『aunt MiMi(アントミミ)』は、家庭的な料理がおいしいと評判の店。目黒駅東口の路地にオープンしたのは2003年のことだが、オーナー姉妹はもう40年もこの場所で飲食店を続けている。丁寧に作る家庭的なカフェごはんはそのまま、2021年に行ったリニューアルで開放的な雰囲気に生まれ変わった。

店名の由来はジョン・レノンの叔母。オーナー姉妹はビートルズファン

店内に飾られたミミおばさんの絵。
店内に飾られたミミおばさんの絵。

『aunt MiMi(アントミミ)』という店名は、ジョン・レノンを育てた叔母のミミ・スミスにちなむ。オーナーである姉妹は、ビートルズやジョン・レノンが好きで、これまで経営してきた店にもビートルズやジョン・レノンにまつわる名前をつけてきた。

今、店がある場所は、1981年から「ダブル・ファンタジー」という名前でバーを営業していた。他にも渋谷ではズバリ「レノン」、恵比寿には「E STREET BAR」という店もあった。40年以上という飲食店経営の歴史には、バブル崩壊もリーマンショックも訪れ、今は『aunt MIMI』だけが営業を続けている。

働き者のオーナー姉妹。
働き者のオーナー姉妹。

オーナー姉妹の妹、はるみさんは、飲食店経営をする前に商社で事務員として働いていた。当時の女性会社員といえばお茶汲みやコピー取りに代表される雑務が中心。そんな社会に閉塞感を感じていたことから、女性が働きやすい職場作りも意識して、姉と2人邁進(まいしん)してきた。店がオープンした当初のスタッフは女性ばかり。そんなことからかわいい名前がいいと『aunt MIMI』と命名した。

オーナー姉妹の名刺。
オーナー姉妹の名刺。

『aunt MIMI』は、訪れる人も女性が中心。有機野菜を取り入れた定食スタイルのランチがおいしいと近隣で働く人たちに好評だ。口コミサイトでの評判も上々で、週末にはおいしいランチを目指してわざわざやってくる人も少なくなかった。一方、おいしい定食が食べられる店として認識されているためか、夜の営業でも食事だけを目当てに訪れる人が多かった。当然、それでは飲食店の経営は厳しい。そして2020年にはコロナ禍が訪れたのだ。

ランチは丁寧に作った料理をお盆にのせて

天気のいい日は、入り口全開。
天気のいい日は、入り口全開。

そんな状況を変えるべく2021年6月にリニューアルを行った。はるみさんの息子、たつのすけさんが経営に参加したタイミングだ。

店はコロナ禍でも受け入れられる飲食店になるよう、間口が全開になるようにリノベーション。広々とした店内の様子が外からも見えるようにした。「ただお酒が好きなだけなんですよね」と少し照れくさそうなたつのすけさんは、ナチュラルワインをはじめ、出合ったお酒を店内にディスプレイ。嗜好性の強い商品を置くことで、夜に訪れる人へのアピールも心がけているようだ。

レモンクリームソースが爽やかなオムライス1100円。小さなデザートが付く。
レモンクリームソースが爽やかなオムライス1100円。小さなデザートが付く。

もともと人気があったランチは、すべてをお盆にのせた提供方法に変更。季節の素材を使っていて、数週間おきにメニューが入れ替わる。

リニューアル前から人気なのはオムライス。卵のなかにバターライスがたっぷり詰まっている。この日の具はホタテとニンニクの芽で、予想以上にゴロゴロ入っていた。やさしい味わいで食べ飽きない。紫キャベツのサラダにはスパイスのクミンを入れ、グリーンサラダもついて野菜もしっかり食べられる。

ある春の日のランチメニュー。
ある春の日のランチメニュー。

他のランチメニューは一汁五菜ランチとして、コロッケや旬の魚を使った主菜を中心にしている。家庭料理といっても、ひと手間加わったおかずが揃う。食後に小さなデザートが付くのもうれしい。

家族経営の店が集まる路地。それぞれの歴史が続くように

一家は全員音楽好き。
一家は全員音楽好き。

リニューアルは功を奏し、ランチタイムは満席になり、並んで待つ人がいることも。ディナータイムもナチュラルワインと手作りの料理を求めてやってくる人が徐々に増えている。

家業を継ぐことにしたたつのすけさんは話す。「生まれたときから生活の延長線上にお店があったので、それがなくなっちゃうのがすごく嫌だったんですね。僕自身は飲食業の経験は豊富ではありません。それでも少しでも家族がやってきたこと、おいしいお料理を伝えられたらいいなと思っています」。

『aunt MIMI』のある細い通りは、目黒駅の東口から少し歩いたところ。同じ通りには、やはり長く営業しているラーメン店、中華の店、クラシックなコーヒー店など、懐かしい構えの店が並ぶ。たつのすけさんにとっても子供の頃から馴染みのあるご近所さんだ。家族が営む店だけでなく、周辺の風景が変わらずにいてほしいという気持ちも強く、『aunt MIMI』のリニューアルはいわばローカルプロジェクトだと位置付けている。

箸袋には「あなたはあなたが食べたもの」の文字。
箸袋には「あなたはあなたが食べたもの」の文字。

「家族で経営して続いている飲食店がいくつもある場所が僕はおもしろいと思うので大事にしていきたいですね」

ビートルズが好きな家族が歴史を作ってきた『aunt MIMI』の丁寧な料理。これまでとは少し違う目線からも、ますます愛されていきそうだ。

aunt MIMI(アントミミ)
住所:東京都品川区上大崎2-15-6 ノワールブラン 1F/営業時間:11:00〜15:00・17:00〜22:00(土は12:00〜22:00、 日・祝は 12:00〜21:00)/定休日:月・不定/アクセス:JR・私鉄・地下鉄目黒駅から徒歩2分

取材・撮影・文=野崎さおり

野崎さおり
ライター
2016 年よりライターとしての活動を開始し、複数のweb媒体で食べ物やお出かけネタを中心に執筆。おいしいものはもちろん、作る人とその背景に興味あり。都内をバスか徒歩で移動するのが好き。