師(横浜市立大学医学部精神医学教室名誉教授)によって報告されました。現在はアルツハイマー型認知症に次いで患者数が多く、男性にやや多くみられるのが特徴です。

症状でアルツハイマー型と大きく異なるのは、認知機能障害、特に記憶障害があとから現れること。それより先にはっきりとした幻覚(幻視)や、パーキンソン症状が現れる点です。

パーキンソン症状では筋肉が硬直したり、動作がゆっくりになったり、体のバランスをとりづらくなったりします。症状が強くなると前かがみで腕を振らず、小さな歩幅のすり足で歩くようになるため転倒の危険も増えるので、周囲の人はより気を配る必要があります。

レビー小体型認知症の人とともに生活する場合は、本人の言うことを決して否定せず、本人の気が済むまで話を聞くことが重要になってきます。なぜなら、一見わけのわからないことを言っているように思われても、本人にとっては幻視がはっきりと見えているからです。また、ベッドに柵、廊下や階段に手すりを取り付けるなど転倒防止に努めるのも大切です。

3. 血管性認知症
脳の血管が破れておこる脳出血やくも膜下出血、脳の血管が詰まって起こる脳梗塞など、脳の血管障害である脳卒中がもたらす認知症を「血管性認知症」と呼びます。脳血管障害にかかると、脳表面に近い大脳皮質領域に血栓ができ脳の一部に血が回らなくなります。

血液は酸素を運ぶ大事な役割を担っていて、一時的に血が流れなくなる(酸素が行き届かなくなる)ことによってその部分の脳細胞が死滅してしまいます。また、脳の部位のあらゆるところに血栓ができる可能性があるため、失われる機能にも個人差が出ます。

そのため、記憶力が失われても判断力は正常な人や、その日の血流の具合によってできる・できない、思い出せる・出せないなどに変化が出てしまう、いわゆる「まだら認知症」の状態が多くみられるのが特徴です。

全体的な症状としては、初期は不眠、めまい、頭痛、手足のしびれといった兆候が多く、進行すると言語障害や歩行障害に至ります。レビー小体型同様、男性に多く現れる認知症です。

もう一つ、脳の細い血管にできる脳小血管病変が招く「脳小血管病性認知症」も血管性認知症に含まれます。これは血管性認知症の約半数を占めるもので、多くがはっきりとした脳卒中発作のないまま進行します。